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不安な奴は読め。  作者: こども
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もうすぐ死ぬ。

 優しくなければ人に産まれた意味がない。たくさん損して、たくさん嫌な思いをして、たくさん嫌われて、それでも優しくいる必要がある。最後まで優しくいられた傍に誰かがいてくれたら最高だから、その時は一生かけて大事にした方がいい。矛盾しているけれど優しくなるにはたくさん傷付けなければいけない。そして同じくらい傷付かなければいけない。たくさん失敗してたくさん恥ずかしい思いをしなければいけない。そんなことが許されるのはせいぜい20代前半だから、僕達には時間がない。


 書きたいことは書けなくなる。言いたいことは言えなくなる。会いたい人には会えなくなる。自分らしいままではいられなくなる。無常なものなどないということを肌で感じるようになったら最後、人生なんて一瞬で終わる。家族も恋人も友人も明日死ぬかもしれない。死んだことがないから分からないけれど、たぶん自分が死ぬよりも遺される方が辛い。「この人さえ生きていてくれたら」という人がいなくなってしまった時、僕達はどうするんだろう。


 みんな死ぬ。あなたも僕も。いずれ出会う愛する人でさえも。きっと最高の別れは出来ない。絶対に不適切なタイミングで最愛の人は死ぬ。時間がない。20歳の時点で人生の体感時間の半分は終わっている。実は僕達はとっくに折り返し地点にいる。死ぬ。死ぬ。死ぬ。みんな死ぬ。自分以外の誰が死んでも僕達は生きなければいけない。自分が死ぬまで。


 夜の街で独りあの人は泣いていて、芝公園で煙草でもふかしながら真っ赤な東京を眺めているんだろう。冷たい空気が肺に流れてくると生きているという感じがする。全力で人生を楽しむ必要なんてない。残された時間も機会も少ないことを自覚し、その上で今まで通り生きていくだけだ。何も変わらないし変われない。死んでいく彼らを見て見ぬふりをして生きていく。今日も明日もその次も。ずっとだ。ずっとたくさんのことから目をそらして生きていく。時間がないからだ。僕達には、「余計なことに割いている時間はない」。人生が貧しくなる魔法を自らにかけて生きていく。


 焦燥、孤独、後悔、自責、全てを背負って生きていく。独りで。どこで誰が死んでも世界は変わらない。変わらないのに今日も人はたくさんのものを遺して死んでいく。無駄なものばかり、足枷ばかり遺して死んでいく。全部引連れて進まなければいけない。やり直しも巻き戻しもない世界を。


 死にたいなら死んでしまえ。何も変わらない。何もしなくてももうすぐ死ぬ。100年後には地球は知らない奴らのものになってる。今の自分のままではいられなくなる。誰も彼も変わっていく。だから、どうでもいい。


 愛はつなぎとめることに必死で、人生は生きることに必死で、届かない想いのやり場もなく、愛したあの人は今どっかの馬鹿と生でセックスしている。やっとの思いで得た平穏は何も救ってくれない。


 やりたいようにやれ。どうせ死ぬんだから。さよなら。

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