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不安な奴は読め。  作者: こども
130/138

3.11

 桜の木に小さな蕾がつき始めた夜、二人で星を見た。潮の香りが立ち込めていた。寄せては返すとは所詮比喩に過ぎず、黒い波は私たちを飲み込みに来ているように思えた。


「このまま身を任せたらどこまでいけるだろうか」


「きっと気付いた頃にはマンボウのお腹の中じゃないかしら」


「生き残れるのは2億匹に1匹だよ」


「あら、生き残りたいの?」


「せっかくなら、自由に海を泳いでみたいじゃないか」


「海には輪廻があるから大丈夫よ。命の循環が陸より激しいもの」


「米国経済と同じということ?」


「全然違うわ。何一つとして無駄にならないでしょう?」


「なら、いつかのんびり過ごせると信じて眠るとするよ」


「今日が教科書に載る頃に、またどこかで会いましょう」


※この物語はフィクションです。実際の出来事とは一切関係ありませんが、どうせ誰も当時の事は覚えていないでしょう。思い出す気もないでしょう。警鐘のつもりなど毛頭ありません。しかし、生きたくとも叶わなかった命が教科書に載る事は一生ありません。今日も今日とて大人しく無様に、勉強して仕事してクソしてシコってセックスして、ちんたら惰眠を貪ってを繰り返しながら余生を楽しんでください。


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