「大量生産、大量消費の日用品」
「やっと着いた……。」
「着きましたねー。」
アースさんは倒れながら力無く呟いた。
あはは、異常状態回復の魔法を掛けたのに何でだろうなー。
俺は今下の島を見ながら魔法薬をがぶ飲みしている。
島の形は楕円の真ん中を潰したような……丁度砂時計の様な形である
そして下にドラゴンの岩山、上にオークの大森林と縄張り分けされていた。
ちなみに真ん中は平原で岩山からの水が川に成って大森林に流れている。
中央には大人しそうな草食動物がのんびりと歩いていた。
「……でどうするんだクルト。」
復活したアースさんに聞かれた
この場合は……俺は薬を飲みながら深く考えた。そうだ
「平原の川に俺のスキルで塩と油を大量にぶち込みましょう。
それから森を焼きましょう、するとオークは下に向かいドラゴンと戦争を始めるでしょう。
ついでにオークを後ろから追いかけながら油を撒いて火を付けましょう。逃げ道を無くすのです。
オークは飛べないしドラゴンも飛ぶのは苦手なのでここから川に油と塩を入れましょう。」
「こえぇよ、俺にはお前が怖すぎるよ。」
「どうせ皆殺しですし、無人島なんで遠慮することは無いですよ。」
いやぁ無人島のドラゴンとオークで助かったよ。ほんと
「それもそうかもな、良し殺っちゃってくれ、クルト。」
俺は目で返事して川に塩と油を流し始めた。
「凄い量だな、滝の様だぜ」
その言葉は決して大げさでは無くむしろ足りないぐらいである。
スキルの<無限>の所が良く効いている。
あっと言う間に川は油の黄色と溶けきれない塩で黄色と白に染まった
汚染水がゆっくりオークの森に流れていく、俺達は高い所から見物だ。
「しばらくこのままにして置きましょう。」
川は油が増えたせいで濁流の様になっている。
森林はもうすぐそこだ。
俺は更に油の量を増やした。
もう油は滝を超えて壁の様に成っている。
「うわぁひどい」
アースさんはそう呟いた。
「油は後で消せますからね環境を心配する必要は無いですよ。」
「便利だなぁほんとに。」
ああほんとに便利だ
正に俺にぴったりなスキルだ
会話している間に濁流が森林に到着した
二時間はかかった。やっとである
「少し待ってから火を投げ入れましょう。」
「そうだな。」
森全体に油が行き届か無ければ意味無いのである
塩は水を固めるために入れた。
森から慌てたオークがいっぱい飛び出して来た。
面白い光景である。
「そろそろじゃねぇか?」
「そうですね。」
俺は短く返事をして出来るだけ離れた所に薪を大量に出して魔法で火を付けて落とした。
まず川に火が付き凄まじい勢いで火が広がり森に火が着いた。
瞬く間に森は炎に飲み込まれた。
火の中から大慌てのオークがいっぱい飛び出して来た。
ちょっとオークの群れにしたら少ないなぁ焼けて死んだのかなぁ?
するとオーク群れの中から一際大きい金色のオークが飛び出して来た。
顔は怒りと殺意で満ちている。
お~怖い怖い。
「あー戦いてーな。」
「もうすぐですから我慢して下さいよ。」
アースさんうるさい
それはそうと、全てのオークが森を出た。
俺達はオークの後ろに転移して再び油を撒いた。
今回は薄く広くを心がけて
ついでに性質を弄って激熱の油だ
何もしていないのに自然発火している。
オーク達は強制マラソンである。
年寄りや子供のオーク、力の無いオークは火に飲みこまれている。
面白いけどオークを減らし過ぎると不味いから、自重する。
ん?丸焼きに成ったオークが生き返ったぞ?
さすがオークだな、凄まじい生命力だな。
俺は素直に感心した。
「おっドラゴン達がオークの群れに衝突したぞ。」
ドラゴン達は縄張りを侵されて怒っている。
近くにいたオークが食い殺された。
すると赤い大きなドラゴンが現れて群れを鎮めた。通常のドラゴンは緑色である。
オーク側も金色のオークが群れを割って表れた。
何やら会話をしている様だ。
「おい、クルト不味いぞ、これは不味いぞ。」
「ええ!!分かってますよ!」
これは不味い魔物の知能を舐めていた。
一番怖いドラゴン、オーク同盟が結ばれてしまった。
不味い、本当に不味い。
「どうするんだクルト?」
「兎に角数を減らしましょう。」
<日用品>でナイフを生産して落として行く。
アースさんも全力で投げつけている。
が、ドラゴンのブレス、オークの槍で叩き落とされていく。
次は魔法で特大の火球を生成して落とす、アースさんはナイフを投げ続けている。
火球はドラゴンのブレスとオークの魔法で、ナイフはオークの槍で落とされていく。
「あアァぁァ、畜生がっっ!!!!」
再び<日用品>でナイフを落とす。
が、その量は億を軽く超えており、性質と強度を弄り、途轍もない硬さと温度を誇るナイフである。
更に生産圏は20メートルしかないので雷魔法でナイフを生産圏外へと誘導していく。
更にナイフとナイフの隙間に針を押し込み隙間を無くす。
魔物たちも初めは捌くことが出来たが徐々に押されていき、今は一方的に攻撃されている。
「おっおい、クルト?」
アースはクルトの怒りを目の当たりにして戸惑っている。
オークキングやハイドラゴンは必死に仲間を庇っている。
何もクルトは魔物達に怒っている訳ではない。
魔物の知能を舐めて自分やアースを危険な目に合わせてしまった、自分自身に怒っているのである。
しかし、クルトは怒りで我を忘れる様な男ではない。では何故か?クルトはただ自分のミスを埋めようとしているだけなのである。
クルトは余りにも責任感の強い、いや強すぎる人間だった。
しかし、一人間に出来ることなど、たかがしれている。
魔法とスキルを同時に、しかも両方限界の出力で精密作業をし続ければガタが来るに決まっている。
「ぐぅうぅぬぐぅぅぅァあああァァぁガァァあ!!!!!!!!!!」
「おい、おい!!!もう十分だ。だからやめろ!!!」
次回「人間として日用品が出来ること、出来ないこと」