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チート過多でのファンタジーライフ  作者: 老 左伝
第1章~子供時代2~
18/42

(16)甘いものは偉大なようです

とりあえず進めるだけ進んでみよう。

 





 まずはこの実から種の部分を塊のまま取り出し木箱に入れる。

それを毎日攪拌して1週間かけて発酵させる。

次に発酵した塊を種だけにして天日干しをする。

これ、できればメザリアでやっておいて欲しいな、意外に地味で面倒だった。


 いい感じに乾燥したら悪くなってる種を取り除いていい種だけを荒く粉砕する。

1週間の間に道具は作れた。

技術じゃなくて魔力で製作してるからだろうけれど…原始的な道具はともかく、何かしらの魔法を込めないと普通の道具はうまく作れないっていうのは、何かが間違ってる気がしていた…おかげで無駄に便利機能を搭載できたけど…

おかげで粉砕しながら温風を当てて皮やゴミを取り除けるし、除いたあとの部分を低温焙煎まで自動でできた。

本当に無駄に便利だけど…

加熱後出てきたものを更に細かくすりつぶしてペースト状にする。

これが出来ればあとはそんなに難しくはない。

おや? ちょっと匂いがきつい気がする。

ゼリー作る時以来ほったらかして使っていなかった真空水蒸気脱臭機、使えるかな? 

試してみよう…………うまくいったか?……出来るものなんだなぁ…

匂い以外にも何か別のものが出てる気がするけど…鑑定眼で微毒っぽい表示が見える。

食べても影響なさそうだけど大量に食べるにはちょっと辛いかもな。

ニンニクとかも生で大量に食べると中毒起こすし、そんな感じだろうな…


 それはそれとして、出てきたペーストの半分に圧力をかけて油分と粉の塊に分ける。

粉の塊はよく粉砕してさらにふるいで細かくしておく。

これで1つめの素材ができた。


 もう一方の分けたペーストにさっき出てきた油分とミルク、砂糖を加えてよく混ぜる。

とにかく混ぜる、混ぜて混ぜて混ぜまくる、なめらかでいい香りがするまで練りまくる。


 ここまで来れば何を作ってるのかわかったと思う。

これは「チョコレート」だ!

僕はカカオ?からチョコレートとココアを作っていたんだ。

あとはテンパリングで調温して塊にするときに気泡などが入らないように作っていけば…


 …チョコレートの完成だ!

無糖のココアパウダーもお湯に溶かして砂糖とミルク入れればホットココアもできる。


 とにかく作ると決めてから修行の合間に毎日下準備をして、ここまでくるのに2週間くらい掛かったけど、いいものが出来た…と思うんだけど…

ハンスさんとエレナさん、何か戸惑ってるな?

シャルちゃんも興味はあるみたいだけどすぐに食べたりはしていない。

どうしたんだろう?


「あの…ディル様、これ…食べるんですか?」


「え?そうだよ。うまくできたと思うんだけど…」


「この真っ黒な泥水みたいなのと黒い塊で、ですか?」


 あ、そうか。

見たこと無ければ躊躇っても仕方ないのか…

知らなければ美味しいかどうか見た目だけで分からないよな。

そういえば前世で、緑色のカレーを初めて見た時、何だコレ、とか思った気がする。

そんな感じなのか。


「大丈夫、きっと美味しいから」


 そう言って僕はチョコを一つ口に入れた。

甘さは少々控えめだけど、悪くない出来に仕上がってる。

前世で食べたのとは風味が多少違う気がするけどそこまで違和感があるわけでもないし、多分手作りだからだろうな…うん、イケル!

これなら食べてもらえればわかるはずだ。


「…俺は自分の勘とボンの言うことを信じますぜ、ふむ、香りはいいですなぁ………では…いざ…!」


 ハンスさんは躊躇ためらってはいるけど、どうやら食べてくれるみたいだ。

エレナさんはまだ迷ってる、シャルちゃんは…あ、ハンスさんより先に食べた!


「……あまい、へんなの~、でもおいしい~!」


「…ふぅむ、こいつは、面白い、今までに無い食感ですな」


 どうやら2人とも大丈夫みたいだ。

あ、エレナさんも戸惑いながら口に入れた…さぁ、どうだ?


「…あら…不思議な感じですけど……おいしい!」


「こっちもおいしいよ」


 シャルちゃんはココアも飲んでくれてるみたいだ、というかいつの間にか空っぽになってる。

ハンスさんやエレナさんも次はそんなに抵抗なく飲んでくれた。


「さっきの塊を飲み物にしたらこんな感じになるんですねぇ」


ボン、こいつはいけます! この2つはとんでもない名品になりますぜ! みんなの感想も聞いてみやしょう」


 そうして屋敷中の人に知れ渡るのも早かった。

ハンスさん…行動、早すぎ…

特に喜んだのはメイドさんたちや衛兵の方々、仕事疲れの父さまに母さま……

あれ? 全員?

とにかく好評で良かった、父さまなんか仕事の疲れが取れると驚いてかなりの量を確保しながら、他には知らせないようにまで伝えてきたから、どれだけ好きなんだよ、とか思ってしまった。

やっぱりチョコレートは偉大だ!










―――――――――――――――――――――――――――――――――――







 とある場所の一室で…








「ディルがとんでもないものを作ったぞ」


「どうした、何を作ったというのだ」


「これだ! ちょっと食べてみてくれ」


 弟が兄に差し出したのは黒い塊、それは誰かさんが作ったお菓子だった。


「なんだこれは? 食べられるものなのか?」


「いいから一口試してみてくれ」


「う、うむ、そうまで言うなら…少しだけ…」


 躊躇いがちにではあるがとりあえず口に入れてみる兄。

しばらく味わっていたところ、表情がガラリと変わった!


「おい、これはなんだ! ほんの僅かだが間違いなく回復した・・・・ぞ、これではまるで…」


「あぁ、しかもコレが材料の一つだそうだ」


 そう言って取り出して机に置いたものはカカオ?の実であった。


「おい、これを使うってことは…やはり!」


「あぁ、おそらくそうだ…」


「信じられん! まさかこんなところで…!」


「あぁ、俺も驚いた」


「この実からから絞った油ではほとんど効果がなかったはずだぞ」


「こいつはこの実を食用に加工したものらしい」


「一体どうやって! 中毒や拒否反応を出させずにどうやってこれを食用に適した形にしたというのだ」


「種の部分を加工して分離調合するのがコツらしい」


 兄と弟は信じがたいものを見たような表情を互いに浮かべていた。

もし画家がこの姿を絵に収めたならば、タイトルは『困惑』以外にふさわしいものは無いだろう、というくらい見事な表情だった。


「…このことは誰か他には?」


「屋敷の皆はただのお菓子だと思っている、このことに気がついてる者はおそらくいないはずだ」


「そうか、そのまま決して気づかれるな、気がついた相手がいればすぐに知らせろ! これはとんでもないカードになるぞ!」


「あぁ、わかっている…では、何かあったらまた来る」


 弟は部屋を退出し、後には兄だけが残った。

しばらく気怠そうに放心していたが、ため息を一つついてゆっくり動き出した。


「まさか…サルトロンディの喪失した秘薬の鍵になりそうなものをこんなところで見つけるとはな…」


次回、星空、告白、エモーション!


異世界の素材が前世と同等とは限らないですよ^^

搾りかすは毒性が強く食べる部分として認識されていませんでしたから…

脱臭機で微毒だったのは単に薄まってたからで、濃縮はマジでヤバイです。

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