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 ――うわあああああっ! の、呪いがああっ! ポンポン! ポンポン! ポンポン! ポンポン! ポンポン!



「う……ん……」

 僕は元気なジョギングの掛け声により爽やかに目覚める。


「グッ!」

 が、起床と同時に胸に刺す様な痛みが走り、腰部……、もっと詳細に言うと腎臓辺りにも痛みを感じた。

 更に異常に喉の渇きを感じてしまう。


 最近魔力を使いすぎたせいでちょっと身体に無理がきていたのかもしれない。


 体の不調を感じた僕はすかさず塩を一舐めする。

 すると体の不快感は霧散し完全に復調する。

 完全復活だ。



「おはようございます、ご主人様!」

「ん、おはよう」


 どうやらコロとリリアンナも今の外から聞こえた掛け声で目が覚めたようだ。

 だがエイリーンはまだぐっすりと眠っていた。


「エイリーン、朝だよ」

 僕は隣で丸まっているエイリーンの肩をゆする。


「ん……、もう少し……」


 エイリーンはまだまだ眠そうな声を出しながら大きなリス尻尾を優雅に波打たせた。



「しょうがないなぁ……」

 僕はベッドから降りると洗面所へ顔を洗いに行った。

 コロは別室で着替え、リリアンナはマイクロビキニの上からマントを羽織っている。


 僕が着替え終わるころにはコロが室内の手早く掃除を済ませ、洗濯に入っていた。


 家事は当番でやろうと提案したのだがコロが頑なに自分がやると言ってきかず、任せる形となっている。

 コロ曰く、本当は食事も作りたいとのこと。

 気持ちは嬉しいけどあんまり頼りすぎちゃうのも良くないなと思ってしまう。



 そんな事を考えながら再度エイリーンを起こそうとベッドへ向かうと、扉がノックされる。誰だろうと扉を開けると、そこにはギルドの受付のお姉さんが立っていた。



「あ、ギルドの……」

「ロッペーナよ、ソルト君」


「あ、どうもです。どうぞ」

 と、部屋の中へ促す。


「お邪魔するわねぇ。出勤前に寄っておこうと思って。ちょっと早かったかしら?」

「いえ、大丈夫です。もしかして昨日の件ですか?」


「そうよぉ。と、いうわけで、はいっ」

「っと。これが報酬なんですね」


 ロッペーナさんが僕の方へ差し出した皮袋を受け取るとずっしりと重かった。


「その通り、って言いたいところだけど私は詳しく聞かされていないのよねぇ。ねえ、何があったの?」

「あ、えっと……、それは……」


 ロッペーナさんが僕の方へ顔を近づけながら微笑みかけてくる。


 するとふっと淡い香水の香りが漂った。

 僕はドキリとして声を詰まらせてしまう。


「ふぅん、マスターとの秘め事ってわけねぇ」

「す、すいません」


「いいのよぉ。仲間はずれは慣れてるしぃ?」

 と言いながら、よよよ、と泣きマネをするロッペーナさん。


「あ、うう」

 どう返せばいいのかわからず戸惑ってしまう僕。


「ウフフ、気が向いたら教えてね。じゃあ」

 泣きマネを止めたロッペーナさんは僕に報酬を渡してウィンクするとあっさり帰っていった。


「あっという間だったな」

 閉じられた扉を見ながら何となく呟いてしまう。


「それが報酬ですか?」

「おっきいですわん!」


 僕が抱える皮袋を見てワクワク顔のリリアンナとコロ。

 確かにロッペーナさんから貰った袋は両手で抱えないといけないほど大きかった。


「じゃあ早速分けようか」

 そう言いながら僕は報酬の入った皮袋をテーブルの上に置く。


「いや、待って下さい」

「ですわん!」

 息ピッタリで手を前に出し“待った”のポーズをするリリアンナとコロ。


「どうしたの? 二人とも」


「私はその報酬を受け取ることはできません」

「コロもですわん」


「え?」


「今回の一件、何の役にも立っていないですからね……。全滅させたのはソルトです……」

「右に同じですわん」

 二人揃って腕を組み深く頷くリリアンナとコロ。


「んん……。いや、分けるよ。二人が受け取れないと言ってもわけるからね」


「いや! しかしですね!」

「わっふ!」


 僕の言葉に抵抗を示す二人。

 でもこの報酬はちゃんと分けたい。


「僕たちはパーティだ。今回は僕が倒してしまう形になったけどこれから先、もし、パーティとして活動中に僕が討伐に関われなかったら二人は僕に報酬を渡さないつもりなの?」

 二人にちょっといじわるな質問をしてしまう。


「そ、それは……」

「分けますわん!」

 僕の質問に顔を曇らせる二人。


「なら今回も分けるよ。いいね?」



「わ、わかりました」

「ぐっ、承知しましたわん」

 渋々といった感じで了承してくれるリリアンナとコロ。



「ありがとう。パーティではなく個人で活動しているときは分配はしないでいいと思うけど、こういうときは分配すべきだと思うんだ。そうしないと後々トラブルになる気がするしね」


 僕からすれば一人が活躍したから報酬を総取りなんてやってたらケンカになっちゃうと思うわけで。


「確かに……、貢献度で報酬を増減していたら揉めそうですね」

「コロはお傍にいさせてもらえるなら報酬なんていりませんわん」


「ん、気持ちは嬉しいけどコロだけそんなことをすると他の人が気を使うからちゃんと貰おうね」

 頑なコロにもなんとか納得してもらおうと説得する。


「はいっ」

 コロが笑顔で返事を返してくれる頃、テーブルの方でエイリーンの声が聞こえてくる。


「は〜い、分け終わったよ〜」


 声がした方を見れば綺麗に等分されたお金がテーブルの上に乗っていた。

 その傍にはVサインをするエイリーンの姿もある。


「エイリーンっ! いつ起きたの!?」


「さっきだよ〜。みんなおはよ〜」


「お、おはよう。報酬分けてくれたんだ」


「そうそう。じゃ、みんな受け取ってね〜」

 と、強引にみんなに渡していく。

 こういうとき、エイリーンのマイペースな性格は助かる。



「くっ、仕方ありませんか」

「わかりましたわん」


「ありがとう、エイリーン」

 順にエイリーンが分けてくれた報酬を受け取っていく。


「いいの、いいの〜。それよりご飯に行こ〜!」

 僕がお礼を言うとエイリーンは笑顔で返してくれる。


「そうだね、いこっか」

 と、僕は部屋の扉を開けてみんなを促した。


「はいっ!」

「そうしましょう」

 コロとリリアンナも頷き、みんなで階段を降りて食堂を目指す。


 僕は朝から揉めずに良かったなとほっと胸を撫で下ろしながら階段を降りた。



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