△短編:集合写真
高校2年の春休みあけのできごと
「なんか集合写真撮るってー」
「あ、そーなの?」
放課後、授業が終わり帰ろうとしていた僕に和也が伝えにくる。
「…あれ?てかお前、それ大丈夫か?」
「え?」
和也は祖父の形見だとかいう、小洒落たネックレスを付けている。
持っていることは別に校則違反ではないので、風紀委員が来る時や先輩の前では外している。
形見のライターを持っている僕が言えたことではないのだが。
「外しといた方がいいだろ」
「いや、俺はこのまま行く」
「まじでか」
「ああ、これは、俺とおじいちゃんとの絆だからな…」
「そのわりに、先輩が来るとすぐに外すよね」
空を見てカッコつけているが、全然かっこよくない。
だって怖いんだもーん!
和也はそう言って手をお手上げとばかりにあげ、そのままだらーんと下ろし、椅子に全力で体重を押しつけだした。
「やっぱ、先生になんか言われっかなー?」
「言われるだろうね」
「そっかー」
しばしの沈黙のあと、和也はガバッと起き上がって至って真面目な顔をした。それにつられて僕も真面目な顔を返す。顔が近い。
「わかった。没収されそうになったら…」
「なったら?」
「…セクハラだーって、叫ぶ」
やはり馬鹿だったか。
「だいじょぶかあ?そんな馬鹿な方法で…?」
「まあ、北川先輩が来たらすぐ外すから大丈夫だろ」
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「セクハラだー!」
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「そういや、万代先輩もアルバムの時に揉めたって言ってたな」
「元風紀委員長だっけ?なに、CDデビューしたの?」
「バカ、そのアルバムじゃなくて、卒業アルバムだよ」
「ほーん?」
写真を撮り終わり、荷物を教室に置いてきたために、たわいもない会話をしながら教室へ戻る。
ちなみに和也のネックレスは、先生ともめていたが、たまたまコンビニからの帰りの先輩が近くを通ったため和也が速攻で外し、解決となった。
先輩は後でな、と僕に言い残して風紀委員会室に向かって行った。
「その時は万代先輩、ルールごと変えちゃったんだってさ」
「そりゃまたすごいな…」
なんでも、顔に大きな傷があり、顔の一部を包帯で隠し、細かいところを化粧で目立たないようにしている女子に対して、写真を撮る時は包帯を外せ、化粧はするなと言った教師に怒ったとのこと。
PTAを焚き付けたり、生徒達の懇願書を出したり、色々あった結果、3年生は化粧とピアスOK、髪の色は自由でいい、というところまで変えさせたらしい。
「うちの高校、元々結構自由だけど、3年だけ特に自由なのはそれでなのか」
「うん。まあ、万代先輩の人徳のなせる業だね」
その日はそれで、何もなく帰った。
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「はい、この前撮った集合写真を配ります」
先生がそういって写真を配り始める。
「ブフッ!」
それを見て僕は思わずふきだしてしまった。
「あははははは!?」
和也の顔が思いっきり変顔をしていたからだ。
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少しでも反抗したかったと、被告人は供述している。