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ハイスクールフラット  作者: 砂漠化しました。
5/7

閑話:生徒会執行部、あ!

今回は主人公がほとんど出てきません。

同じ学校の生徒会の話です。

 私立短尺高校生徒会執行部・・・それは、自由な校風によりある分野に秀でた者達が集まりやすい短尺高校の中でも、ある分野での頂点のみが選ばれた超の付くエリート集団である!



 〜生徒会室〜

「それでは、只今より生徒会を執行する」

 デデン!


 この場にいるのは、会長、副会長、会計、書記、雑務の5人!


 会長席の横でニコニコと笑みを浮かべているのは、学校一のお嬢様、生徒会副会長千衆院綾乃(せんしゅういんあやの)

 腕を枕に眠っているのは、学校一の頭脳、生徒会会計唯々山茶(ただたださざ)

 黒いマジックペンをもちホワイトボードの前に立つのは、学校一の巻き込まれ体質、生徒会書記奈々月(なながつ)かおり!

 格闘技の雑誌を読んでいるのは、学校一の武力、生徒会雑務佐川姫織(さがわひめおり)


「おい、なんかへんなのいたぞ!?」


 そしてこの叫んでるメガネが、学校一のメガネ、私立短尺高校生徒会会長河牧勇人(かわまきゆうと)である。



 ****

 ホワイトボードには、綺麗な明朝体が控えめに、余白を残しながら書かれている。それは、『文化祭について』と読めた。


「ま、まあ、落ち着いてください河牧会長。さざちゃんも新型スプリンクラーの開発で疲れているんですよ」

 そう発言したのはホワイトボードの前に立ち、少し暗い茶髪を肩で揺らしている少女、奈々月かおりである。あはは、と少し困ったように笑うその少女は、半袖のワイシャツに袖のないカーディガンを着ている。


「まあ、それもあるかもしれないが…おい、唯々、疲れてるのはわかるがここで寝るな」

「はっ!す、すみませんメガネ会長!まだメガネを擬人化する機械は完成してないんです!」

「誰がメガネ会長だ!誰が!!!僕は生徒会長だ!そしてメガネを擬人化する機械なんぞは頼んでいない!!!」

「…あれ、夢でしたか?すみません、寝ぼけていたみたいです」

 二つ結びにした長い黒髪に寝癖をつけながら寝ぼけている彼女、唯々山茶は天才発明家であり、個人的に学校や生徒からの頼みを聞いて様々なものを発明している。彼女いわく、『トレードマーク』だという白衣を指定の制服の上から羽織っている。



「ほら、佐川もだ。雑誌なんぞを読むな」

「まあまあ、硬いこと言うなよメガネ長」

「だから僕はメガネ長じゃない!しかもそれだとなんかメガネの長みたいじゃないか!?僕は生徒会の会長だ!!!」

「ところでさあ、今回効率良い人体の壊し方特集なんだけど、ちょっと試させてくれない?生徒会メガネ」

「生徒会メガネ!?なんだ生徒会メガネって!!僕のことじゃないよな!?」

「え?他に誰かメガネいる?」

「僕のことかあああああああ!!」


 バシンっと机を叩き、異議あり!とばかりに抗議する彼の声は少しばかり空気を振動させたが、どうやらその波長は彼女の耳には入らなかったらしい。彼女はそんなことはお構い無しに朗らかに笑う。


「はっはっは。いやあ、勇人はいい反応するなあ」

  侍よろしく、一つにまとめた長い黒髪を揺れ動かしながら会長をおちょくる佐川姫織は、詰導流(つみしるべりゅう)第26代目正当後継者であり、武道の達人だ。なんでも、彼女がやってしまうと平均がおかしくなってしまうと、学校の身体測定から外されたとかいう逸話を持っている。


「皆さま、おふざけもそこらへんにして、そろそろ本題に入りませんこと?」

 ふわふわっとウェーブのかかった明るい茶髪を腰まで伸ばし、果実のようなゴージャスな匂いをふりまきながらそう苦言を呈した千衆院綾乃は、超が二、三個は付くほどのセレブ、千衆院家のお嬢様であり、噂では日本の土地の1%を彼女自身が所有しているという。


