無人島に日用品
「ところでそのドラゴン達はどこにいるんだ?」
「海の無人島です。」
「「遠っ!!!」」
冒険者として、遠出するのは当たり前だが幾らなんでも、遠すぎだろ。
俺達が、そう思うのも無理はない、何故ならここは内陸部で海まで優に500キロは有るのだ。
「いや、そうか、海か…馬車だと遅すぎるな、飛龍か魔法だな…おい、クルトお前移動魔法使えるか?」
「短距離テレポートぐらいしか、使えません。」
「俺は魔法のこと全然わからねーんだが、連発しても大丈夫か?」
テレポートは魔法の中でも低級魔法とされているが、魔力消費量は、半端じゃなく、連発など到底出来るものではない。
この人は本当に魔法のこと何も知らないんだな、と俺は思った。
いや、でも俺はスキルで魔力量が増えている。それに<日用品>で魔法薬が作れる、案外行けるかも知れない。
「スキルの恩恵で何とか行けそうです。気球で行きましょう。途中休憩が必要なので、それを含めると1時間程で着くはずです。」
「随分早いな、魔法ってすげーな。リリアちゃん地図貸してくれる?」
「はい、ええっと、此処ですね、この孤島です。」
そういってリリアさんは地図に赤の筆で赤いマークをつけた。
どうして、このギルドは赤一色何だ?と思いながら地図を見てみると、
赤くマークされた孤島が地図の端っこの方にあった、南東の方角で、距離にして、約540キロ。
「このぐらいなら、なんとか行けそうです。」
「っよし!!じゃあ、リリアちゃんは気球の手配をしてくれ。クルトと俺は明日の朝にギルド集合だ。」
「「分かりました。」」
そう言って、俺は町へ買い物しに行った。
「さってと、たぶん泊るだろうから、テントを買うか、ん?」
あれっもしかしたらテント出せるかな?街中で出すのは不味い。家に帰ってから確かめるか。
考えごとをしていると自然と歩くのが遅くなって来る。俺は誰かとぶつかった。
「いってーなコラ。」
「すいません。」
相手はチッと舌打ちして去って行った。良かった絡まれてたら、死んでるとこだった。あの不良が
「ふう、剣を買うか、あと大きな鞄も。」
やっぱり<身体強化>を貰ったのだから、使いたい。ちなみに杖はもうすでに買ってある。
鞄は旅荷物を詰め込むために出来るだけ大きいのが良い。今あるのじゃ少し心細い。
剣はギルドの≪本工房≫で買うか。鞄は……どうしよう、とりあえず≪本工房≫行くか。
そして、俺はギルドにやって来た。前は一階の受付に行ったが今回は地下の≪本工房≫に行く。
地下の風景は一階と同じでやはり赤色一色だった。
「すいません、剣が欲しいのですが、おすすめありますか?。」
俺が話しかけたのは工房のカウンターに座っていた。青年だった、非常に整った顔をした、ここらではかなり珍しい黒髪黒眼のイケメンだった
見た目はとても大人しそうな、というより、無口そうな人だった
「……剣術の心得は……?」
「有りません。」
俺は正直に答えた。嘘をついても仕方が無いからだ。
それにしても俺の勘は良く当たるな、予想通り無口だ。
「……そうか……なぜ剣を……?」
「スキルで良いのを引いたもんでして。」
「……力で切るのか……頑丈な方が良いな……。」
何やら、俺のために考えてくれているらしい。
「……なら……これは……どうだ……?」
そう言って、見せられたのは細い剣だった
細すぎて折れそうだった。
「あの、力結構入れるんですけど……。」
「……だいじょうぶ……速度重視な人でも……使いやすい……軽くて……丈夫な剣……まず……折れない……。」
んなっ!俺が<筋力強化>じゃなく<身体強化>なのを見抜かれた! ……こいつ見かけによらず、かなりやるな。
まぁ、そんな奴がそこまで言うなら大丈夫だろう。よしっこれ買うか。
「分かりました、ありがとうございます。いくらですか?」
「……銀貨1枚……だけど……。」
よしっ買える値段だ、お金には名門金貨、白金貨、金貨、銀貨、銅貨、とあって銅貨から1000枚ごとに銀貨、金貨と上がっていく。
ちなみに普通の農民が一ヵ月にかせげるお金が銀貨10枚程度だ。俺は、今金貨1枚を持っている。
どうしてこんなに持っているのかというと、昔村で死にかけていた冒険者から貰ったものを今まで大切に置いておいたのだ。
「わかりました。所で鞄ってどこで売ってますか?」
「……裏通りの……ぼろぼろの……店に……売ってる……地図を……書く……待ってて……。」
