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「コロは決まった?」
自分のセットが終わったのでコロに進捗を尋ねる。
「…………わっふぅ」
そこにはタブレットを見つめたまま目をグルグル回しているコロがいた。
「だ、大丈夫?」
「数が多すぎますわん……」
どうやらコロは僕と同じ悩みに直面していたようだ。
「ちなみにコロは何ポイントあるの?」
「九ポイントです」
「結構あるね」
「ご主人様が決めてくださいっ!」
「いや、そこは自分で決めないと駄目だよ」
いくら再セットできるとはいえ、その場合消去分のポイントが必要になってくる。
スキルはずっと使っていくものだし、この局面で人に判断を任せるのはよくない。失敗してもいいから自分で選んだ方が後悔が少ないはずだ。
「でも、わからないです」
「う〜ん。すいません、お勧めとかってありますか?」
コロの手助けになればと受付の女の子にアドバイスを求めてみる。
「そうですね。適正があるのであれば魔法を取得しておくことをお勧めします。後は職業セットがお得なので選択される方が多いですね」
受付の女の子は今まで対応した冒険者の収得傾向から助言をしてくれる。
確かに魔法を取っておけば選択肢の幅が広がる気がするし、職業セットはお得だと思う。
「だそうだよ? コロは五つとも空きホルダーなんだよね?」
「はいです」
「なら全部埋めようとせずにいくつか試しに取ってみるのもいいかもね」
「なるほどですわん」
受付の女の子や僕の言葉を聞いて再度タブレットと向き合うコロ。
「……決めましたっ!」
しばらくするとコロの元気一杯な声が聞こえてくる。
スキル選びから解放されたコロの表情は雲ひとつない青空のようにスッキリとしていた。
「お、見てもいい?」
「はいですわん!」
どんなスキルを選んだのか気になった僕はコロにスキルボードを見せてもらった。
すると……
【スキル】
●【剣術】
●【初級回復魔法】
●【膂力上昇】
●【膂力上昇】
●【膂力上昇】
下三つがおかしかった。
後、ポイント全部ぶっこんでた。
「コ……、ロ……さん?」
男前過ぎるコロさんに驚きの視線を向ける僕。
「わふ?」
そんな僕の視線に首を傾げて応えるコロ。
「このスキルはどんな考えで選んだの?」
僕は事情聴取を試みる。
「えっと、剣をご主人様に買っていただいたのでそれがうまく使えるように剣術を取りました。あと、傷の治療に塩を塗るのは染みるので回復魔法をとりました!」
「あ、うん、なるほど。残りは?」
「ご主人様をお守りできるよう、力持ちになりたかったですわん!」
「なるほどそうきたか」
「はいっ!」
聴取の結果、全てに明確な理由があると判明。
コロが選んだことだしそれはそれでいいのだが気になる事もある。
少し気になる事があった僕は受付の女の子に声をかけた。
「あの、すいません」
「はい、どうかされましたか?」
「能力上昇系のスキルは重複収得してもそれぞれ効果があるのですか?」
「……え、いや、……どうでしょう?」
僕の質問に受付の女の子は腕組みして悩み出す。
「同じ系統なら何個取っても一つという扱いになったりします?」
「今まで重複収得をした方を知らないのでなんとも……。ホルダーが五つしかないのに同じものを取ろうと考える人を今まで見たことがないですし……」
「そうですか……」
「でも、このスキルセットは結構お利口さんなので魔法が使えなければ収得できないようになっていますし……、もし複数所持して効果がない場合は二個目から収得できないように灰色表示になると思うので多分効果はあるかと……」
「ありがとうございます」
「いえ、お力になれず申し訳ないです」
受付の女の子いわく、多分大丈夫だろうというお答えを頂く。
こればかりは試してみるしかないが膂力上昇のスキルがどの程度のものか分からない上に一つの時と三つの時の比較ができないため、きっとはっきりとしたことはわからないだろう。
もしうまくいっていなければ僕がフォローしていけばいいだけだし、これ以上考え込むことは止めしておく。
僕達がボードから目を放した様子を見て受付の女の子が声をかけてくる。
「お二人ともスキルセットは終了したようですね。ところで魔法スキルは収得されましたか?」
「あ、はい」
「とりましたわん!」
僕は生活魔法、コロは初級回復魔法を取っていたので二人同時に頷く。
「それでしたら一度、魔法の講習を受ける事をお勧めします。問題なければ明日の午前中に予約を取っておきますがどうされますか?」
「二人同時に取れるのでしたらお願いします。別々になるようでしたら同時に取れる日に予約を取りたいです」
「あ、大丈夫ですよ。明日ならお二人のみになるかと」
「じゃあ明日でお願いします」
できれば同時に済ませたかったのでその旨を伝えると大丈夫と返事が返ってきた。
なので早速予約を取ってもらう。
「かしこまりました。では明日の午前中に再度スキルカウンターの方へお越し下さい。それではこれでスキルセットの講習は終了とさせて頂きます!」
「はい、ありがとうございました」
「ありがとうございましたっ!」
受付の女の子の終了宣言に僕達はお礼を言ってギルドを出た。




