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 どうやらさっきのモンスターはリザードマンというらしい。

 確かに僕が持っているゲーム知識と照らし合わせるとそんな感じだった。



「水辺で遭遇する事があるモンスターですわん」

「うん、そんな外見だったね」

 僕はちょっと得意気に話すコロに頷き返す。


「あ、ご主人様! これで五種類の依頼達成ができるかもしれませんね」

「おお、そういえば……。塩カッターのことですっかり忘れてたよ」


「帰りにギルドに寄りましょう!」

「そうだね、これでなんとかなるといいんだけどなぁ」

「わふっ」


 スキルを試していたら偶然未知のモンスターを倒せてしまった。

 コロの言う通り、リザードマンの討伐依頼があればこれで依頼達成となり、資格剥奪は免除される。


 自分で作り出した新魔法の事に気をとられてそこまで考えていなかったがこれは案外ラッキーだったかもしれない。


 僕は握り飯サイズの塩を二つ出し、片方をコロに渡す。


 ぱっと顔を輝かせるコロの頭を撫でながら自分の分の塩を口元へと運び、おもむろにかじる。


 うん、旨い。


 僕達は笑顔で塩を食べながら冒険者ギルドを目指すのだった。


 …………


 無事ギルドへと到着し、二人で掲示板からリザードマンの討伐依頼を手分けして探す。


 うんうん唸りながら掲示板とにらめっこを続けているとコロが目的の依頼を発見して持って来てくれた。

 依頼用紙を受け取ると早速カウンターへと向かう事にする。



「すいません。リザードマンの討伐依頼をお願いします」

「あらぁ、今日は遅いのね」

 受付のお姉さんが艶っぽい声を出して出迎えてくれる。


「はい、ついでだったので」

 僕は依頼を受けて、そのままリザードマンの討伐部位を提出した。

 お姉さんはそれを受け取り手続きに入る。


「ん、依頼達成よ。そして、これで期限内依頼未達で発生する資格剥奪はなくなったわ、おめでとう〜」


「ふぅ、よかったぁ」

「やりましたねっ」


 どうやらなんとか資格剥奪は免れたようだ。


 リザードマンの討伐部位を提出すると無事依頼達成と判断され、資格剥奪はなくなった。色っぽい受付のお姉さんの言葉に僕とコロはほっと胸を撫で下ろす。


「それと同時に研修期間も終了よ。でも冒険者のランクが低いうちは同じ程度のノルマが発生するから気をつけてね。まあ、五種バラバラの依頼という縛りはなくなるからやり易くなるとは思うわぁ」


「なるほど、気をつけます」

「これからはまたスライムを倒せばいいわけですね」


「うん、それでいけそうだね」

「はいっ」


 受付のお姉さんの説明を聞き、気を引き締める。

 ただ、コロの言ったとおり基本はスライム狩りでなんとかなりそうではある。



「フフッ、当てがあるみたいね。じゃあFランクの冒険者さん達、これからも頑張ってねぇ」


「はい、ありがとうございます」

「頑張りますわんっ」


 受付のお姉さんの話だと依頼達成と同時に研修期間は終了し、これで一人前の冒険者と認定されたようだ。そして冒険者になりたてである僕達のランクはFらしい。


「Fランクかぁ」

「マニュアルによると一定数の依頼をこなすことによって試験を受ける資格を得て、それに合格するとランクが上がるようですわん」


「うん、AからFまでの六段階みたいだね。ランクが上がると受けられる依頼が増えるみたいだし、ランクも意識していった方がいいだろうな」

「はいっ」


「まあ、今日はもう遅いし宿でご飯にして寝ようか」

「ご飯っ!」


 訓練所の修繕費を払うためにも色々な依頼を受けれるようになっておくに越したことはないだろう。


 これからはランクアップも視野にいれて依頼をこなしていった方がいいかもしれないなと頭の中で考えつつも、体の方は一日中動き回ったせいかお腹がペコペコだった。


 ちょっとお疲れ気味の僕達はそのまま宿へと帰って食事を取る事にした。

 温かい食事を取るとどうにも眠気を感じてしまい、そのままベッドインとなる。


 明日からは資格剥奪を意識しなくていい分、少し楽に依頼ができそうだな、などとベッドの中で考えていると自然とまぶたが重くなり、知らないうちに眠ってしまっていた。


 …………


 ――ドドドン! ドン! ドドドン! ドドン!



「……ん」


 熟睡していたのにどこからともなく聞こえてくるけたたましい音に起こされてしまう。目をこすりながら音のする方を向けば扉をノックする音だと気付いた。


 だが、ノックというにはいささか激しすぎる。


 まだ意識がはっきりしない僕はおぼつかない足取りで扉へと向かった。


「は〜ぃ、だれですか〜?」

 鳴り止まないノック音にうんざりしながら扉を少しだけ開けて様子を窺う。



 すると――


「わ、私だっ!」


 リリアンナさんがいた。



 リリアンナさんは少しだけ開いた扉に足を差し入れて強引に開くと部屋の中へと入り込んできた。

 そして僕の襟首を掴んで揺すり出す。そんな仕草の一つ一つがサスペンス映画に出てくる女優の様に堂が入っていてつい見惚れてしまう。


「うわっ! ど、どうしたんですかリリアンナさん?」

 僕は目を白黒させながら尋ねた。



「決まっているでしょう! アレです!」



「え? でも昨日の夜に渡したばかりじゃないですか」


 アレで何か通じてしまう自分がちょっと嫌だったが、リリアンナさんご所望の塩は昨日たっぷりと渡したばかりだ。


「いいから! お金ならあります! ほらっ!」


 リリアンナさんは僕の質問を無視してお金を見せてくる。

 そして強引に僕のポケットの中へと入れ込んでしまった。


「え、えぇ?」

「早く! 早くしてください!」


 ついていけない僕を取り残してリリアンナさんは空の袋を広げて、早く早くと急かしてくる。


「あ、はい」

 あまりの圧に負けた僕は言われるがままに塩を袋へ注いだ。


「お邪魔しましたっ! では!」

「あ、おやすみなさい」


 塩を確認したリリアンナさんは凄まじい速度で部屋の外へと出て行った。

 そんな背を見送りながら挨拶をする僕。



(一体なんだったんだ……)


 少し気になったが眠気が勝ってしまった僕はコロが眠るベッドへするりと潜り込んだ。






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