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 僕達の眼前に塀で囲まれた建物群が見えはじめた。

 道の突き当りには門も見える。


「こういうのって通行証とかお金が必要なのかな……」

「知らないわん!」


 町に入るのに税とか証明書が必要だった場合、僕はそのどちらもない。

 弱った。


 だがここでじっとしているわけにもいかないので行って聞いてみるしかないだろう。僕は門へと近付き、側に立つ衛兵へと話しかけた。


「あの、すいません。中に入りたいのですがお金や証明書のようなものが必要ですか?」

「ふむ、田舎から来たのか? 通行料は銀貨一枚、冒険者と証明できるギルドカードがあれば無料だ」

 衛兵の回答から町へ入るにはそれなりの物が必要らしいことがわかる。


 しかし、僕はこの世界のお金を持っていない。

 当然、コロも持っていないだろう。

 何かいい方法はないものか。


 僕は思案顔で衛兵に話しかける。


「あの、急に話題が飛ぶんですけど、モンスターの部位を買い取るお店のようなものって町の中にあったりしますか?」


「ふむ? あるぞ。商業区にもあるし冒険者ギルドでも買取は行っているな」


「え〜っと、これなんですけど。買取可能な物でしょうか?」


 僕はステータスウィンドウを開き、アイテムボックスからスライムの核を一つ取り出して衛兵に見せる。



「っ!? 今一体どこから……!?」

 僕が中空から核を取り出した事に驚きを隠せない衛兵。


(うう、事前に取り出しておけばよかったな……)

 迂闊な行動をした僕は後悔しながら衛兵の回答を待つ。



「なるほど、スライムの核か。これなら可能だ、状態もいいしいい値段で買い取ってもらえるんじゃないか?」

「じゃあ、それを差し上げますので通行料の代わりになりませんか?」


「んん、いいのか? 傷一つついていないし、かなり高く買ってもらえるはずだぞ? もし金がないのであれば俺が立て替えてやるから買取後にここに払いに戻ってくるか?」

「いえ、核はまだあるので差し上げますよ。お待たせするのも悪いですしね」


「なら、通行料の差額はもらってしまうぞ? いいんだな?」

「はい、これからも利用すると思うのでよろしくお願いします」


「わかった、お前のような気前のいい奴なら大歓迎だ。さあ、入れ」

「ありがとうございます」


 僕は衛兵との交渉を無事終えることに成功する。

 なんとかトラブルもなく町に入れそうだ。



「ルナシルフの町へようこそ! ってやつだ」


 衛兵がにこやかな顔で門を開ける。



「行くよ、コロ」

「わん!」

 僕達は衛兵に軽く会釈すると門を潜った。



「へぇ〜この世界はこんな感じなんだな」


 門を潜った先に広がる町の景色は不思議な感じだった。



 石造りの建物が建ち並び、道路は綺麗に舗装されていた。

 そして馬車の他にダチョウや巨大なトカゲっぽい生き物が荷車を引いてたりする。


 行き交う人も人族と同じ割合で獣の耳を持つ人や頭部が獣そのものの人、耳の長い人や身長が低くてごつい体つきの人と多種多様だ。


(とりあえずお金が必要だよな……)

 町の風景を見ながらこれからの事を考える。


 とにかく何をするにしても先立つ物が必要だ。

 衛兵の話ではスライムの核が売れるようだし、それでなんとかお金を手に入れたい。


「そういえば冒険者のギルドカードがあれば通行料が無料になるとも言ってたよな……」

 僕はスライムの核を普通のお店で売ってしまうより、冒険者ギルドで売ってそのまま冒険者の登録もしてしまえばいいのではないだろうかと考えた。


「……ご主人様?」

 立ち止まってウンウン唸る僕を見て心配そうな顔をするコロ。


「あ、ごめんごめん。じゃあ冒険者ギルドで全部片付けちゃう事にするよ」

「はい!」

 コロの元気な返事を聞いた僕は道行く人に場所を尋ねて冒険者ギルドへ向かうのだった。


 …………


「ほっほぅ。これが冒険者ギルドかぁ」

「ほっほぅ、わふっ!」

 僕のモノマネをするコロと一緒に冒険者ギルドの中へと入る。


(なんかごちゃごちゃしてるなぁ……)

 はじめに感じたのはそんな印象だった。


 酒場のようなスペースがあったり、依頼を貼り付けてある掲示板がいくつもあったり、受付のような場所もある。そんな中を色んな恰好をした人たちが無秩序に動き回っている。なんともごった煮感が半端ない。


 そんなギルドの入り口で立ち止まる僕の両腕には大量のスライムの核が抱え込まれていた。


 衛兵のときのような失敗がないように事前にアイテムボックスから取り出しておいたのだ。といっても森で倒して手に入れたスライムの核全てを持つ事はできないので二〇個ほど持っていくことにする。


 そしてコロと二人で買い取りカウンターらしき場所へと向かう。


「モンスターの部位の買取はここでいいのでしょうか?」

「ああ、ここだ。そいつを売りたいのか?」

「はい、お願いします」


 カウンターから受け答えをしてくれたのは厳つい外見のおじいさんだった。

 白いひげを蓄え、片目にはモノクルをつけている。

 僕はそんなおじいさんが見守る中、カウンターの上にスライムの核を置いていく。



「こんな小童が持ってくるような物なぞせいぜい銅貨数枚がいいところじゃろうが、どれどれ……」


 そんな事を言いながら核を一つ手に取りモノクルでじっくりと検分をはじめる。


「どうでしょうか?」


「こ、これは……っ!?」



 僕が恐る恐る尋ねるとおじいさんは驚愕の表情を見せて固まる。




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