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気付き
もし君が振り返ってくれたなら
僕は悔いなく逝けるのに
僕の姿が見えない君は
まだあいつの背中を見てる
そんな君を見る度に
ありもしない心が痛む
痛覚なんてとっくに無いのに
9月20日
僕は何をしてたんだろう
記憶がない
覚えているのは、僕が黒谷 新であること
17歳であること
幼馴染の鈴村 一花の事が好きだということ
ここには何もない
暗闇 静寂
ただひたすらに歩いて
遠くに光が見えてきて
そこに到達してみると、横たわった僕の姿があった
ベッドに寝かされている僕を取り囲む家族
何故か母さんは泣いていた
見たことのない顔
医者らしかった
隣には看護師さんもいる
僕は 死んだのか
その時ようやく気が付いた
雨の降る窓に、僕の姿が映らなかった