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「な、なんだったんだ……」
あっという間の出来事に僕は言葉を失う。
だが、すぐに眠気が襲ってきたので考えるのをやめてベッドに戻った。
…………
翌朝、僕とコロは魔法の講習を受けにギルド内のスキルカウンターへと向かった。
カウンターへ向かう途中、山に潜伏していた盗賊を誰かが捕まえたという話が聞こえてくる。この辺りでは盗賊なんて珍しいらしく、ちょっとした話題になっているようだった。
そんな噂話を聞いている内にカウンターの前に到着する。
「おはようございます。昨日予約したソルトとコロです」
スキルカウンターには昨日と同じ受付の女の子が座っていたので軽く挨拶をしつつ予約の事を尋ねる。
「あ、おはようございます! 準備はできていますのでこちらへどうぞ」
元気な挨拶を返してくれた受付の女の子に案内されるがままに付いて行く。
すると小規模な闘技場のような場所へと到着した。
(訓練所なのかな?)
そんなちっちゃい闘技場の周囲を見ると壁際には木製の武器が立てかけてあったりする。
「こちらです!」
僕がキョロキョロしているうちに目的の場所へと到着したようだ。
小規模な闘技場は数箇所併設されており、その一つへ案内される形となった。
「へぇ……、って! 人が!」
訓練所の中を興味深げに覗きこむとその中心にローブを来た人がうつ伏せに倒れているのが見えた。僕は容態を確認しようと慌てて近付く。
「大丈夫ですかっ!?」
と、倒れていた人の肩を揺するようにして仰向けにすると……。
「……zzz」
スヤァ、という擬音が似合いそうなほど穏やかな寝顔がオープンされた。
寝ていたのはローブを羽織った女の子だった。
いい夢でも見ているのかとても気持ち良さそうな寝顔だ。
「ああ、また寝てますね」
「わふ?」
そんな状態を見て参った参ったといった表情を見せる受付の女の子。
コロは眠っている女の子の頬をさりげなくつついていた。
「起きてくださあーい。予約の冒険者さんが来ましたよ〜」
と、ローブの女の子を揺する受付の子。
「んん……、わかった」
受付の子に言われ、なんとか目を覚ますローブの女の子。
ローブの女の子はとても気だるそうにゆっくりと立ち上がった。
「こちらが本日の講師となるエイリーンさんです」
「エイリーンです。よろしくね〜」
「ソルトです、よろしくお願いします」
「コロです。お願いしますっ!」
受付の女の子に促される形で全員の自己紹介を終える。
今回講師をしてくれる女の子はエイリーンさんというらしい。
エイリーンさんはまだ眠いのか目を擦りながらフラフラと左右に揺れていた。
講師と聞いていたのでもっと年上の人が担当するのかと思ったが見た目は同い年くらいに見える。
立ち上がった際にローブのフードが取れてわかったがエイリーンさんの頭上にはコロと同じく獣の耳があった。話すたびにそんな耳がぴょこぴょことリズミカルに動くのはなんとも微笑ましい。
そして寝ているときからわかっていたがエイリーンさんのお尻にはとても大きな尻尾があった。なんていうかリスっぽい感じの尻尾だ。その尻尾はとても大きく、ゆるきゃらのぬいぐるみを彷彿とさせる大きさだった。
「それでは私はこれで失礼します。後は任せましたよエイリーンさん!」
「任せて〜」
受付の女の子の視線に強く頷くものんびりした口調は変わらないエイリーンさん。それを確認した受付の女の子は僕達に軽く会釈すると戻っていった。
「じゃあ、講習をはじめま〜す」
エイリーンさんは軽くあくびをしながら眠たそうな目をこちらへと向けてくる。
「「よろしくお願いします」」
僕達は姿勢を正し、同時に挨拶をする。
「うん。じゃあ、魔法を使う前に魔力について簡単に説明していくよ〜。皆の体の中には血が流れるように魔力が流れている。けど、血のように見てわかるものではないの」
「ほうほう」
「はいっ」
リス耳をぴこぴこ動かしながら魔力について説明してくれるエイリーンさん。
僕達はその話に耳を傾け、深く相づちを打つ。
「見えないから想像しにくいかもしれないけど、息を吸ったときに胸に空気が溜まる感じが近いかもしれない。あんな感じで全身を風が駆け巡っていると思えばいいよ~」
「なるほど」
「わふっ」
エイリーンさんの説明では魔力は無色であり、その存在は感覚で感じ取るものらしい。
「じゃあ、魔力を感じてみて〜」
バッ! 掌をこちらへ向けて“さあ、やってみるのだ”と至極真面目な視線を向けてくるエイリーンさん。
「え」
「っ!」
が、僕達はどうしたらいいかわからず戸惑うばかりだった。
軽く魔力の説明を受けただけでは僕達の反応も無理はないと思うわけで。
「適正が合ってスキルを取れたならそんなに難しくないはずだよ〜。血管が脈打つのを感じ取るように魔力が体中を循環しているのを感じ取ってみて」
「何かコツとかないですか?」
「どこに集中するといいですか?」
エイリーンさんが説明を足してくれるもそれに満足しなかった僕達は質問を畳み掛けた。
「う〜ん。ヘソの下辺りから全身へ巡っている感じかな。目を閉じて集中してみるといいかも」
エイリーンさんは腕組みして中空を見つめながら独り言のように呟く。
そんなエイリーンさんの思考を読み取ったかのように大きなリス尻尾がファサっと揺れる。
「目を閉じてヘソの下っと」
「わふっ」
僕はエイリーンさんに言われて早速目を閉じてみる。
そして半信半疑のままヘソの下辺りへ意識を集中してみた。
するとまるで扇風機の最大設定のような風のうねりをあっさり感じてしまう。
(ええ! 意識しただけでこれ!?)
そんなヘソの下から発せられた風は荒れ狂ったように全身を駆け巡っているのが少しずつはっきりと感じられるようになってくる。
「エイリーンさん、魔力を感じとれました」
僕は早速魔力を感じたことを報告する。
「ん、OK。コロちゃんはどう?」
僕の言葉に頷いたエイリーンさんはコロの方へと視線を向けながら尋ねる。




