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チート過多でのファンタジーライフ  作者: 老 左伝
第1章~子供時代3~
27/42

閑話4 或る宮廷魔道士の日記

第2章前の他者視点です。

追加でつい書いてしまった^^;


 





 沈月23日、快晴

国王陛下から例の秘薬と画期的な新金属の加工法を教えてくれる人物が来ると聞いたので、出席するように言われた。

出てきたのは、子供。

おいおい国王陛下は宮廷魔術師をからかいに来たのか?

それとも夏の暑さに頭をやられたのか?

ふざけてるとしか言えないと思っていた。

ところが蓋を開けてみたら、どうだ。

調合の説明から始まったが、子供とは思えないしっかりとした説明。

さらには……おいおい!なんだその工程は!


種の部分を使う!?

発酵!?

低温焼成!?

殻を完全に分離して潰した後にするその『シンクウダッシュウ』って何!?


何だ、こんな作業方法は見たこともない、という技術を危なげなく使う子供。

凄い、というかありえない、というか、もうなんて言えばいいのか!?

この時の俺を含めた宮廷魔道士全員の混乱と驚愕の度合いと言ったら凄かったと思う。


講義が終わった後、もう子供と侮る者は誰もいなかったと思う。

明日は新金属の加工法に対して講義するらしい。

今度は何が出てくるんだ?

楽しみなような、怖いような…とにかく今日、見せてもらったものは後日じっくり研究しよう。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 沈月24日、晴れ

今日は新金属の加工方法と言うことで場所を移して講義が始まった。

昨日の事があるので誰しもが真剣に聞いている。


ミスリルに輝石と真鉄を混ぜる!

さらにその比率によって変化するらしい事!


材料は非常に高価だが、講義で作られた杖で基本能力を試した時は目を疑った。

とんでもない増幅力だった。

多分四属性輝石真鉄杖アークルーンスタッフを超えている!

さらに凄いことは、その硬度と紋様不要ということから普通の魔法杖の様に戦闘で使って破損するという心配がないことだ。

普通の真鉄製の杖で戦闘したりすると刻まれた紋様に傷が付き増幅不可能になる場合があるからだ。

魔法使いの杖が飛躍的に進化する予感があった。

ただ、同席していた本職の宮廷鍛冶師にあとから聞いたのだが、俺たちはすごい手際の良さだとしか認識していなかった技術だったが、とんでもない職人技を見せつけられた、とのことらしい。

曰く『次元が違う』と……

そちらは専門の研究員たちに任せて俺らは秘薬への道を研究することになった。


それにしても、本当に何てお子様だろう!

昨日はあまり聞いていなかったが、なんとあのエスクランス公爵家の長男らしい。

上級貴族様の長男が何でこんな特異な技術を!と思ったよ。

さらに思い出したのは確か去年の突発的料理大会で上位に入ったことと姫様の婚約者だったという話だ。

本当にこれはとんでもない人物だぞ。

将来どころか、今の所業だけでも歴史に名を残すような事を平然とやってのけるなんて…

もし、何かあっても将来敵に回すことだけは避けよう。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 始月40日、雨

夏がどこかに消えて過ごしやすい時が続くある日、ついに種の解析が終わった。

どうやらあの発酵という過程で含まれていた毒の大半が変質して薬の様になっているようだ。

ただし、それだけだとまだ毒が残留しているようだ。

そこで種を焼くと、揮発性の毒が燃えて残留していた毒はかなり減少する。

さらにはあの『真空脱臭器』という装置で水蒸気を通過させると水溶性の毒成分が分離し、最終的に人体への影響が無いレベルに落ち着くようだ。


あと副産物で出来た水溶性の毒成分ではあるが、これはこれで何やら別の使い道がありそうだということで別の班が研究を開始している。

この1ヶ月前後を見ても200年以上停滞し、誰もがもう出来ないと思っていた研究が大幅に進み、さらに発展しそうである。

このままいけば本当に喪われた秘薬を再現できるかもしれない。


あと、別の研究班が秘薬に必要そうな部分を取り除いた副産物で『ちょこれいと』と『ここあ』という食品の製造に入ったようだ。

これは、意外に美味しく、秘薬に必要な部分を取り除いているのに、なんだか疲れが取れそうな気がしている。

疲労回復のお菓子で宮廷魔道士の名前を売るという名目で販売、そこでの売り上げは研究費の足しにするらしい。

『魔道士ちょこ』と『大森林ここあ』という商品名だそうだ。

あの班はなかなかに商魂逞しい。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 葉月9日、曇り時々腫れ

秘薬に必要な成分と過去の文献からMP回復薬の試作品が完成した。

忘れ去られて今では作れなかった薬がついに完成した。

効果の程は…間違いなくあった。

ただ、品質はイマイチだったのでそこは今後の課題だろう。

しかし、これで本当に喪われた秘薬が出来上がる日もそう遠くない事が実感できる。

品質については水や素材の量と純度等を色々変えて研究するしかない。

高品質のものが出来た時、本当にどうなるんだろうか…


あと来週から『魔道士ちょこ』が発売されるらしい。

研究の最中につまむのがクセになり、ハマっている研究員がかなりいるようだ。

おそらく、巷でもかなり売れるだろうと予想できるな。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 葉月40日、晴れ

朝、布団から出るのが辛い寒さになってきたある日、MP回復薬を効果・製造コスト・利便性から改良して試作した中から3種まで絞り込み、そのどれがいいか検討することになった。

それぞれ有用な物なのでこのままで売り出すか、さらに改良を重ねてからにするか、その部分で意見が分かれている。

品質的には商品として出して問題ないレベルには達してはいる。

しかし、製造コスト優先の物は効果が低く、味的にまぁまぁ。

味の良いものは、コストが高く、効果はそれなり

効果が高いものは、コストそこまで高くないが、クソ不味い。

コストが良いものは効力が低く、味のいいものはコストがかかる、効果の高いものは飲むのが辛いくらい不味い。

バランス的にこの3種の良い所取りが出来ないかどうかの研究を進める事は決定している。

問題は、この成果を売り出すかどうかだ。

そこはまだまだもめそうだ。

とりあえず、進展があることを祈ろう。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 冠月8日、雪のち曇り

秘薬の製造とMP回復薬についてはとりあえず決着がついた。

3年後と5年後を目処に改良と研究を進め、3年後にMPポーション販売、5年後に秘薬完成を目指して研究を続行することになった。

まずはMPポーション3種それぞれをベースに改良を重ねる研究と、同時に派生系のポーションの製作。

それに加えてMPポーションとHPポーションの混合調合比率での万能薬作成。

やること、研究することは山のようにある。

遺失技術の再生というとんでもないプロジェクトだ。

とにかく頑張らなければ。

また先日、陛下が連れてきたあの鬼才のお子様が来年、店を経営するので『ちょこ』を店舗に卸して欲しいという依頼があったそうだ。

あのエスクランス家のお子様がどんな店を経営するのかと思ったが、店長となるものは大人で彼はオーナーになるらしい。

王都の名物になるということで陛下も許可しているのでこれは問題ないだろうと思う。

しかし、一体どんな店が出来るのか、非常に楽しみだ。

開店したら絶対に見に行こうと固く心に誓っている。

早く来年にならないだろうか?

その前に研究が先かな。

明日もまた張り切ってお仕事しよう。



次回は閑話、数年後の世界です!



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