(28)先輩方はかなり強いようです
まずは合同武闘訓練のトーナメントの顛末です。
次の日の本戦に選ばれたのは全部で32名。
この中からトーナメントで勝ち残った一人が優勝となる予定だ。
リザリィは第五試合、僕は第八試合だ。
お互いに勝ち残れたら準々決勝で対戦することになりそうだ。
くじの結果だから仕方ないんだけどさ。
1年は僕ら2人だけで、2年は6人、残り24名は全員3年生だ。
学年の差はかなり大きいようだ。
そして……
「それまで、勝者エミー選手」
リザリィが敗北した。
相手は鬼人族で3年の先輩だった。
リザリィは今まで雷の魔法で勝ち上がってきたけれど、この先輩はしっかりと対策を採っていたようだった。
まずは鉄の大盾を持っていたのだが最初に魔法で大盾を巨大化。
鉄の塊と化した大盾がさらに形を変えて武闘場の四隅から中央に伸びる避雷針となった。
ピラミッドの模型や骨組みみたいといえばわかりやすいだろうか。
その上、武闘場に杭のような鉄棒まで生やしていた。
これで雷魔法の殆んどが潰され、あとは実力勝負、となったわけだが…
唯一の得意技が封じられたリザリィに勝ち目は無かった。
どうやらリザリィは基本属性の攻撃魔法を覚えていなかったようだ。
雷が使える以上、火と土の属性にも適性があるはずなんだけど、一切使う気配すら無かった。
応援していたクラスメイトも残念がっていたけど、対策を取られていた上に基礎の実力が違い過ぎた。
あれは仕方がないだろう。
次は僕の番か。
第六、第七と順調に3年生が勝ち上がっていく。
そしていよいよ第八試合。
僕の番になった。
「久しぶりですねぇ」
「お久しぶりです。セキダ先輩」
「おや。名前を憶えていただけていましたか。嬉しいですね」
対戦相手は以前試練で会ったことのあるセキダ先輩だった。
彼は確か土魔法が凄かったのを覚えている。
とんでもない精度で攻撃魔法の応用までこなしていたのだ。
そういえば上級生って普通に魔法を使うんじゃなくて応用が利いた使い方してるよな。
これが経験の差ってやつなのかな。
今まで見た勝者はみんな工夫した魔法の使い方と戦闘技術を持っていた。
とすると、この先輩も絶対何かを持っているはずだ。
気を付けないと……
「それは、あそこまで見事な土魔法の応用はあまり見ませんから…」
「なるほど、それで覚えていただけたのは光栄ですけど、僕の得意属性は土ではありませんよ」
「そんなことを教えて良いんですか?」
「有望な1年に対するハンデですよ。教えたところで別に問題はありませんよ。君の氷魔法と水魔法は見せてもらっていますからね」
確かに、土魔法『が』凄い先輩でなく、土魔法『も』凄い先輩という情報しか話していないわけだし、ここから推理するなら…
基本属性3種か土からの派生の雷か闇辺りだろうか…
どれが得意だとしても厳しくなるだろうな……
「それでは、試合開始」
審判の声と共にまずは小手調べ。
風の中高位魔法を解き放つ。
「突風鞭」
風の連撃がセキダ先輩を襲う。
突風を束ねた打撃を四方八方から連打し、鞭で打たれたような跡を残す事からその名がついた上級手前の攻撃魔法だ、しかも術者の意のままに操作可能という使い勝手も良好なこの術。
当たれば先輩といえども……だがしかし!
「隠身」
先輩の姿が唐突に見えなくなる。
そして放った攻撃は先輩の居た辺りを虚しく通り過ぎる。
これは闇魔法の透明化の術だ。
とすれば先輩の得意なのは闇か!
確かこの魔法は奇襲などの攻撃する前には必ず姿が見えるはずだ。
なら、迎撃の構えで迎え打ち、カウンターで返すしかない。
時間が過ぎる…一瞬のような長い時間が過ぎたような、そんな緊張感の中。
離れたところに先輩が姿を現した。
今だ!
僕は魔法を解き放とうとした!
「~~」
先輩が早口で何かを唱えた。
すると恐ろしい速度で氷柱が飛んできた。
氷属性!
まさか…想定外だった。
あまりの速度に驚くがギリギリ迎撃が成功する。
「流水鎌」
水の鎌が氷柱を迎撃していく。
しかし、速度が違いすぎる。
僕の氷柱撃もここまで早くないぞ。
どういう応用を効かせればここまで早くなるんだ!?
しかし水の鎌と氷柱がぶつかり合い水煙を上げながらも全てを撃ち落とすことには成功していた。
迎撃でなんとか防いだ、でもセキダ先輩を倒さないと勝利は取れない。
先輩の姿を探そうとすると…
首筋に剣を当てられていた…
いつの間に……
「…降参、しますか?」
「…参りました」
なんというか動きが見えなかった、いや見えないようにされていたというべきか。
水煙に紛れて隙を突かれたのは分かるんだけど、想像以上に素早かった。
今のままでは勝てない。
「それまで、勝者セキダ選手」
審判が勝者をコールする。
そして剣を収めるセキダ先輩。
「いやいや、驚きましたねぇ。まさか4倍で放った魔法を迎撃されるとは思いませんでしたよ」
「先輩、あの速度。一体どうやったんですか?」
「それは…秘密にしておきましょう。もし知りたいのであれば魔法校舎の地下1階にある大図書館で魔導大鑑を探して読んでみることですね」
そう言って先輩は舞台を降りていった。
僕も舞台を降りる。
「お互い残念だったわね。でもどうしたの?途中から動きが悪くなったみたいだったけれど」
リザリィが迎えてくれた。
けれど、『途中から動きが悪くなっていた?』
「ねぇ、もしかして僕の動きかなり悪かった?」
「え、えぇ。随分動きが悪くなっていたわね。逆にあの先輩は恐ろしく動きが良くなっていたけれど…」
僕の動きが悪くなって…逆に先輩の動きは良くなっていた…
もしかして…これは…
そうか、これが先輩の得意属性だったのか。
僕は理解した!