「勇人くんもですよ?」

「あ、ああ、すまない。ちょっと熱くなってしまった」

「メガネを擬人化する機械が完成しなかったからと言って、そんに怒んないでくださいな」

「別にそれに怒っていた訳じゃないぞ!?」


「では改めまして、今回の議題は文化祭についてですわ」

「そんなの、前回と同じでいいんじゃないの?」

「それが、後夜祭のことで少しもめておりまして…」

「夜遅くまで騒いでしまうということですね?」

「なにか私に出来ることがあったら言ってくださいね!」




「…なあ、なんか最近みんな僕に冷たくないか!?」


 彼の叫びも虚しく、会議はどんどん進んでいく。


 私立短尺高校は、今日も平和であった。


 


  ****

 1


「おらぁっ!!!」

 ドオオォン!!!


 私立短尺高校は、生徒の自主性を重んじる高校である。


「はあああっ!!!」

 バアアァァン!!!



 短尺高校生徒会役員は、立候補ではなく推薦によって選ばれる。しかし、立候補ではなく推薦された生徒が、自分の時間を捨ててまで生徒会役員として働くことを承認することは極めて希である。


「どっりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 ドコオオオオォォォォォォン!!!!


 そのため、生徒会役員は超特別待遇で持って迎えられる。一人に一つずつ部屋が与えられ、希望すれば殆どのものを揃えることが出来るようになる。


「おい佐川!これはなんの騒ぎだ!?」

「…んっ?おお、勇人ー!いいところに来たなあ!」


 ここは、普通の教室よりも一回り大きく造られている特別校舎にある佐川姫織に与えられた部屋であり、大量の格闘技の雑誌や、練習道具が散乱している。


 そこを訪ねてきたのは生徒会長河牧勇人だ。

「運んでもらいたいものがあるから呼びに来たんだが…なんだ、これは?」


 部屋には一ついつもと違う点があった。

 部屋の真ん中にぶら下がる真っ白なサンドバッグが存在していることだ。


「あたしが全力で殴っても壊れないサンドバッグが欲しいって頼んだんだよ。期待しないで待ってたんだけどさあ、これめっちゃ耐久力あるぞ!!」

 彼女ははっはっは!と笑いながらバシバシとサンドバッグをたたいている。


「それなら、唯々に頼べば作ってくれそうだけどな」

「うん?まあ…そうなんだけど、いつも大変そうだしさ、何でもかんでも頼っちゃってたら悪いじゃん」

 そう言うと彼女は着ていた空手着をばばっと脱ぎ、下着姿になった。会長は慌てて後ろを向く。


「…お前もそんなこと考えるんだな」

「ほら!運ぶものがあるんだろ!とっとこいこうぜ!」

 いつの間にか制服に着替えていた彼女にバシ!と叩かれ急かされると、彼は痛い痛いと文句を言いながら歩き出した。

 その表情はどこか楽しげでもあった。



 ****

「やはり佐川がいると早いな」

 彼らは文化祭に必要な書類や荷物などを運び終えて生徒会室に来ていた。


「まあな、なんでもまかせろよ」

「しっかし、お前は特別太いとかではないのに何でそんなに力持ちなんだ?」

「おっ、それ聞いちゃう?」

 そう聞かれた佐川姫織は少し得意げだ。


「へへへー、うちの流派だとさ、イメージが大事だって言われてるんだ」

「イメージ?」

「そー、イメージ。自分は絶対にできる!自分にしか出来ない!ってイメージするんだ。すると何だかんだあって出来んだよ」

「相手に勝つにはそのイメージをしっかり持たないとダメってことか?」

「まあ、そんな感じ。絶対にあのメガネを割ってやるぞ!あのメガネぶっ壊すぞ!って思うのが大事なんだよ。あ、あとこれ、簡略化してるけど一応秘伝だから内緒な」

「お前メガネになんの恨みがあるんだ」

 彼ははそんなことをさらっと言うなよと思ったが、メガネのツッコミだけに留めておいた。



