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「そこのワッパ共待つのじゃーーッッ!」
僕たちを制止する声とともに小さな女の子が眼前にずざざーっとスライディングしてくる。
「わわっ」
際どいスライディングに接触しそうになった僕は慌てて足を上げてかわす。
スライディングしてきた女の子は艶々と藍色に輝くロングヘアーに褐色の肌、そして横にピンと長い耳が特徴的だった。そして金の刺繍が施された白い服を着ていた。妙に高級そうである。
「曲者!」
突然の乱入者に剣を構えるコロ。
「む、子供?」
と、リリアンナ。
「あ〜……」
相変わらず眠たげな口調で反応が薄いエイリーン。
「こら、あぶないぞ」
僕は服についた土を払いながら立ち上がる女の子の頭を撫でながら注意する。
いくら小さな子とはいえイタズラにはちゃんと注意しておかないとね。
「ふあぁ……、ってちがーう! 今お主たちが話し合っておった事にちと言いたいことがあってな」
女の子は僕に頭を撫でられると目を細めてなんともいえない恍惚とした表情をしていたが途中でハッとして手を振り払い、僕たちに話しかけてきた。
その口調は子供らしからぬ妙に年寄り臭い言葉遣いだった。
「ちっちゃい子、こんなところで一人は危ないからコロたちと一緒に帰るわん。ほれ肩車してあげるわん」
コロは腰に手を当てて胸を張る女の子の両脇に手を通すとひょいと肩車してしまう。
「やったーーッッ! たかーい、すごーい! ってちがーうのじゃッッ!」
コロの肩の上で大喜びする女の子。が、途中でハッとしてコロの肩の上で暴れ出す。
「むむ、違うわん? じゃあ、たかいたかーいっ」
コロは女の子が不満がるので肩から下ろし、今度は高い高いをはじめた。
が、パワータイプのコロが行う高い高いは常軌を逸した高さに到達していた。
滞空時間が異常に長い高い高いを経験した女の子は軽く放心状態になっていたがある瞬間から我に返り声を上げる。
「わわわっ! 高いっ高すぎるぅぅぅううっっ! あ、あああっ! ああっ! でもすごいかも!」
はじめは驚いて怖がっていたが慣れてくるととても楽しそうにしはじめる女の子。
「ふふ、コロのあやしテクにかかればこんなもんですわん」
と、得意気な表情で高い高いを続けるコロ。
くるりとひねりを効かせた尻尾からも得意気な感じが伝わってくる。
「キャッキャ、キャッキャ♪ ってちがーーーーーーーーうッッッ!!!」
女の子はとても楽しそうにしていたが途中でハッと我に返り声を荒らげる。
「コロ、話が進まないからその辺で……」
僕は真顔でコロを制した。
「わかりました!」
女の子をそっと地上に降ろすとビシッと敬礼してくれるコロ。
「ふぅ……、なんてすごい高い高いなんじゃ……。危うく全てを忘れてエンジョイしてしまうところじゃったわ」
手の甲で額の汗を拭いながらやれやれといった表情をする女の子。
「こんなところでどうしたの? 迷子になったのかな?」
僕は女の子の頭を撫でながら尋ねた。
一体どうしたのだろうか。
「ふぁあ……ってやめんかっ! わらわはギルドマスターじゃぞ! 偉いんじゃからな!」
頭を撫でられた女の子はとても気持ちよさそうに目を細めていたが途中でハッとして僕の手を振り払うと自分はギルドマスターだと名乗った。
さっきのスライディングといい、今のウソといい、どうやらこの女の子は相当イタズラ好きのようだ。
「ふふっ、こんな幼子がギルドを治めているはずないじゃないですか」
リリアンナが女の子のかわいいウソに笑顔を見せる。
そんな笑顔はキリリとしつつもどこか艶麗だ。
「そこー! 聞こえてるのじゃーっ!」
が、女の子はリリアンナの呟きを耳ざとく聞きつけて注意してくる。
中々堂に入った演技である。
「ほら、落ち着いて」
僕はぷうっと頬膨らませてご機嫌斜めの女の子の頭を再度撫でて落ち着かせる。
「ふあぁ……、ってちょっと眠たくなってくるからやめるのじゃっ」
女の子は頭を撫でられると今までのことがウソのように気持ちよさそうに弛緩した表情をみせるも相変わらず途中でハッとして手を振り払う。
「あ、うん、ごめんね」
謝る僕。
「わかればいいのじゃ! 全くこれでは話が進まんではないか」
ぷんすかとかそんな擬音が似合いそうなかわいい怒り方をする女の子。
コロコロ変わる女の子の表情を見ているとなんだか和んでくる。
僕を含め、コロとリリアンナもなんだかほっこりとした表情になっていた。
「あ〜、その人は本当にギルドマスターだよ〜。ちっこいけどすっごい年上〜」
と、和んだ空気の中、エイリーンが爆弾発言をする。
「「「ええッッ!?」」」
その言葉に固まる僕とコロとリリアンナ。
ギルド関係者であるエイリーンの発言なら間違いないだろう。
冗談という可能性もあるけど今の流れやエイリーンの表情からはそんな感じはしなかった。
「ふふん、わかればいいのじゃ! 後、エイリーンはもう少し早く言ってほしいのじゃ」
当たり前でしょ? といわんばかりに胸を張る女の子。
「すいませーん」
あいかわらずののんびりした口調で女の子に頭を下げて謝るエイリーン。
「許す!」
サムズアップする女の子。
一連の会話を見ているとやっぱりこの女の子はギルドマスターで間違いないようだ。どうみても小さな女の子にしか見えないけど……。
「あの、それでギルドマスターが僕達に何かご用ですか?」
僕は恐る恐るといった体でギルドマスターの女の子に話しかけた。
「んむっ! ぶっちゃけ一部始終見とった!」
「ええっ!? 結構危なかったんだから見てないで助けてくださいよ!」
と、つい本音が出てしまう。




