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不安な奴は読め。  作者: こども
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きっと一生死んだまま。それでいいんだよ。

 眠れないというよりも眠りたくないことがある。朝が来てほしくない夜が幾夜もある。今見ている月は1秒前の姿で、ベテルギウスは500年前、リゲルは900年前からやってきた光である。今見ているオリオン座は900年前、日本では源氏平氏を中心に武士貴族入り乱れ争っていた時代からやってきたということになる。長い長い旅路を経て地球に辿り着いたベテルギウスの心中を思う。無事に僕の眼球の中の水晶体を通り抜け、視神経を通じて届いている。今脳味噌を通じて僕の脳内に映し出されている。そのために彼は旅してきたのだろうか。たぶん、違う。それが少し嬉しいのです。


 きっと一生僕は、リゲルはもちろん、ベテルギウスのもとにもいけないんだと思う。シリウスにもプロキオンにもアルデバランにも、触れることはもちろん、正面から対することもできないんだろう。漠然と世界というのはこの足でたどり着くことができる範囲の話だと思っていた。僕の世界なんて半径6371キロメートルの楕円どころか、もっとずっと小さな島国の本州辺りまでしか定義されていない。携帯の電波も、声すらも届かず、きっと真っ暗であろう世界でただ煌々と、そして雄々しく佇んでいる。世紀を超えてやってきた彼らのエネルギーと、懲りずに夜更かしをしている僕の衝突は、こんな文字の羅列を化学反応として引き起こす。そしてしょうもないポエムとして宇宙よりも広いインターネットの端っこにそれを書き連ねる。ほんの数人がそれを見てくれる。そんな1000年間のやりとりが少しだけ嬉しいのです。


 今出発したリゲルの光線が地球に届くのは西暦3000年。誰も彼もとっくに枯れ果て、この星の塵になっている。もしかしたら人間はもはや地球に住んでいないかもしれない。輪廻があるならまた僕は僕としてこんなとるに足りない日記を書いているかもしれない。あなたはあなたでまた懲りずに死にたいなんて思っているかもしれない。それが少し楽しみなのです。


 そんなことを考えていたら眠りたくなくなって、もう少し見ていたくなって、そう言えば夜に会いたい人がいたから口実のためにこんなことを考えていたな、なんて思い出す。


 きっともう一生会えないんだろう。それでもベテルギウスたちはやってきてくれる。それが少し嬉しくて、寂しいのです。

 

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