人間として日用品が出来ること、出来ないこと
「ぐぅうぅぬぐぅぅぅァあああァァぁガァァあ!!!!!!!!!!」
「おい、おい!!!もう十分だ。だからやめろ!!!」
クルトの体から「ピシィィィ」と亀裂が入る様な音がする、
制御の甘くなった膨大な魔力が体中を駆け巡る。
圧力に耐え切れなくなった皮膚に穴が開き魔力が噴出する。
「っっっっ!!!!!おらぁ!!!!」
アースに出来ることそれはクルトを気絶させることだった。
アースは簡単な回復魔法すら使えない。
それゆえの最終手段だった。
「っっと、……ふう、良し!!」
アースは気絶したクルトをそっと床に置き
下の光景を見渡した。クルトのお陰で大半の魔物は死んでるか瀕死であった。
それでも、親玉達とその周りの魔物、ちらほらと居る強者の魔物、それらは息は切れている物の、
殆ど無傷で生き残っていた。
アースは今からたった一人でこれ等の強者を相手にしなくてはいけないのだ。
体力はクルトのお陰で十分にある。後は気合だけだっと息を整えた。
「ありがとうな、クルト……あーーったく一人ででしゃばりやがって、まったく
俺にも戦わせろってんだよ!!」
そう気絶しているクルトに向かって言い放ち、気球から飛び降りた。
「っっっっおっらぁぁぁよっ!!」
加速して行く体を曲げて背中の大剣を取り出す。
そして下にいるオークキングの頭目掛けて振り下ろした!!
「ッッグゥ!?」
反応することも出来ず、オークキングは真っ二つに成った。
目の前で起こる惨劇に脳の処理が追い付かず、硬直しているオーク達を次々と切っていく。
「おっらおらおらぁぁ!!!」
やっと動き出したオーク達だったがもう遅かった、
アースは背中に持つ2本の両手剣の内の一つを見えない程の速さでオークの首を目掛けて投げた。
オークの生命力はとても強く例え心臓を潰しても問題無く動ける程だった。
なのでアースは首を切った。だが、アースは何も考えてはいなかった。ただ脳に、体に刻まれた、膨大な経験から無意識に首を狙ったのである。
オークの首を切った剣はそのまま突き進み進行方向のオークを切りつけていった。
アースは大剣を上に放り投げて剣を持ち怯んだオークの首を斬り飛ばして行った。
普通オークの首はとても頑丈で唯の剣では、どれだけ技術が有ろうと全く減速せずに貫通すること等不可能である。
しかし、アースの剣は唯の剣では無かった、今持っている剣とオークの首を切った剣これは、世に一つの名剣[デュランダル]の模剣だった。
その性能は本物には劣る物のオーク如きを切るのには全く問題が無かった。
「ウギァ。」
「ウゴァ。」
「グガァ。」
オーク達の短い悲鳴が聞こえる、しかしこれは丈夫なオークだから出来ることで、
人間がアースに全力で切られたら、切られたことにすら気付かず、死んでいく。
周りのオーク達が全て死に絶えた時、アースは当たりを見渡し、ドラゴン達のブレスが凄まじい速さで近ずいて来るのが分かった。
「近ずく」と言ってもそれは実に十キロは離れた所に在った物だが、スキルで強化されたアースの視力では簡単に捉えることが出来た。
「次はドラゴンかよっと!!!」
アースは勢いよく飛翔してドラゴン達から距離を取った。
ドラゴン達をひとまず置いて、ちらほらと点在するオークやドラゴンを殺し回って行くつもりなのだ。
「…………っふ!!!」
後ろから近ずいてドラゴンの首を切り落とす。
気づかれないために声を押し殺し、神速の速さで大剣を動かして首を切り飛ばす。
オークの首が硬い様にドラゴンの首はもっと硬い、
しかしアースの背負っている大剣はまるで、紙でも切り裂くかの様に、一切の抵抗を受ける様子も無くドラゴンの首を切り飛ばした。
その大剣は世にはあまり知られていない物であったがその性能は折り紙つきであった。その名は大剣[アスカロン]。
切れ味こそ[デュランダル]には劣る物のその重さは凄まじく大男100人でも持ちあがらない程である。
そして全長は3メートルを軽く超えており、その一撃の前にはドラゴンなど瞬殺されるための存在に成り下がる。
その剣は圧倒的な破壊力と重さと大きさで敵を粉々になぎ倒すために作られた大剣である。