でも理解したからこそ今の僕では勝てないと思った。
クラスの応援席に戻ると、そこにシャルちゃんが混ざっていた。
いつの間にかクラスの女子を味方につけていたようだ。
良好な交友関係が広くなるのは良い事なので文句はない…が…
「旦那さん、残念だったねぇ。奥さんも傷心の旦那さんを慰めてあげなきゃ」
「それは…そうですよね! ディル君、惜しかったけど凄かったよ。あたしが慰めてあげるね」
こういうからかい方をされるのだけは勘弁して欲しいところだ。
そしてシャルちゃんも乗っからないで欲しい。
そして、ニコラ君。
血涙出しながら肩を掴むのやめてくれないかな?
……ところでシャルちゃんはどうやって慰めるつもりなんだろう?
「ところで、奥さんはどういう慰め方をするつもりなのかしら?」
「む…興味…津々…」
「気になるのはわかるけどやめなさいよ。気になるけど…」
気になっていたのは僕だけじゃなかったみたいだ。
メーナやサリエラが質問していた。
そしてディアラナさん、貴女は止めたいの?それとも聞きたいの?どっち?
それと、奥さん言うな!
シャルちゃんも困って……いないみたいだった。
僕が気にしすぎなのかな…?
他の女子に男子は普通に聞く態勢に入ってるし…どうしてこう無駄なところで団結するかな、うちのクラス…
「えーと……頭なでていい子いい子したりする?」
あー………
まぁ10歳だしなぁ…なんか少し安心した。
他の皆も、なにやら似たような顔になっている。
シャルちゃんだけが分かっていないみたいだけど、今は分からないで欲しい。
どうかそのまままっすぐ育ってほしい……どうか…そのまま……
次の日はクラス全員が敗退していたために完全に観戦モードに入っていた。
当然の様にシャルちゃんが混ざっているけど気にしてる人がいないっていうのもある意味凄いな。
斧で武闘場に巨大なクレーターを作るドワーフの先輩に、尋常でない速度と剛力の獣人の先輩、半竜化する先輩や背後の影から攻撃する先輩など凄い試合ばかりだった。
昨日の試合でリザリィを破ったエミー先輩は、次の試合で敗北していた。
次の相手用に対策を取っていたようで地面に鉄板を張り巡らせる等の大技で樹と土の魔法を妨害するという技術を見せていたけれど、対するフロワード先輩は今まで使わなかった水魔法を使い、勝ちを拾ったようだ。
そしてセキダ先輩は順調に勝ち上がり、フロワード先輩も破り準決勝まで勝ち上がっていた。
しかし準決勝がなんというか…おかしい試合だった。
とんでもない高速で動くセキダ先輩に対し、攻撃がことごとくすり抜けるというヴァルレイン先輩。
魔法を使っているのは分かるんだけど、あれは反則だろう。
僕が見た速度よりは遅く見えるけれども、それでも十分以上に素早いセキダ先輩……人間辞めてる速度だった。
攻撃が当てられない速度で動き素早い連撃を繰り出すセキダ先輩も先輩だが、当たってるはずの攻撃がすり抜けてダメージ無しというのも酷すぎる。
どっちもどっちとしか言い様がないけれど、最終的にはヴァルレイン先輩が勝利を収めた。
そして、決勝戦もそのままの勢いでヴァルレイン先輩が優勝した。
決勝の相手も多彩な氷の応用技を繰り出してきて決して弱そうには見えなかったけれど、攻撃が効かないのではどうしようもなかっただろう。
試合を見て思ったけれど、僕の能力を全開放して勝てるかと言ったら、負けないことはできる、としか答えられない。
セキダ先輩の速度になら重圧解除すれば追いつけるだろうし、負けないことはできそうだ。
氷の先輩の戦術は色々真似できそうで参考になった。
そしてヴァルレイン先輩の場合、攻撃力や速度は普通だったので問題はなさそうだ。
ただ、あの無効化能力を突破出来るかどうかが全くの不明だ。
突破できるのであればなんとかなるとは思う。
この辺りはやってみないと分からないよなぁ。
もしかしたら更なる奥の手を持っている可能性もありそうだし、上級生は何かしら奥の手を隠し持っていると考えた方が良さそうだ。
こうして上級生の強さを見せられた合同武闘訓練は幕を閉じた。
僕も魔法や超能力の応用について考えた方が良いのかもしれないな……今度、色々試してみよう。
次回、閑話・・・かな?
改稿で掛かりそうだから、先にコチラを出しておこう。
魔法と超能力は応用すれば凄いことになります。




