(3)世界にも色々あるみたいです
主人公がなかなか転生しません。
説明をいれるとどうしても…
そうして『特賞』を引いてしまった僕は別室へ案内された。
なにやら説明をされるらしい。はっきり言ってこれっぽっちも現実感がない。
死んだあとに何をいまさらと思うかもしれないが、どう聞いてもありえないという気持ちしか出てこない。
半ば放心したまま話を聞いていたが、
1、特賞は無量大数に1個の確率で入っていたらしい。
2、特賞は1~10等の全賞品をダブりなし状態で取得できるらしい。
3、神の気まぐれで入っていたが、当たることはまず無いと思われていた。というより、天使の間でも眉唾物の伝説でしかないようなものだったらしい。
4、チート級の転生は、チートを決定してから転生するため、個室で担当の中級神と一緒に行うらしい。
5、チート級能力は、ランクで全部別個に取得できるらしい、ということは、チート4種に才能1種…ってナニコレ………
まとめると、都市伝説としか思われていなかったモノを引き当てて、自分の新しいキャラを神様と一緒に製作できて、その内容が『転生先の世界とその世界の種族を自由に決定できて、好きな身分になれて、さらには前世の記憶を持ったまま選択式の才能を1つ持って転生がができる上に、「秀才チート」「天才チート」「英雄チート」「神級チート」を1つずつ所持できる』ってどんだけ能力過載なんだか…
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「それで、まずはどこの世界に転生するかね? やはり元いた世界が良いのかな?」
目の前で特賞を説明してくれた老人(神様の1柱らしい)が聞いてきた。
「いえ、ちょっと約束がありまして、元いた世界には転生しないことになってるんですよ」
天使と約束したからなぁ。
見ていないからって約束を破るのは間違っているし、やっちゃいけない気がする。
「おや、そうかね、ではどこにするかな? ワシのオススメなら『獣天世界ガルガドス』とか『辺境世界ローティアス』とか『死誕世界フロント』あたりかの?」
そう言って3種類の資料を出してきた神様。なんか色々あるんだなぁ。
そういえば僕が生きていたあの世界ってどんな名前なんだろうか?
「僕の元いた世界にも名前ってなんて言うんでしょうか?」
「オヌシの元いた世界じゃな…ふむ『量子世界オービステーラ』じゃな、まぁもっとも神界でしか通用せんじゃろうし、似た世界はたくさんあるんじゃがな」
そう言って神様は教えてくれたけど、その世界には戻れないんだよなぁ。
どうしようか。どうせ戻れないならこの際だ、別の世界にするほうがいいよなぁ。
とりあえずはおすすめの世界と―――
「あ、そうだ、『エルディアラート』って世界について教えてもらえますか?」
さっきの天使が担当してる世界らしいから、ちょっと聞いてみよう。
「ふむ、『幻魔世界エルディアラート』の資料じゃな。ちょっと待っとれ」
そうしてとりあえず、4種類の世界の資料を見せてもらったわけなんだけど、概要だけでもすごく濃かった。
まず、獣天世界は一言で言えば『モフモフケモノぱらだいす!』
文明レベルは以前いた世界とほぼ同等らしいが、知的種族は獣人系のみで動物、魔獣、幻獣も豊富、しかもモフモフ系だらけ…
ただ、色々な獣人がいるということなのだが、全部獣顔タイプらしい…
現代人がピーOー兎やミッOー鼠とゆかいな仲間たち、アタOオルや宮O版ホームズなんかに置き換わってる世界かぁ……とりあえず、保留で。
次に辺境世界、平均的な剣と魔法のファンタジー世界に、何故か古代兵器の搭乗ロボやらビームサーベルなんかがあるという、魔導科学の超世界だった。
これは割と燃えるなぁと見ていたら、『最近大陸一つが魔族によって滅亡している、対策に下級から中級神までの介入の用意アリ?』という注意書きが……大陸一つ滅亡に神の介入って…行ったら確実に巻き込まれるよね。
チート能力者なんて戦力でしかないわけだし、戦闘を強要される立場になるっていうのはちょっとイヤだからなぁ……これは少し考えてしまうな。
3つめのおすすめの死誕世界は、かなり変わっている世界だった。
現代より進んだ世界らしいが、初めは普通の命として生まれるんだけど、死んだ時に妖怪に生まれ変わるらしい。
そして妖怪になってから死ぬと、また天界にやってきて転生の準備に入るらしいけど…1つの世界で2つ分の人生を送れるので、徳と罪を貯め易いらしく神様に人気があるそうだ…
また、妖怪にもちゃんと市民権があり人間と共存してるのが大部分みたいだ。
でもこんな世界にも犯罪組織なんてものがあるようで、組織の幹部と警察との対決なんかはレーザーガンと妖術が飛び交う戦場になるらしい。
参考資料によると『暴力団員(21)と化け狐(314)の密輸団VS新米刑事(22)と狼男警部(49)のコンビが港で銃撃戦』……太陽でなく、月に吠えそうだ。
問題なのは、死んだ瞬間のその人の感情によっては、妖怪に生まれ変わった時に性格が変わってる場合があるということだ。
だから、新たな転生時には今の人格のままということにはならない事が多いみたいだ。
どういう死に方するか分からないし、事故死で自縛霊みたいな犯罪妖怪になってもイヤだしなぁ……どちらかといえば却下かな。
最後に天使がいるという幻魔世界、これもテンプレ的ファンタジー世界で、人間と亜人と魔族がいるらしいが、別に絶対的な敵対関係にあるというわけでもなく、種族間の差別問題は、国によって様々らしい。
人種差別のある国もあれば魔族や亜人が国の要職にいるという人間の王国もあるらしく、本当に様々みたいだ。
あとこの世界で一番力を持っているのが幻獣種と魔王種という2種族らしくそれぞれが崇拝の対象になっている地域まであるらしい。
天界基準で下級神の神格を持っているということらしいので一応神様ってことになるのかな?
