蜃気楼と骨の城
何か面白い小説はないかとよくいわれるが
詩想はつまらぬ小説を
読んでるときにままやってくる
あくまで私がつまらぬと思った
という範疇においてであるが
字面に集中できずに
ぱさぱさに草臥れてしまった脳が
別天地のオアシスを求めるのだ
本日でいえば高橋たか子の「骨の城」
文庫本わずか26ページの砂地に
私はいく度もあえぎあえぎ
史跡ならぬ詩の石を
三つも見つけた
蜃気楼 蜃とは大蛤のこと
古人は大蛤が気を吐いて
空中に楼閣を描くと考えた
高橋たか子も霊感を得て
「骨の城」を建てたわけだから
どんなに私がつまらぬと思っても
その城下には ほんらい
美しい砂と水と空気をもった都が展けているわけだ