「りこちゃんはとってもすごいんですのよ」

 うふふ〜と、いつの間にか千衆院綾乃が居た。


「おう、千衆院か。どうした」

「いいえ。ここに来たら、誰かいらっしゃるかなと思いまして。…ひめちゃん、北極での話を勇人くんにしてあげたらどうですか?」

「ああ、ホッキョクグマをぶっ倒しに行った時の話?」

「ホッキョクグマ!?なんだその話は!聞いてないぞ!」

「ほら、2ヶ月ほど前に、りこちゃんおうちの事情で1週間ほどいなかった時があったじゃありませんか。その時の話ですよ」


「そー、あの時はひいばあちゃんが死んじゃったんだけどさ、うちは弔いとして、なんか強そうな動物と闘うんだよ」

「意味がわからん」

「んで、ネットで調べたら熊って北に行くほど強くなるのな。だから、ホッキョクグマと闘おうって北極まで行ってきた」

「意味がわからん」

「それでさあ!闘った後に寄ったグリーンランドで泊まらしてもらった狩猟民族の家の話なんだけど、これがまた笑えるんだよ」

「…あれ?ホッキョクグマは?」

「これは倒したあとの話ですね」

「おい!!ホッキョクグマを倒す話なのにホッキョクグマとの戦闘シーンが一ミリも話されてないまま終わったぞ!?」



「会長、なんの話してるんですか?」

「唯々か」

「ひめちゃんが凄いって話ですわ」

 今度は白衣を着た唯々山茶が来た。


「そう言えば、前に佐川先輩の強さを計ろうとこんなもの作ったんですけど」


 そう言って彼女は片目につけるメガネのようなものを取り出した。

「なんか見たことあるな」

「これは目につけてこのボタンを押すと、戦闘力を計ってくれます」

「とても聞いたことがあるな」

「スカウターです」

「言っちゃったよ!」

「ただ、佐川先輩を計ったら上限を振り切って壊れてしまうかも知れません」

「バグって動かなくなるのか?」

「いえ、爆発します」

「上限を越えたら爆発するものなんぞ、PL法でアウトだ!!」

「原作ファンとしては、そこは譲れません」

「捨てちまえそんな原作愛!」

「なー、グリーンランドでの話聞いてくれよー」

「あれは傑作でしたわね」



 ****

 奈々月かおりがなんとなしに歩いていると、生徒会室がなにやら騒がしいのに気付いた。生徒会役員はひかれあうのだろうか。


「…なにやってんですか、先輩たち」

「こら!待て唯々!それを寄越せ!」

「いやです!ボンッてなって、なんだこの数値は!?って言うんです!」

「それで奥さんが間違えて夫を射っちゃったんだって!」

「うふふ!何度聴いてもおもしろいですわね」

「おい、奈々月!唯々を捕まえろ!」

「あはあは!会長、私は捕まりませんよ!」

 くるくると机の周りを唯々山茶と河牧勇人が追いかけっこをしている。その勢いは今にもバターとチーズになってしまいそうだ。


「この人達、ほんとにこの学校のトップなのかな……?」

 騒がしい生徒会役員を前に、奈々月かおりは絶対に人員ミスだよな…と、悟った。





  ****

 2


「ギャー!」


 その騒動は、奈々月かおりの叫び声から始まった。



「どうした奈々月!」

 その声にまっ先に駆けつけたのは近くで作業していた生徒会会長、河牧勇人だった。次いで佐川姫織、千衆院綾乃と続々と生徒会役員が集まってくる。


 しかし、彼の問いかけに、彼女は壁を指さすばかりでなにも語らない。顔の血の気は引いており、その震える指先には余程恐ろしいものがいるのだと皆に知らしめた。

 そして彼女は絞り出す様に一言だけ発した。

「あ、あれ…」


 彼女の指差す先には、



 ゴゴゴゴゴゴ


 光を跳ね返す漆黒のボディに、エイリアンを想起させるギザギザとした脚、空を飛ぶということを知らしめる絶望の翅。

 そう、それは…


「ハッ!あ、あれは…」

 河牧勇人と佐川姫織の声が重なる。




「「ゴキブリだあぁぁぁぁー!!!!!」」

 

