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「みんな急ぐよ!」

 追われているのに呑気に会話するみんなを急かして走る。



 オークを撒こうと闇雲に走っているうちに正面に崖が見えてきた。

 崖の高さは大したことはなく、ジャンプすれば上端に手が届くのでなんとか登れそうだった。


「こっちへ!」

 僕は壁面を蹴るようにして一気に崖を登ると地面に伏せて下にいる皆へ向けて手を伸ばす。



「私は大丈夫だ!!」

「コロも行けます!」

 リリアンナとコロは僕の手を借りずとも素早く壁を登ってしまう。

 後はエイリーンだけだ。


「はいっ! エイリーン、掴まって!」

「ありがと〜」

 手を伸ばしエイリーンの手を掴むと一気に引き上げる。


 崖を登り周囲を見渡すも少し離れたところにオーク達が見えた。


 どうやらこちらに気づいているようで真っ直ぐ僕たちがいる方へ向かってきている。


 そんな動きも含めて崖の上に立ったため全体の様子が良く見える。

 先頭の集団の後ろには更に大量のオークの軍団が見え、その後ろには巣が見えた。全てが一直線に見える形だ。


「ここで迎え撃ちますか!?」

「いつでもいけます!」

 剣を抜き、構えるリリアンナとコロ。


「とりあえず私が魔法で数を減らすよ」

 ゆったりと両手を前に伸ばし、迫り来るオークへ向けるエイリーン。


 が、僕はそんな三人の前に素早く移動して皆の行動を遮った。


「待って! みんな僕の後ろへ下がって。考えがある!」


「し、しかしですね……」

 リリアンナは僕の言葉を聞いても納得できずに引き下がろうとしない。


「早く!」

 もう一度強く言う。


「ご主人様の言うこと聞くわん!」

 コロが援護射撃をしてくれる。


「わ、わかったから押さないで!」

 ここでしぶしぶ納得してくれるリリアンナ。

「大丈夫〜?」

 エイリーンもさすがにあの数相手では心配なのか僕へ視線を向けてくる。


「塩カッターッ!!」


 僕は説明する時間も惜しかったので素早く横幅を限界まで広げた塩カッターをオーク達へ向けて放つ。


 団子状になって押しかけて来ていたオーク達を塩カッターが凄まじい勢いで通過し、全てを両断する。残された数匹のオークは突然の出来事に立ち止まり、固まっていた。どうやら未知の恐怖に直面し戸惑っている様子。



「ん、活路が開いたね。逃げるの?」

 見守っていたエイリーンが尋ねてくる。


 確かに今なら走り抜けられるかも知れない。

 だが、それでは危険な賭けに変わりは無い。

 それなら確実にやるべきだ。


「いえ、ここで一掃しますっ!」


 僕はエイリーンにそう答えた。

 そして魔力を練る。



「はあぁぁぁあああっ! ウォームエア!」


 僕が叫び声とともに腕を振るうと荒れ狂う温風が発生し、オークの巣を丸呑みにする。温風は回転を持続させながら巣を覆い、留まり続ける。


「そんな事をしてどうするんですか! いくら規模が大きいといっても傷一つ負わせられていないですよ!」

 一連の流れを見て不安そうに声を上げるリリアンナ。


 たしかにウォームエアは温風を吹き付ける魔法、それ以上でもそれ以下でもない。


 いくら規模が大きくても何の意味もないと思ってしまうのも仕方ないだろう。

 僕の魔力なら竜巻まで昇化させることも可能だが今はそれをしない。

 一応考えあってのことなのだ。


 僕はウォームエア発動後、異能を使おうと魔力を再度練りこむ。


「しーーおしおしおしおしおしおしおしおしお、塩っ!」


 魔力を練り上げ、塩を限界までイメージし一気に放つ。


 するとちょっとした山一つ分といっても過言ではない量の塩がドンッと発生する。その塩山をコントロールしウォームエアが留まっている場所へ移動させる。


 荒れ狂うウォームエアにより僕が作り出した塩はまるで猛吹雪のようにオークの巣を真っ白に染め上げた。



「ご主人様を信じていますわん」


 手を組んで僕をじっと見つめてくるコロ。

 僕はコロにウィンクすると眼前に再度塩を発生させ、簡単な壁もどきを作った。


「塞がっちゃったね〜」

 塩のせいでオークの巣が見えなくなったことに呟くエイリーン。


 全ての準備が整った僕は新たな魔力を掌へ移動させる。

 そして魔法の発動準備が完了するとオークの巣へ手をかざして叫んだ。


「ティンダーッ!」


 チッと小さな音とともにボール程の火の玉が発生し、塩吹雪が吹き荒れるオークの巣へと一直線に飛んでいく。


 そして――



 ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッッ!!!


 ――凄まじい爆発音が木霊した。


 辺りは閃光弾が炸裂したかのような状態になり、強烈な光のせいで何も見えない。そして台風の中に飛び込んだかのような衝撃波が襲い掛かり、立っていることもままならなかった。塩の壁があるのでなんとか凌げているがこれは予想外の威力だ。


「キャアッ」

「ご主人様ーッ」

「わー、転ぶ〜」

 爆破の衝撃により吹き飛ばされるみんな。


「クッ」

 僕自身も自分の姿勢を保つ事で精一杯だった。


 しばらくすると衝撃が収まり、何事もなかったかのような静寂が支配する。




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