表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不安な奴は読め。  作者: こども
123/138

畏怖

 22歳になって大切なことが何となく分かってきて、それでも死にたかった18歳の頃と変わらず夏休みは退屈で苦しい。晩夏の夕日はいつも嘲笑するように僕達を見下していて、それでいて絶望するほどに美しいものだから、自分はそろそろ寿命なんじゃないかと錯覚する。


 大事なものが崩れ去っていくのを感じる。前歯はきっとなくなる。身体は思うように動かなくなる。視力は落ちる。青春は終わる。昔好きだと言い合った人たちの姓は知らないものになっていく。熱量も怒りも無くなっていって、心身の痛みを感じることも減っていく。


 そんな自分がたまらなく怖いのです。


 私が生まれてから父親と過ごした時間よりも、死後の時間の方が長くなった。もう声も顔も、匂いでさえ思い出せない。胸を刺すような痛みももうあまり感じない。克服は忘却だ。忘却は老衰だ。真夜中に観る映画の本数ばかり増えていく。今後40年間労働者として生を終えることに今更抗えるほどの怒りもない。中流階級の頂点に立ち、何十年生きようともそれなりの幸せを手に入れられる保証はもう手中にある。


 私の人生はもう終わったのかもしれません。


 「老人笑うな行く道だ」と人は言うが、行く道を行ける保証はどこにもない。保証がなければ人は不安になり、保証されると人は絶望する。実はもうとっくにかっこ悪い大人になってしまっているのかもしれない。


 自暴自棄になって当たり散らしたくなった。ごめんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