地図をくれるらしい。ありがたいことだ。
「……書けた……。」
「ありがとうございます。またきますね。」
地図によるとスラム街の通りにあるらしい。
いくら王都でも、完璧な統治などありはしないので貧困者が生まれる。
そういった者が身を寄せ合って暮らしているのがスラム街だ。
早速、俺は王都の端のスラム街まで走って行った。
王都は広く、ギルドは入口近くにあるので、端までいくのは、其れなりに時間が掛かるのだ。
スキルの効果か案外早く着いた。驚いたことに、かなりの距離を走ったはずなのに全く疲れが出てこない。
スキル恐るべしだな。
地図に書いてもらった、店の特徴と周りの建物……というかテントと比べていく。
ちなみに書いてもらった特徴は
黒い綺麗なテント
看板等は一切ない
夜にしか開かない
昼しか見えない
である、夜は魔法で見えないらしいから、こうして昼に下見しに来てるのである。
しばらく探していると見つかった。黒い看板の無い綺麗なテントだ
「ここかな?」
俺は周りの風景と位置を頭に入れて急いで宿に戻った。
「ふう、今日は色んなことがあったな。少し寝るか。」
宿に着くとテントを出すということも忘れて、深く倒れ込むようにして眠った。
それから夜になって、しばらくすると……
「はっ!!,寝過したか!?、いや、まだ大丈夫だ。」
<日用品>で食事を出し、食事を取りながら、着替える。
急いでお金と剣を持ち店へと、走っていく。
今日は新月で明かりは殆ど無い、それでも少しでもあるのなら、
<身体強化>でなんとかなる、
夜の街を目にも止まらぬ動く。
「少し寒いな、もう冬か。」
夏も、もうすぐ終わりだ少し寒くなってきた。
依頼が終わったら冬支度しないとな。
そうこうしている間に昼来た場所に着いた。
成る程確かに見えない、けど何かがここに在るのは分かる。
「ごめん下さーい。」
入口を開けると広がったのは、全ての色を混ぜたかの様な無限とも言える広さの部屋?だった。
「何の用じゃ。」
そう答えたのは薄汚い格好をしたお婆さんだった。
「鞄が欲しいんですけど、沢山入る奴」
「やらん、帰れ。」
帰れと言われた。ひどい…。
一応どうしてか、聞いてみるか
「何が駄目なんですか?」
「分からん時点で駄目じゃ、もう帰れ。」
「何!!!??……がっ…………。」
そういうと、お婆さんは杖をかざした。
視界が……暗転……する……意識……が。
朝、俺は宿のベットで起きた。
「はっ、ここはどこだ、さっきのは夢か?」
それから、自分の格好を見る、昨日の剣が握られていた。夢ではないらしい。
「何が駄目だったんだろうな。まあ、また今度行ってみるか。」
あれは絶対、魔法の鞄だ、あきらめてなるものか。
「そういえば、テントのこと忘れてた。」
テントが出せるか確かめる。
普通に出せた、うん、良かった。
普通の鞄に必要な物一式詰め込んで、背中に剣、腰に杖を付けれる服に着替えた。
服は<日用品>で出した。
「ギルド行くか。」
俺は飯を出して食いながらギルドに歩いて行った。
ギルドの赤いぶ厚い扉を開けて受付に向かった。
「よお、クルト待ちくたびれたぜ。」
「こんにちは、アースさん。それで、気球はどこにあるのですか?」
見た感じ気球は無い、いったい何処に置いてあるのだろうか
「それなんだがな、リリアちゃんが頑張ってくれて、超大型になっちまったから外に置いてきた。」
「外?」
外に気球何か無かったぞ?
「ああ、王都の外だ。」
ああ成る程、そんなにでかいのかー
だから、王都の外なのかー
「それ、要ります?」
「がはは、でかい方が良いだろう?」
「まぁ、そうですけど……。」
テレポートは移動させる物体の質量と距離で魔力量が決まるんだよ!
あれっ何だか先が不安になって来たぞ。
「所でクルト、お前気球運転できるのか?」
「無理です、アースさんは?」
分かり切っているが一応聞いておく。
「無理だ、どぉすんだよ。」
予想どおりの回答だ
「気球にはギルド員が一人付いているので大丈夫ですよ。」
この世界で気球の操作が出来る人は少ないため、気球には必ずギルド員が付いてくるのだ。
もっとも、要らないと言えば付いてこなく成るのだが。
「そうか、心配して損したぜ。」
「さあ、早く移動しましょう。」
ギルドの扉を蹴る様に開けて、俺達は気球まで走って行った。
「これは……城か?」
「ちょ、でか過ぎでしょ。」
次回「あって良かった日用品」