 平和を脅かす、這い寄る混沌の使者が、そこには居た。



 ****


 突然の襲来に、人類はパニックに陥る。

「おい、勇人!なんとかしろ!」

「佐川!お前の流派人類最強とか謳ってるんだろう!何とかならないのか!」

「たしかにそうだけどあたしはあれ無理!」

「わたくしも無理ですの!」

「うげ…奴が出ましたか…言っときますけど私も無理ですよ。無理無理」


 続々と役員が集まってくるが戦力になりそうな人はいなかった。人類はここまでか…!


 ガサガサガサ!


「うっ、動いたぞ!」

「キャーキャーキャー!!!」

 腰が抜けたのか、奈々月かおりはいつもには考えられない様な声を出して四つん這いで逃げている。


「こっ、こないで!きちゃダメ!こないでよお!!!」

 彼女は、ぶんぶんと手を振って迫りくる黒い悪魔から逃げる。対する、這い寄る漆黒は人間などとるにたらないとでも思っているのかその声に反応する様子はない。




「くそっ!こうなったら!」

 役員がピンチなのに、僕は何をやってるんだ!


 河牧勇人は自分をそう鼓舞し、近くにあったバケツを手にした。

 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ!!!



「うおりゃぁぁぁ!」

 彼はバケツを手に持ち、黒い悪魔へと決死の特攻を行う!

 そして…!



 ボスッとバケツをゴキブリに被せた。

 おおお!と周りから歓声があがる。


「よくやったぞ、勇人!」

「凄いですわ、勇人くん!」

「流石です、会長!」

「ありがとうございます、河牧会長!!」


「ああ!」

 


「「「「「…」」」」」





「…で?この後どうすんだ?」



 ゴソゴソゴソ!

 バケツの中で何かが動く音が聞こえる。



「ぎゃあー!やっぱりまだ悪は滅びてなかったんです!」

「ゴキブリは集合フェロモンを発するんですのよ。するとみるみるうちにどんどんお集りになりますわ。もう終わりですことよ」

「落ち着け綾乃!そんな即効性はないと思う!」

「と、とりあえず、その手を絶対に離さないでくださいよ!」

「絶対ですよ!絶対に離しちゃだめですからね!そいつは飛ぶんですよ!?そんなことになったら…そんことになったら、もう!ロックンロールですよ!!!!」

「落ち着けかおり!意味がわからない!」


 役員達が怯える中、会長は…

 フッ、と笑った。

 ボスは、皆が慌てている時には笑ってろ。良いボスはな、ピンチの時こそ、ふてぶてしく笑うんだよ。

 あの人に教えて貰ったことを思い出す。


「ゆ、勇人?」

 そして言う。



「…佐川!!俺ごとやれえ!!!」

「馬鹿かお前は!その尋常じゃないガッツはどこから湧いてくるんだよ!!山茶、なんか無いのか!?」

「すみません先輩…今手元にTNT爆弾しかありません…」

「ばか!それじゃあゴキブリの死体が爆散するじゃないの!」

「いや、かおり、それ以前に多分この部屋ごと爆散するぞ」

「ふふーん、先輩、私のはその程度じゃありませんよ!この部屋ごとではありません、学校ごといきます!」

「なお悪いわ!!」


「しかたない!そこの消火器とってくれ!後誰かバケツに穴あけられるものを!」

「取ってきましたわ!勇人くん、何するんですの?」

「バケツに穴開けてそこから消火器をぶち込む!たしか消火器の主成分はリン酸アンモニウムだ!いかにゴキブリと言えども呼吸できなきゃ勝手に死ぬだろ!」

「会長!錐がありました!」

「よし!じゃあ抑えてるからそれでひとつきしてくれ!」

「わかりました!」

 やあっ!という声とともに、唯々山茶の放った錐の一突きがバケツに穴を開ける!

