閑話6 とある変身英雄の日常!?
なんだ、この話?
対人戦と対魔物戦の修行じゃなかったっけ?
ちっくしょう、なんだってこんなことに…
その当時のオラの心境はこんな感じだった。
オラたちは野盗…予定だった。
隣の国から仲間と一緒にこの大国に出稼ぎに来ただ。
この国に来て、感じたことは実に平和そうで豊かだなということだ。
これならすぐに仕事ができると思った。
しかし、現実は甘くなかった。
仕事が見つからない。
やる気はある。
しかし相手が欲しいのは即戦力になるものだけ…
田舎者丸出しで出稼ぎに来ただけの素人を雇ってくれるような奇矯な場所はどこにもなかった。
そして、同じように職を見つけられなかった村の仲間たちと共にオラたちが出した結論は…野盗になることだった。
いよいよ、初めての野盗生活!
その1日目に選んだ獲物はどこかの隊商だった。
まずはアレを襲おうということになった。
やったことはないけれど、できるはずだ。
オラたちは待ち伏せをするために森の中に身を潜めて緊張しながら準備をはじめる…はずだった。
「待てぃ、そこの悪党ども!」
木の上に何かがいた。
白い仮面で顔を隠した全身真っ白な怪しい奴だ。
あんなのが出るなんてここの治安はどうなってるんだか。
ちょっと気にはなったが、野盗デビューしようとしてるオラたちが気にするのはどうなんだろうなぁ。
何かが間違っている気がしてならないので考えないことにしておくだ。
「商人を襲う野盗など言語道断! このボ…コホン、俺、白騎士が退治してくれる!」
本気で変なのが沸いて出たなぁ。
どうするかな…
対処に困るし無視するわけにもいかねえが、相手にするのもどうかと思うし…
しかし、事態はのんびりはしていなかった。
白いのが飛び降りてきて、オラたちを挑発してきたんだ。
「さぁ、どうだ。 貴様らにオレは倒せんぞ。できるならやって見せろ!」
意外にチビだったそいつの挑発があまりにもオラたちを馬鹿にした感じで、野盗になるはずだったオラの仲間は頭さ来て襲いかかった。
アレは力自慢のゲンスーだ。
村の中であいつに勝てるやつは誰も居なかった。
オラたちの中でも一番の強者だ、しかし……
「ぐふぅ!」
なんとゲンスーは一撃でやられてしまった。
何か光ってる棒のようなもので腹を突かれたみたいだった。
なんだかよくわからないものだが、魔法の武器かもしれねえ。
そして気が付いたら目の前に白いのがいて……
オラたちはあっさり返り討ちにあった…らしい。
そのあとすぐにのされたせいで戦いぶりは分からなかったが、集団でかかっても全く歯が立たなかったらしい。
後で知ったがあの白いのは数年前からあの辺りに出現するようになったらしく、悪党を懲らしめたり魔物に襲われる隊商を助けたりしているらしい。
そのためにあの辺りから盗賊の類は軒並み撤退していて、安全な行路として有名だったそうだ。
ただ、姿がダサいことから、影で『白い変人』とか『ダイサーマスク』とか『格好仮面』とか呼ばれているんだとか。
そんな情報も知らずに野盗になろうだなんて今にして思えば無理だったんだよなぁ……
そして、戦いに負けたオラたちは目を覚ました時にはもう縄で縛られていた。
「未遂だが一応犯罪者だからな。反省してもらうためにも警備隊に連れて行くぞ」
すでに縛られたオラたちには何もできない。
座り込んで抵抗してる奴らも気にせずに引きずられていく。
あんなちっこいのにものすごい力だ。
足や尻が痛いので仕方なしに歩く。
野盗になんてなるもんじゃねえなぁ。
あんなに人数がいたのにこんなにあっさり変なの1人にやられるようじゃ、訓練受けた腕利きの護衛の集団なんかには勝てねえだろうしなぁ…
オラたち、どうなるんかなぁ。
なんか、泣きたくなってきただ。
しばらく歩いていたが、どこかから妙な音がした。
「ん?マズイな!ここにも出るのかアレが!」
白いのが急に慌て出して、突然オラたちの縄が斬れた。
どうしたんだ、突然?
「おい、早く逃げろ、危ないぞ!」
いきなり白いのがそう言って来たが何のことか分からなかった。
なして開放するんだろうか?
いきなりの事にまったく理解ができなかった。
そのとき、いきなり空から岩の塊が降ってきた!
それに踏み潰されてオラたちは死ぬはずだった。
ところが白いのがその巨大な岩を吹っ飛ばした!
倒れる大木、巻き上がる土埃、そして何かが吠える声!
その声を聞いた時、オラは『死んだ』と思った。
この声の持ち主には絶対に勝てないと……
ところが、白いやつは、
「このクラスの奴は本気で戦わないと結構危ないから面倒なんだよなぁ」
などと言って、吠え声に向かって飛んでいった。
文字通り空を飛翔してそのナニカに向かっていった。
そして、激突音と咆哮が何度も響きわたった。
そこで見た!
白いのと巨大な亀が空に浮きながらとんでもない戦いをしていた。
後から知ったが、それは暴嵐亀という国で危険指定するような危ない存在だったらしい。
そして、衝突と打撃音、身震いするような振動がどんどん遠ざかっていく。
夢のような…現実的でない光景がオラたちの前から去っていった。
あとに残ったのは呆然とするオラたちと、なぎ倒された大木、陥没した大地など、2体の戦いで破壊された自然だけだった……
……いつまでそうしていただろうか。
オラたちは誰からともなく森から街へ歩き出していた。
「なぁ」
「あぁ」
「うん」
「だなぁ」
何故か周りとはそれだけで通じた。
なんというか、世の中の不思議さと広さと不条理を垣間見た気分だった。
目の前で見たものは何かの夢だと思っておこう。
だけどもう、野盗になるのはまっぴらだった。
また明日から真面目に仕事を探しに行こう。
次回も閑話、クラスでの日常
ちなみに彼の姿はグレートサOヤマンを白くしたような姿です。
身長が小さめなこともあって、あぁいう評価が……




