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チート過多でのファンタジーライフ  作者: 老 左伝
第1章~子供時代1~
10/42

(10)何度も走馬灯を見てしまう一日があるようです

初期プロットにまったく無かった料理大会編が終わります。

これで軌道修正できればいいんですが……


本日の2話連続投稿の2話目

 





 シャルちゃんを腕に取られたまま、広場の大会本部のある建物のためにかりきったやどや付近まで来たけれど、どうしたんだろう?

参加者らしい子供達が集まっている中に、何故か貴族が混ざっている。

初めは家族かな、と思ったが服装があまりにも違いすぎる。

上等な服を着た大人と普通の服の子供、という組み合わせで動いているのが大半だ。

中には子供同士とか亜人と子供とかの組み合わせまである。

ナニコレ? どういう状況?


「「さて、これより結果発表をさせて頂きますが、今回の屋台での参加人数118名のうち受賞資格を満たしたのは74名になります」」


 は? 受賞資格? そんなの聞いてないぞ?

一体何がどういうルールになってるんだ?


「「呼ばれた各選手は大会本部の方までお進みください。 アイナ=フォクシィちゃん、アイル君、ビリィ=ノイマン君………」」


 順番に名前が呼ばれていく。 何なんだ、一体…

よく見ていると、呼ばれた子と一緒に貴族の人も付いていってる。


「「…え?…でぃ、ディレット=ドゥ=エスクランス君、ドロテアちゃん……」」


 呼ばれたので、出て行こうとする。

一瞬司会の方がどもったけど、多分家名、だろうなぁ。

それにしても……シャルちゃんが左腕にくっついたまま離れない。

離さないといけないよなぁ。


「シャルちゃん、向こうに行ってくるからちょっと離れて」


「だめっ! はなれたらダメなの!」


「え……なんでダメなの?」


「パパとママとおにいちゃんと、あとディルくんのおかあさまが、ディルくんとこれからもずぅ~っといっしょにいたいなら、きょうはくっついてぜったいはなれちゃダメっていわれたから」


 叔父上やセリオンだけでなく、母さまやお会いしたことのない王妃様おばうえまで、全員グルか!

みんなで一体、何を企んでいるんですか?

この先が凄く不安だ!

婚約とかナントカ言っていたから、多分その関連なんだろうけど、どんな企みなのかサッパリわからない。

これは注意しないと色々な意味で危険かもしれない。


「しょうがない。一緒に行こうか」


「うん♪」


 でも、流されました。

ヘタレ? うん自分でもそう思う。

だって、仕方ないじゃないか!

こんなにも純真無垢な顔キラキラしたおめめ裏切る勇気なかせるかくごなんて僕は持ってません。


「そうだ、ディルくんきょうはがんばったから、あとでごほうびにほしいものとかって、なにかある?」


「え? 特にないけど…急にどうしたの?」


「そうなんだ。ううん、なんでもないの」


 急に悲しそうになった。 一体どうしたんだろう? 

とりあえずなぐさめるために、頭を撫で撫でなでなでする。

罠があるハメられてるというのは分かっていても逃げられない。

外堀がどんどん埋まっていく……

うん、なんかね、そんな感じ。

大会本部に歩いていく自分が、まるで大きく口を開けているドラゴンに食べられるために自分から進んで歩いて行く生贄のように思えてきた。


 つい考えてしまう。

もしかしたら僕は転生すべき場所を間違えたんじゃないかって…

今更な話だし、他の場所には他の場所特有の苦労があるのは分かってるんだけど…

僕は一体どの辺りで道を踏み間違えたんだろう…神様でもなければ分からないだろうな…

神様、一度お会いしてお聞きしてみたいです。


「え、ディルくん。かみさまにあいたいの?」


 あ、前に歩きながら余計なことを考えていたのが声に出ちゃっていたのか?

