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不安な奴は読め。  作者: こども
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笑顔の蝿

 もう完全に夏が終わった。世の大学生も朝の電車で見かけるようになったし、半袖では少々肌寒くなってきた。

もう終わった。誰とも関わる必要がないから、誰でもよかった季節が終わった。何もかも、始まりから終わりまでめまぐるしいスピードで通過する季節が。あの表情も、爆音も、気力も失われて、孤独だけが残る。剥がれ落ちたところを隠すようにコートを羽織るようになる。マフラーを巻き、手袋をして、必死で取り繕う。


 もう誰でもよくなくなってしまった。誰だってこの季節になると、思い出す人がいるはずだ。会いに行っても行かなくても行けなくても、好いても好かれても嫌われても、何一つ変わらない。何一つ、救いになんてならない。会えるなら会うべきだ。伝えられるなら伝えるべきだ。傷つけるべきだし傷つけられるべきだ。そんなの誰だって分かっている。「自分のしたいように」、これは聞こえのいい言葉だけど、なんだか自分に足りない生き方のように聞こえるけど、誰もそんな風に生きることなんてできない。できたら誰も悩まない。苦しまない。自分が何かもわからないし本当にしたいことなんてない。もうやめるべきだ。そんなことを考えるのは。美味しいものを食べてセックスでもして、眠くなったら寝る。やり過ごすしかない。もう夏は終わってしまったのだから。


 私たちは何も見ていないし、聞いていない。当然だ。よく笑う人は1人でいることが好きだ。愛想がいいのは「お前とは仲良くできない」だし、自分語りが多いのは家庭環境が良くなかったのだろう。忙しそうにしている人ほど仕事ができない。愚痴が多い人はそれだけ知覚する事柄が多い人だし、辛いものが好きな人は心の中で他人を見下して生活している。まともな人も優しい人もいない。いるならとっくに自殺している。


 何も分からないし全部最低で最悪。それなのに終わってしまえばなんだって最高で最良。今日は学校に行きますか。会社に行きますか。死にますか。勝手にしましょう。私たちはしようもない理由で死にますが、意外とのうのうと生きていけます。だからなんだって話ですね。死ぬならさよなら。僕はもう少し生きてみます。バイバイ。

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