魔王って神様レベルなんだ…しかも公式宗教まであるし…
こうして見ると面白い世界が多いけど、自分の性格に合っていそうなのは、やっぱり天使のいるらしい世界かなぁ。
こういう縁は大事にしたほうがいいし、なんとなく直感に従ったほうがいい気がしてきた。
「それでは『幻魔世界エルディアラート』でよいのかね?」
「はい、それでお願いします」
「ファイOルアンサー?」
「……ファイOルアンサーでいいですけど、なんでソレを知ってるんです?」
「いやその…ワシ、あの司会者のファンでの…」
さすがみOもOたさん、神様にも人気があるらしい…
しかし、一体どこで番組を見てたんだ?
「まぁ、その話は置いといて、次は種族と能力を決めるかの」
話をそらされた! まぁ突っ込んでも仕方ないことなのでスルーしておこう。
種族と身分はすぐに決まった。
差別のない国で国力の高い国を調べた結果、ジルド皇国という国のの人間/貴族に決めた。
え? なんで貴族かって?そりゃ生活に困らなそうだからに決まってるじゃないか。
さて、いよいよ問題の才能とチートを決める段階に入った、のだが…多すぎる。
どれだけあるのか、というくらい膨大な技能がある。
百科事典並みに分厚く大判な書物に細かい字がびっしり書いてある。
読めないかと思ったのに見ただけで意味が勝手にわかる。
天界の文字ってこうなのだろうか?
しかしページ数が多すぎる。
見てるだけで1ヶ月くらいはかかりそうだ…
でも読まないとどうしようもないので、地道に読み始める。
「表紙のカバー裏にカテゴリーがあるから、そこから見ると良いぞ」
……先に言って欲しかった。しかもなんでカバー裏?
目次らしきものを見ると『戦闘』『魔法』『感覚』『生存』『芸術』『学問』『製造』『社交』『商売』『特殊』・・・
なんかいっぱいあるけど、どうも重複しているものもあるみたいだな。
製造のカテゴリーと芸術のカテゴリーに同じような鍜冶/装飾とか木工/アートなんて才能があるけど、解説箇所はまったく同じページみたいだからどっちのカテゴリーにも当てはまってるものが重複している、ということなんだろうな…
意外なことに、カバーを外して本を読むスタイルだと、カバー裏の目次をみながら探すことができるので、わりと探しやすかった。 カバー裏に書いてある理由にも納得できてしまった。
色々探していたところで、目の前に見えたものに釘付けになった。
『特殊』カテゴリー内にあった『超・能・力・!』の一覧……これしかない!
何を隠そう、僕はPKとかESPとかそういうを使ってみたいと昔から思っていた。
遅刻しかけて学校に向かう時に、テレポートが使えればいいのに、と思ったことは数知れず。
探し物をしたいときの過去視とか、部屋の片付けの時の念力とか、そういう日常で超能力使えたらなぁ、みたいなことを考えて過ごし、憧れてきたという過去がある……
俗に言う厨二時代だけど……
まぁ、実際の話、この世界にまず存在しないだろう『超能力』と魔法をセットで持っていけば、様々な事態に対処できるだろうし、便利なのは間違いないはずだ。
それに、もしかしたら『言ってみたいセリフ』を言える場面とかが来るかもしれない。
これは欲しい! なんかテンションも上がってきた!
これは詳しく見ないと………
傍から冷静に見たら、厨二を再発させてはしゃいでるだけでしかないな……
次回、チート、決定、イレギュラー!