シャルちゃんに独り言を聞かれちゃったよ、めっちゃ恥ずかしい。

どこからしゃべっていたんだろう…聞くのがなぜか怖い…


「ねぇ、あいたいの? あえたらあいにいきたいの?」


「え…まぁ、うん。 会いたい…かな?」


「そっかぁ、そうなんだぁ」


 なんか、急にご機嫌になったぞ?

何がそんなに嬉しいんだ?

ワケがわからないけど、本部に入って見ると退会運営係の人が待っていた。


「ディレット様とシャルナ様ですね、どうぞこちらへ。担当係の所へ案内します」


 え? どういうシステムになってるんだ?

なんでシャルちゃんが一緒にされるんだ?

よく見ると、他の参加者たちもそれぞれ別個に案内されているみたいだ。

なら安心……できるのかなぁ…とりあえず、ついて行くしかないか。

案内されたのは品の良さそうな一室だった、スイートルームか?

そこで待っていた担当係の人は…


「伯父上、何してるんです?」


 国王様だった…

アンタ、国のトップだろ。こんなところでナニしてんだよ!本物かよ!?




 名前:ラズベルト (ラズベルト=アル=ジルド)

 性別:男

 種族:人間種ヒューマン

 年齢:Age30


 所属:ジルド皇国

 職業:若き国王

 レベル:Lv21(普通)


         補正後(本値)

  HP/生命力:365(365)

  MP/精神力:365(365)

  攻撃力/力:37(30)

  防御/体力:34(30)

  命中/器用:39(28)

  魔力/賢さ:33(28)

  回避/敏捷:29(29)


SKILL:武芸/剣術/片手剣:Sr26 

   武芸/格闘術/拿捕:Sr19 

   政治/世界:Sr10 

   第六感/生体/殺気感知:Sr10 

   態度/宮廷/舞踏:Sr27 

   会話/宮廷/王族:Sr29 

   服飾/宮廷/王族:Sr36 

   人を見る目 

   正直な加護 




 本物だった…! あれ?何かが変な気がする…

妙な違和感があるなぁ?


「今回の主催者だからね、大会に協力するのは当然じゃないか」


 しかし、どこからどうみても間違いなく伯父上だった…


「そんな言い訳が通用します? 僕に内緒で裏で何か企んでるんじゃないですか?」


「まさか、かわいいおいっ子が不幸になるようなことを私がするはずないじゃないか」


「それって答えになっていないですよね?」


「はっはっは、それはそうと、今回は大活躍だったなぁ、ディル。あれなら優勝も狙えるぞ」


「いやいや、誤魔化ごまかさないでください。一体何を考えているんですか!」


「おいおい、あんまり怒鳴るなよ、女の子を驚かせるのば紳士おとこのこのすることじゃないぞ」


 言われて横を見てみると、くっ付かれ過ぎてそれが当たり前だと感じ始めて、違和感を抱かなくなっていた僕の横で、シャルちゃんがびっくりした顔をしていた。

うん、でも腕を離す気はないんだね、ガッチリ抱え込んでる。

驚かせちゃったのは悪かったなぁ、と思い右手で頭をでてあげる。

うん、少し安心した顔になった。良かった良かった。

って、そこの伯父上おっさん! 何をニヤニヤしてるんですか!


「いやぁ仲が良いなぁ、二人とも」


「うん♪」


 いや、シャルちゃん何を勝手にお返事してますかね。

そりゃ仲は悪くはないと思うけどね、目の前の大人からかうきまんまんのおっさんにそんなことを言っちゃったら、どうなることやら…


「で、シャル。ディルの願いは聞けたのか?」


「うん、かみさまにあいにいきたいんだって」


 え?唐突に何を聞いてるのこの人?

で、シャルちゃん? ナニを話しちゃってるの?


「そうか、神様に会いたいのか。そりゃ大きくていい願いだな」


「え?いや、ちょっ!」


「それでシャルのほうはこの前のアレでいいのか?」


「うん♪」


 何か勝手に話が進んでいくよ? 何?なんなの?