 …ように見えたが、

「…ん?あれ、穴空いてないぞ?」

 バケツは無傷だった。

「あっ」

「どうした唯々」

「これ、マジック用に作った刃が引っ込むやつでしたあ…」

「おい!?」

 てへへ…と言うと彼女は恥ずかしそうに少し離れたところへ行く。


「唯々、なんか他にないのか!」

「あの、私はいないものとして見てください…穴があったら入りたいです…」

「穴に入んなくていいから穴を開けてくれよ!変なとこでナイーブだな!」



「もうダメです!耐えられません!」

 彼の前に消火器を持って緊迫した表情で奈々月かおりが立つ。


 うふふふふふふと笑っていて、見るからに正気ではない。


め、目が据わっている…

彼はゾワゾワと危険を感じた。


「お、おい。落ち着け奈々月。早まるなよ。話せばわかる」


「」


「…え?」


「皆殺しだあ!」


「それはゴキブリをだよな!?俺は含まれてないよなあ!?」


「ふぁいやー!!!!!」


「ぎゃー!?!?!?」


 そんな彼の叫びも虚しく、ブシューっと奈々月かおりの持つ消火器から白い煙が吹き出した。


「うおっぷ!」

 その煙に驚いた彼は、バケツから手を離してしまった。


黒い悪魔が世界に放たれてしまった。




 さあ、ロックンロール!





 ****

「…大丈夫か?」

「あー、まあなんとか」


 あの後どうにかこうにかゴキブリを撃退した河牧勇人は、今はソファに横たわり一休みしている。


「すみませんでした!河牧会長!」

「ああ、もういい。顔上げろ、奈々月」

「ほんとに気が動転してしまって、なんとお詫びしたらいいか!」


 あれから奈々月かおりはぺこぺこと河牧勇人に頭を下げていた。

 それもそのはず、あの消火器の発射によって彼の制服はベトベト、そして周りにはぐっちゃぐちゃになった資料や書類が散乱している。

 尚も謝ろうとする奈々月かおりに対して、彼は無理やりかおをあげさせた。


「制服などは、うちでクリーニングして差し上げますわ」

「いつも悪いな」

「いえいえ」

「それと唯々」

「はい?」

「出来ればいいから、あいつらを自動で始末するロボットみたいなの作れないか?」

「わかりました。ルンバにその機能つけて学校を徘徊させておきます」

「いつも悪いな」

「いえいえ」

「あとな、唯々」

「はい?」

()()をどうにかしろ!」

「ええー?なんのことですかあー?」

 彼女は知らぬふりをしたが、彼が言っているのは彼女の部屋のことである。

 彼女は発明に忙しく、今彼女の部屋はちょっとしたゴミ部屋のようになっている。今回のゴキブリが出た原因もそれだろう。


「佐川、片付けに行くぞ」

「あいよ」

「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!あれは完璧な黄金比になってるんですよ!」

「私も手伝います!」

「かおりちゃんまで!」

「んじゃ、ちゃっちゃかやるか!」

「はい!」


 今回の騒動は、唯々山茶の部屋を掃除して、お開きとなった。

…ようにみえた。

 ****

 後日談として


「和也のスマホ、なんか黒くてぎかぎかしてるけど、重くないの?」

「すごいだろ、これ、軍規格のやつだから、落としても傷一つつかないんだぜ!」

「そりゃすごいな」

「あっ」

 そんな話をしているとポロッと、彼はその話題のスマホを落としてしまった。

 ゴスッ

「ほら、ろっきーのやわなスマホじゃあ、今ぶっ壊れてたぜ!」

「僕は落とさないけどな」

 そして、彼が拾おうとした瞬間、

「ん?」

 キュイーンと、ルンバがスマホの上に来た。

 そしてビッ!となにかの音がした。

「おいおい、なんの音だよ」

 不思議に思った彼はルンバを強引に動かす。

 そしてルンバのいなくなった後には…

「げえっ!なんじゃこりゃあ!」

 黒焦げの、スマホだったと思われる物体が残されていた。



 今回の騒動で、スマホを無くした哀れな少年がいた事を、どうか覚えておいてあげてほしい…

こいつらはまたどっかで出てくると思います。

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