「グギャアアァ……。」
オークよりも長い悲鳴を残してドラゴンは力尽きた。
「おっらぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
ドラゴンを倒した後アースは全力で[アスカロン]をドラゴンの群れ目掛けて、地面と平行にぶん投げた。
ドラゴン達との距離は実に15キロは在ったが音速の数倍で飛んで行った大剣にすれば、あって無い物の様である。
そして、アース自身はまだ点在するはぐれオークやドラゴンを殺しに[デュランダル]を両手に掲げて走る。
大剣はドラゴン達のブレスを無視して一瞬で先頭のドラゴン数十匹をスライスしてハイドラゴンの尻尾と翼を切り飛ばして数キロ飛び続けやがて
地面に着地した。
アースは構えすら取れない速度でオークの首を切り飛ばし、ドラゴンを蹴って行動不能にして回った。
そして、戦場に残ったのは無傷のアースと瀕死のハイドラゴンだけであった。
行動不能にされたドラゴン達は全身の骨と内臓がぐちゃぐちゃになってしまい、
数分は耐えた物のそんな状態の生き物が生きていけるはずもなく、しばらく苦しんだ後次々に死んでいった。
「っは!お前達の縄張りに侵入してこんな滅茶苦茶にして悪かったな。でも、お前達が草食動物を殺して食らうのと同じで……いや、ちがうな、
人間は自分の我が儘でお前達を殺して幸せな生活を送るんだったな、まったくどっちが魔物だかわかんねぇよなぁ、でも俺は確かに人間なんだ
だから今からお前達を殺すし、これからも殺し続ける。さあ早くしないと大切な後輩が死んでしまうかもしれねぇんでな、せめて最後は打ち首で
殺してやるぜ、殺されるなら、俺なら、それが一番いいからな、っと寿命で死ぬって考えが無いのが笑えるな。」
「………フ、サッサトヤレ、コノオオバカモノ。」
「お前……喋れたのかよ。」
「マアナ、ソレヨリハヤクシロ、タイセツナコウハイトヤラガシンデシマウゾ。」
「あっああ魔物と話したことは初めてだから動揺しちまった。俺もまだまだだな。」
「ワカモノガ、ナニヲイウカ、オヌシナドワレニトッテハアカゴドウゼンダ。」
「そう言えば、お前は何年生きているんだ?」
「ハハ、ココニハナニモナクテナ、ネンゲツナドカゾエレルハケガナイダロウ
マア、ワカキヒノキオクガホトンドナイカラナ、ソウトウダトオモウゾ。」
「それは……なんともまぁ、あれだな、あれ。」
「アア、アレダナ、ワレモワカッテオル。」
「「まぬけだな(マヌケダナ)。」」
「はは、はもったな、案外俺達息いいな、お前をペットにしてやりたいぐらいだぜ。」
「ハハハ、ソレハカンベンシテクレ……ソノカワリニ、オマエニイイコトヲオシエテヤロウ!
ジンセイノセンパイノコトバダヨクキクガイイ。」
「一体どんなことを教えてくれるんだ、人生の先輩よ!」
「ワレノケツエキハ、バンノウノ、ヒヤクダゾ!ノメノメエンリョウスルナ。」
「血液秘薬かよ、すげえな、これでクルトも助かるぜ、ありがとよ。」
「イイッテコトヨ!サアワレニミレンナドナイ、サッサトコロシテクレ。」
「おうよ!さあっ行くぜっ!!おらっ!!」
アースは手に持つ[デュランダル]を思いっきりハイドラゴンの首に振り下ろした。
ハイドラゴンは悲鳴すら発さず静かに息絶えた。
「っとこれ持って帰らねぇとな。」
アースは気球に居るギルド員に相図の、のろしを焚いた。
気球が降りて来た。
アースは中から優しくクルトを降ろしてその口にハイドラゴンの血を飲ませた。
「これで大丈夫かな……、あ、一応体にも掛けとくか。」
アースはクルトの体にバシャバシャと血を掛けていく。
「お、おうすげぇなこれ。どれ一口。」
クルトの体の傷が一瞬で治ったのでアースは少し驚いた。
そして、アースは自分の口にも少し血を含んだのだった。
「ん?お!っおおお!!!」
アースは余りの美味に言葉に成らない声を上げるしかなかった。
それ程までに先ほど殺したドラゴンの血液はうまかった。
「けど我慢しねぇとな、うんうん。」
クルトのためと思いその血液を大量にクルトの口に注ぎ、体に塗って行った。
大量にドバドバと
「うっう~ん、俺は?」
「おっ生き返った。」
次回「日用品復活」