自分の立っている足場がどんどん無くなっていくような感覚だ。

横を見ると輝くような笑顔キラキラにこにこ美幼女シャルちゃん

『シャルちゃんからは逃げられない!』

そんな言葉が頭に響いた……

何かが抜けていく……僕。


「よし、わかった。 じゃあ、あとは結果発表だな」


 そんな伯父上を眺めながら僕は、澄み切った気分で、あぁ走馬灯ってこういう時にも見れるんだなぁ、と感じていた。














――――――――――――――――――――――――――――――――――――














 いよいよ、結果発表が始まり、総勢74名の子供たちが横一列に並ぶ。


「「さて、皆様お待ちかねの結果発表でございます」」


 司会の方はノリノリだ。

風魔法で『拡声』した上で派手な振り付けオーバーアクションで場を沸かせている。

おかげで気分が回復した、観客の視線を操作するのがかなり巧い。

何かやたらと目立つ人だなぁ。どこから引っ張ってきたんだろう。




 名前:ウォニアス(ウォニアス=イショー)

 性別:男

 種族:人間種ヒューマン

 年齢:Age26


 所属:ジルド皇国

 職業:親衛隊員

 レベル:Lv23(正常)


         補正値(元値)

  HP/生命力:490/490(490)

  MP/精神力:170/490(490)

  攻撃力/力:56/56(49)

  防御/体力:53/53(49)

  命中/器用:68/68(54)

  魔力/賢さ:59/59(54)

  回避/敏捷:52/52(52)


SKILL 会話/宴会/司会者:Sr38 大勢の前での司会進行が巧い。交渉にボーナス。

   武芸/剣術/片手剣:Sr29 片手剣に精通。力、器用Sr÷4

   武芸/格闘術/拿捕:Sr21 相手を捕らえる技に精通。体力、器用にSr÷5

   魔法/属性魔法/風:Sr33 風の属性魔法が使用可。賢さにSr÷6

   シーフ/罠/罠発見:Sr22 罠を見抜くことができる。知覚系ボーナス

   シーフ/罠/罠識別:Sr18 罠の種類を見分けることができる。識別系ボーナス

   シーフ/罠/罠解除:Sr16 罠を解除することができる。器用さにSr÷5

   態度/宮廷/礼儀作法:Sr17 礼儀正しく動くことができる。交渉ボーナス




 まさかの兵士さん! しかも親衛隊員だった。

スキルの司会者って…しかも高ランク…もしかして、こういうのが天職なのか?

それと、まさかとは思うけど、この大会の運営の人たち、全員が王宮の親衛隊員じゃないだろうな?

泣くぞ! 主にエリート目指して頑張ってる兵士さんたちが……



「「第10位、宿屋リ・オルナスの看板娘、ロマーニャ=オルナスちゃん12歳です」」


 順位発表とともに一人ずつ前へ出て、拍手を浴びながら挨拶をしていく。

大体10歳以上の子が多いなぁ、まぁ当たり前の話なんだろうけど。


「「いよいよ第3位の発表です。ほぅ、これは! エスクランス公爵家長男、ディレット=ドゥ=エスクランス君、なんと6歳です。今回は薄く焼いた卵生地のようなものに果物や生クリーム、甘く冷たい不思議なお菓子を載せて食べるというまさしく未知のデザートを用意しての入賞です。食べた皆様には3位入賞を納得していただけるものと思います」」


 僕はなんと3位入賞したみたいだ。

前に出てお辞儀をしながら観客に挨拶をする。

拍手やらどよめきやら黄色い声なんかがあがる。

やはり6歳での順位入賞は僕だけみたいだ。

前世の記憶があるからだから、反則のような気もするんだけどね。


「「続いて2位の発表です。精肉商のノルコス商会の次男、ライド=ノルコス君13歳です。彼の作った薄く切った肉と香味野菜を何層も重ねたものに串を刺して焼くという……」」


 発表は続いていく、ちなみに優勝は、センカちゃん(11)という子が作った「具沢山のシチューみたいなもの」だった。

潰したイモとミルクを合わせたポタージュスープに具をたくさん入れた、やさしくほっこりする味で、塩加減がかなり絶妙な一皿だった。


「「以上、10名が今回の入賞者です。副賞として各人に賞金が送られますが、それよりお待ちかねの褒賞式ほうしょうしきを1位から順番にり行いたいと思います」」


 褒賞式? ナニソレ? 僕は全然聞いてないよ!


