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約束は燃えた。
夜に二人で宇宙船を見た。だんだん小さくなってやがて見えなくなる。その間二人は一言も発しなかった。ずっと手を繋いで、ただ行く先を見ていた。星の破片が街の光に飲まれ、天が陰に覆われても二人は逃げる素振りもなくただ、じっと宇宙船を見ていた。やがて宇宙船が白い光に変わり塵になった。その頃にはもう、二人は帰り道を忘れてしまった。
真っ暗闇に電車の走る音がこだまする。夜中の2時だというのに。それを聴いて星が落ちてくる。一つ、二つと音もなく、けれど確実に。流星と崩れる鉄塔を見て、ここは東京だと思い出す。それでも二人は逃げるつもりは無かった。
真っ赤な地上とは裏腹に相変わらず宙は真っ黒だ。きっと長い年月をかけて嫌われてしまったのだ。彼らにはたくさん非道いことをした。迎えなど来る筈もなく、二人は茫然と立ち尽くす。その瞳には見えるはずの無い4等星が輝いていた。
「僕にとってあなたは東京だった」
「そう。それでも、ずっと生きていかなきゃいけないのよ」
その約束が守られたかどうかは、グリーゼだけが知っている。




