19.表向きの裏口入学 試験
先手必勝!!
と意気込み、《ガバメント》を構え箕面校長に連射する。全弾命中するが、
「なかなか、いい武器じゃないか。それ程の威力なら、ここの生徒達もほとんど倒せるだろう。私の所まで辿り着いたのも納得だよ。」
…それをくらって平気な顔してるとか、あんた何者だよ。
《ガバメント》の弾薬が無くなったので、距離を取りながらリロードをする。
「では、次は私だ。」
が、距離など無かったかのように、ボディブロウを決めてくる。
「ガッッ!!」
そのまま、生徒の群れまで吹き飛んで行く。
「朝也くん!」
ヒナさんのパンチとは比べ物にならないぐらいの威力だ。
だが、気絶はしない。
「修行のおかげですね。」
顔は見えないがヒナがドヤ顔しているのが目に浮かぶ。
「ヒナ…ハンドガンじゃあいつ倒すの無理だろ。何発くらっても平気な顔してるぞ…」
「当たる所に当たればちゃんとくらいます。何処とは言いませんが、目とは言いませんが。」
「よし、目を狙うか。」
腹の痛みもマシになり、フィールドに戻る。
「あまりに軽いので死んだのかと思ったが、大丈夫のようだね。そんな特殊な武器を持つ子ともっと戦いたいのでね、しっかりしてくれよ。」
「なら、手加減とかして欲しいんすけどね…」
「あれでも手加減したつもりだったのだがね。」
あれで手加減かよ!本気出されてたら死んでたな…
再び、《ガバメント》を構え次は目を狙うが…
「あれ?」
そこにはもう箕面校長はいない。辺りを見渡すが、何処にもいない。
とその時、途端に暗くなり、上を見ると…
「危なッ!」
上から拳を地面に叩きつけるように箕面校長が殴りかかってきた。
幸い、気づくのが早かったおかげでかわすことができた。
あっぶね〜、気づくの早くて良かったー
なんて思っていると、地面が割れた。
なんの比喩でもない、文字通り『割れた』のだ。
縦に3m程キレイに割れたのだ。
「………!」
「ああ、つい力を入れすぎたようだね。久々の闘いなので張り切りすぎたみたいだな。」
声も出ず驚いていると、それを『つい』で済まそうとしているおじさんがいる。
勝てるわけないだろッ!『つい』でこれ程の威力だぞ!
ヒナに助けを求めると…
ニコッ
と、『頑張って下さいね。」という意味の笑顔を向けられる。
頑張ってどうにかなるレベルじゃねーよッ!
どうにか打開策を考えるんだ。
考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ!
ふと、ジャージの中にヒナさんと会った森で見つけたナイフを思い出した。
出して構えた銃のすぐ下に、先端を銃口と同じ向きにし、構える。が、
こんなナイフでどうにかなるわけないよな…、ヒナさんにもどうにもならなかったし……
地面から拳を抜いた箕面校長が再びこちらに身体を向け、構える。
「おお、次はナイフか。君は珍しい武器を使うんだな。面白い!もっと私を楽しませてくれよ。」
戦闘狂かよ…!この校長!
「くらえ!」
3発程威嚇射撃をしながら、箕面校長に接近する。
全て命中はする。が、気にも留めない様子だ。
クソッ!
ナイフの射程まで入った所で、ナイフを前に突き出すように、近接攻撃を一発!
しかし、一発目はかわされ、
出したナイフを戻すそうにし、二発目!
だが、それもかわされお返しとばかりに顔面にジャブを繰り出してくる。
それを紙一重でかわす。
ここだ!
と、ほぼゼロ距離、箕面校長の左目の前に《ガバメント》を突きつけ発砲する。
「グッ!!」
と、よろめき2、3歩後退する。
そして、距離を取りそのまま《ガバメント》を全弾箕面校長の顔面に目掛けて発砲する。
全弾命中
「やったか……。」
あ、やべ。生存フラ……
「やるじゃないか。朝也くん。」
やっぱり…生存フラグを立てなければ……
「『生存フラグを立てなければ……』みたいな顔していますが、朝也くん。例え立てていなくとも、この結果だったと思いますよ。」
「ヒナが目を狙えって言ったんだろ!」
「『狙え』とは言ってませんよ。『狙え』とは。」
「紛らわしい言い方するなよ!」
「それに、潰すなら両目潰さないと。」
さらりとえげつない事言うな…
「私をよろめかしたのはこの学校じゃ君が二人目だな…。仕方ない、入学されたら彼女がうるさいだろうし、少し本気を出すか。」
その途端、全身に痛みが走る。一発目のボディブロウなど比べ物にならないぐらいの威力だ。
イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
痛みを感じ、地面に倒れかけた途端次は下から攻撃をくらい放物線を描き、地面に叩きつけられた。
「ァ……あ……。」
箕面校長がおれに跨るように立ち、こちらを見下ろす。
「少し本気をだしすぎたな…。すまない、朝也くん。」
「こ…これが……魔法か………?」
「ん?私は魔法など使っていないが。」
「なら、なんで……」
なんであんな一斉に痛みが…
「はい。本当に魔法は使っていません。あれはただの『スピード』です。」
「そんな…」
「私もギリギリ捉える事が出来る速さです…」
「ほぉ。君は私を捉える事が出来たのかね。」
「ギリギリ…ですが。」
「まぁいい。では、朝也くん。これでさよならだ。生きていたら病院に連れて行ってやろう。」
その言葉を最後に、拳をこちらに振り下ろす。
ここで、おれの、朝也の意識は途絶えた………