「「では、1位のセンカちゃんの希望、リラス孤児院を助けたいという願いを後見人のメリラ=ヴィー=ザロール、貴女は叶えますか?」」


「叶えますわ」


 え? 後見人が叶える? 何か意味があるのか?


「「よろしい、街の皆が証人だ。ザロール家はリラス孤児院への支援を申し出てくれました、代わりにザロール家から出ている西方の森林の開発許可も皇国側が了承しました」」


 え…それって…すごい危険信号が鳴り響くんですけど…

ヤバイ、ヤバイ、なんかものすごくヤバイ気がする。

今すぐここから逃げないと本当にヤバイ!

でも、いまだに引っ付いてる嬉しそうなシャルちゃんを振りほどいて脱出できるとんずらかませるのか?


「「2位のライド君の希望、家をもっと大きくしたいという願いを後見人のバルロッサ=コンツ=ハイディ、貴方は叶えますか?」」


「叶えよう」


「「よろしい、街のみんなも聞いての通りだ。ノルコス商会への援助をハイディ伯が実行することになりました。代わりにハイディ伯の領地へ領地開拓用の人手を国から手配することになります」」


 いっそ『禁じ手』を使って事態を消し去ってしまおうか。

危険な考えが頭をよぎったりするほど混乱している。

とりあえず、焦った時ほど落ち着かないと……

あ…なんだ。 気にしなくてもいいじゃないか。

目の前に光が差した気がする。

あぁ、ひかりが見える。


「「3位のディレット君の希望…は? 神様に会いに行きたい? これを後見人のシャルナ=アム=ジルド、えっ…姫様!? え~と…叶えますか?」」


 いくらなんでも神様に会いたいなんて願い、叶えられるわけがないじゃないか。

焦って損をした気分だ。

なんだか心が落ち着いて穏やかになっていくようだ。

考えてみればわかったはずじゃないか、いくらなんでも…


「はい、かなえます」


「「すばらしいお返事です。みんな、聞いての通りです。姫様及びジルド王家は、え~と……ジルド大森林の奥地にまう皇、幻獣種ラスル三柱の一角にして皇国の神、『ミコ』様への謁見えっけんに協力していただくことになります。代わりに王家は……おぉ、シャルナ=アム=ジルド様とディレット=ドゥ=エスクランス君の将来の結婚を全力でバックアップしていただきますぅ!? っってコレはまさか、姫様の婚約発表ですかっ! ここで!!」」


 一瞬沈黙する広場、そのあとにどよめく民衆、そしてそこから騒乱が広まっていく。


「「え~い、4位以降はあとから公式発表を行います。ここは突如発表されたシャルナ姫様とエスクランス公爵家のディレット様の婚約の祝福を行いたいと思います。ここまで仲良く腕を組んだままのこの小さなカップルを応援することに異存がない方は、どうか盛大な拍手でお応えください」」


 暴走する司会者、真っ白になった僕、嬉しそうなシャルちゃん。

そして割れんばかりの大歓声と拍手が広場にとどろいた。

でも、今の僕には関係がない。

仏像的笑顔アルカイックスマイルを浮かべたまま全てが吹き飛んだ僕には、世界が輝いて見えるのだから。

あぁ、また走馬灯が見える。




人はこれを現実逃避と言うのかもしれない……


次回はちょっと一区切り、話の裏側を一部ご紹介です。

プロットの修正が思ったよりきつい…


作者「ミコ様へ先に会いに行きそうなのでアナタの出番は伸びました」

アスカ「えぇ~!?」

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