番外編「砂漠の双龍とオーガとゴーレムの虐殺劇」終
渇水の灼熱地獄、生命の存在を許さない筈の砂漠に一人の男が上半身ほぼ裸で座り込んでいた。
「魔法具の双眼鏡でも見つからないか……どうしよう、本当マジで」
男は珍しく地面に目線が沈んでいた。
視力の問題ではなく、地平線の問題なのだが、男は気が付かなかった。
「そうだ、高度を上げれば色々見えるかも!」
男は馬鹿だった。しかし、限りなく正解に近い回答でもあった。
「垂直ジャーンプ、おっリーダー発見!ってあれ?」
男の目には、龍を打ち負かし、龍をベンチ代りにして、座り込んでいる男が映った。
そして、その後方から、大量の黒や赤、青色の塊が蠢いている様子が目に入った。
「まっ!とりあいず合流だ。おーい!」
呼ばれた男は、声のした方向に首を回す。
「ん?あぁ、アースか」
男は何でもないように呟く
「っと!リーダー、龍倒しちまったのかよ」
「リーダーじゃねぇ、ギルド長だ。で、そういうお前はどうなんだよ。」
「≪クリスタルゴーレム≫ならバラバラにしてやったぜ、しかも素材も回収出来た。」
「なら後≪オーガの群≫だけか。今回はハズレっぽいな」
「だな、全体的に弱いし……」
「まったくだ。」
二人は失望の目を地面に向ける。
戦闘狂の二人は、今回の魔物に、自分を殺す事が出来る様な奴が、本気で戦える様な奴が紛れ込んでいる事を期待していたのだ。
……龍はともかく、≪クリスタルゴーレム≫はかなりの強さだったのだが。二人には、意味が無かったようだ。
「もう少し骨のある奴らに当りたかったなッ!」
リーダーと呼ばれる、全身銀色の鱗まみれの、少し背の高い男は背中の剣を抜き、背後から攻撃を繰り出そうとしたオーガを切り捨てた。
「おー、やっと手元に戻った[アスカロン]、行くぜ、おらぁぁぁぁ!」
ようやく、手元に戻った[アスカロン]をまた手放す。
勢い良く投げ飛ばされた[アスカロン]は、真っ直ぐオーガの群に突っ込み、彼らの首や胴、胸や腕、足を吹き飛ばしながら直進して行く。
地獄の最深部に住み、超高等召喚魔法・魔術によって、無理矢理現世に引きずり出されたオーガは、戦闘開始前からボロボロで、理性が無い。
しかも、太陽光で体は浄化されてゆき、時間が経つほど体が朽ちてゆく。
更に、地獄から離れているので、本来の十分の一の力も出せていない。
しかし、それでも地獄の化け物、十分に強いはずなのだが―――――――――これではまるでボロ雑巾の様だ。
目を見開き、腕や足を震わせ立っている地獄の化け物は唯のマトに成り下がった。
唯のマトが十分、いや五分と生きながらえる道理は無い。
かつて地獄で栄華を築いたオーガ達は、無慈悲な剣閃でその命を終える。




