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不安な奴は読め。  作者: こども
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晩夏、私の消滅。

 貧困は悪なのだろうか。最高のパートナーがいて家があって子どもがいて食べるものがあって、先進諸国の民はそれでは満足に生きていけないのはどうしてだろう。何年考えても「金があれば幸せか」の答えは未だ出ない。金は金よりも大切なものを守るためにあるとか、愛は金で買えないとか、金で買えないところに幸せは潜んでいるとか、きっと全部本当で全部嘘なんだろう。今後何十年間も貧富に対する価値観は途切れ、再生し続けながらそれでも資本主義社会から抜け出す事もなく生きていくのだろう。大切なものを守るという大義名分の為に。


 自分の世界を見つけたらもう大人なのだろうか。「自分」とは、「世界」とは、いずれも答えはない。簡単に決められるほどこの世の人間の大半は人生を諦めていないし、永遠に問い続けられるほど絶望してもいない。今この瞬間、青春が終わり人生が始まる瀬戸際にいても、私の心は11歳の冬から変わっていない。愛も衝動も夢も絶望も、私の世界を定義してはくれなかった。しかし一方で、今まで馬鹿にしていたものが今でもしぶとく胸の奥底に潜んでいたりする。日本経済新聞には自分の世界についての記事は載っていない。TOEICのスコアに自分の価値は反映されなかった。世界のどこを探しても結局自分の胸のうちを覗くことになり、そして空っぽなことにようやく気づく。


 世界の裏側にも自分の心の奥底にも、私はいない。この世界は私だけの世界で、私だけの世界に、私はきっと存在しない。きっと一生映画を見続けるだけの人生で、主観も感情移入もそのうち邪魔になる。自分が世界を定義する頃には、私は私ではなくなっている。それが歳を取るということなのかもしれない。


 結局何が言いたいかというと、新学期始まっても学校なんか行かなくていい。オンラインだろうとオンサイトだろうと、行かんでよし。サボってよし。でも「生きてさえいればいい」とは言わない。全力で晩夏を殺しに行きましょう。

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