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「え、いいですけど」

「助かる! こいつはいい料理ができそうだぜ! 詳しい話は後で厨房に来てくれ。待ってるからな!」


 僕が了承するとクッコさんは言いたいことだけ言って厨房の方へと戻っていってしまった。



 異能で出している事はなるべく言いふらしたくないけど売って欲しいと言われるとお金に目が眩んでつい頷いてしまう。


(まあ、塩が売れるのはラッキーかな。ただで供給できるし……)


 僕にとっては結構美味しい話だったので良かったかもしれない。


 ただ、おおっぴらにやりすぎるとややこしいことになる気もするので今度から塩を盛るときはもう少し注意した方がいいかもしれない。

 だけど盛るのはやめない、絶対だ。


「ごちそうさまですわん!」


 などと考えているうちにコロが食事を終える。

 僕も慌てて残りの塩をかき込む。


「コロ、先に帰ってて、ちょっとクッコさんと話をしてから部屋に戻るよ」

「はいっ!」


 コロに先に部屋に戻ってもらうと僕はクッコさんの待つ厨房へと向かった。

 そしてクッコさんと話し合った結果、塩を安定供給することになってしまった。

 ただお金もいただけるので安定した収入源が確保できたと思えばいいだろう。


 話を終えた僕はコロの待つ部屋へと帰る。


「わふっ、お帰りなさいっ」


 と、パジャマ姿のコロが飛びついてくる。

 尻尾はパタパタとせわしなく振れていた。


「ただいま。じゃ、寝ようか」

 僕はコロの頭を撫でながらベッドへと向かうのだった。


 …………


 翌日からは前日と同じ日程を繰り返す形となった。


 午前中に核を売り、そこから町を出てスライムを狩る。

 そんな事を十日ほど続ける事となる。


 レベルの方は僕が五一、コロが二三と順調な成長を遂げている。

 僕の方はスライム相手ではレベルが上がりにくくなってきたようで中々数字が動かなくなってきた。

 そしてコロは僕よりレベルが上がりづらい感じがする。


 でも多分それは反対で、コロのレベルが上がりづらいのではなく、僕が上がり易いのではないだろうかと考えていた。こっちに飛ばされた面子はもれなくレベルが上がり易いとかではないのかなと予想している。


 クッコさんへの塩売りもうまくいき、随分と手持ちに余裕も出てきた。

 色々と小物も揃え、コロ用の武器も解禁したりして楽しい毎日となりつつある。


 だが、そろそろコロと話をしなければならないだろう。


 成り行きで一緒にいる状態を続けているがこれがコロにとっていいことなのかわからない。


 少し話をしてみて何かやりたいことあったり、故郷に帰りたいのであればそれに向けて協力してあげるのが一番いいのではないかと思っている。

 僕がベッドの上に座ってそんな事を考えているとパジャマからメイド服に着替え終えたコロが近寄ってくる。


「ご主人様、今日は森に行かないのですか?」

 僕が部屋から出ないのをいぶかしんだコロが顔を覗き込むようにして聞いてくる。


「うん。コロ、座って」

 僕はコロに向かいのベッドに座るよう促す。


「はい」

 僕の真剣な表情を見て素直に従うコロ。


「ここでの生活も落ち着いてきたし一度コロに確認しておきたいことがあったんだ」

「確認ですか?」


「そう、本当はすぐにでも聞いておいた方が良かったかもしれないんだけど、今までずっとバタバタしていたから後回しにしていたんだ」


「わふ?」

 首を傾げるコロ。


「コロはこれからどうしたい?」

「これからですか?」


「うん。僕はもしコロが故郷に帰りたいならそれもいいと思ってるんだ」

「っ!?」


「もしくは何かやりたいことがあるならそれを支援してもいいとも思ってる。コロ……?」

 と、ここまで話したところでコロが大粒の涙をぽたぽたと垂らして泣きはじめてしまった。


「ど、どうしたのコロ?」

「ご主人様はコロが嫌いですか?」

 ぐしゃぐしゃの顔で僕を真っ直ぐ見つめてくる。


「え? ううん」

 そんな風に思ったことは一度もない。


「確かにコロはお役に立てていないかもしれなません。邪魔なのかもしれないです。でもっ……!」

「え? ええ?」


 何やら話がおかしな方向へと進んで行く。

 どうやら僕が厄介払いしたくてこんな話を持ち出したと勘違いしたようだ。


「お願いですっ! お側に置いて下さい! なんでも、なんでもしますからっ!」

 と、言いながら僕の胸にダイブしてくるコロ。


「あ、はい。全然大丈夫です」

 慌てた僕は気の利いた事も言えず、単に即答した。


「っ!?」

 ぱっと顔を上げて目を見開くコロ。


「じゃ、じゃあ、今まで通りってことでよろしくね。コロ」

「ありがとうございますっ!! ご主人様!」

 僕の胸に顔をうずめギュッとしがみついてくるコロ。


「んん。いや、むしろこちらこそ悪いかなと思って。僕ってお金持ちってわけでもないし、この先どうなるか見通しもたってないしさ。このままじゃコロに迷惑かかっちゃうかもしれないと思ったから……」


「迷惑なんてないです! 一生お仕えさせてくださいっ!」

「あ、はい。僕も頑張ります」

 ということでコロに圧倒される形で話は終結した。


 はじめて会ったときも中年男に酷い仕打ちを受けていたし、今、話の最中もすごく必死に見えた。もしかすると故郷に行っても頼れる人なんていないのかもしれない。


 僕もこの世界で頼れる人はいない。

 うまくいけばクラスメイトと協力関係を結べるかもしれないが僕の立ち位置的に難易度は高い。


 そんな状況だったからコロの存在は僕にとってとても大きかった。


 役に立つとか仕事ができるとかそういう事を超越したもの。

 信用できる、心を許せる相手がいるという事。

 何の気も使わずに穏やかな日常会話ができる相手がいるという事。


 それは身一つで見知らぬ地に投げ出された自分にとって何よりもかけがえのないものだ。


 ほんの少し前までは家族に対してわずらわしいとか一人の方が気が楽だとさえ思う瞬間もあったが、いざ周りに頼れる人が一切いない状態になると真逆の気持ちが芽生えてしまう。


 だからこそコロには恩を返したいという気持ちで今回の話をしたのだが逆効果になってしまったようだった。自由の身になったと証明するために契約書もコロの目の前で破こうと考えていたが今それをやると余計に不安にさせるかもしれないのでやめておくことにする。


 もっと信頼してもらえるまでは今まで通りの状態を維持していった方がよさそうだ。僕はそう考えながらコロに笑顔を向ける。


「じゃあ、今日も頑張るか!」

「はいっ!」


 と、僕達はいつも通り冒険者ギルドへと向かうのだった。




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