知られぬ魔法
自己紹介を聞いていて判ったんだけど、どうやらこのクラスあ行、か行が多い。クラスの15人約半分があ・か行なのだ。通りでま行の僕が一番後ろなんだ。そして隣の席奴が立ち上がった。あ、ちなみにこの自己紹介では出身中学、名前、入りたい部活、その他何かあればを話すんだ。
「初めまして。僕の名前は永途未削哉です。出身中学は有りません…。入りたい部活は今は特に……。取り敢えず以上です。」
女の子みたいな名前だな。実際男だけどと、僕は思った。けどそれ以上に驚きなのは出身中学が無い!?何かのジョークなのか?まぁ……、そ…う…受け取っておこう。
削哉からは普通に順が回った。特に変わって事を言う奴は居なかった。俺の前の奴に回るまでは。
「小春中出身、星川実成(もちろん、女の子だよ)。魔導装甲には興味があります。特に後はありません。」
初対面の相手に向かって良くまあ、こんな事が言える……。魔導装甲は余り知られていない単語。そんな事を言ったって判る奴はそういない。馬鹿にされるだろう。それなのに言える勇気は凄い。僕もその勇ましさは見習いたいもんだ。そんな事を考えていた所為で、自分の自己紹介で言いたいことが纏まらず、自分でも何を言ったのか判らなかった。
今日は配布物を配布して解散だ。そして配布物を受け取り、帰りの支度をする。ホームルームも終わり、帰ろうとする。すると姉がやって来た。
「い~た~!帰ろー!」
「悪い。今日は無理。」
「何で?」
「気になった奴が居て。」
「ひ、ひとめぼれ!?」
「違うから。」
「ふ~ん。」
ありゃ、信用して無い顔だ。困ったな……。そういうことじゃ無いんだけどな……。
「じゃっ!先帰ってるね~。」
荷物は持って教室の外へと走って行く。本当にまたあの家で一緒に暮らすのか……。考えたく無い。
僕はゆっくりと立ち上がり、隣の席に行く。僕は口を開けたが言葉が出なかった。何を言えばいいのだろう?まぁ、取り敢えず……。
「あのさ~。削哉君だっけ?自己紹介のアレ冗談?」
「おや?あなたは?」
「わ、悪い。僕、真那異蛇って言うんだ。まな板って呼ばれる。まんまだけど。」
「自己紹介のアレって出身校の事ですか?」
「うん。」
軽く頷くと彼は僕のコトをじろじろ見始めた。手や足、脇腹なんかを一通り見ると何故か頷いた。
「君なら、話せそうですね。」
何が?
「本当の事です。」
本当の事?どういうコトだ?
「僕の出身校の件は確かにありません。この世界に来たのも2ヶ月前です。あなたなら信じてくれるでしょう。僕は天使なんですよ。」
んなっ!?僕の親は天使の存在を実際に確認していた。だからと言ってこの世界にいるはずが無い。
「おや?天使の筈が無いと思っていますね?すみません。僕は正確には天使ではなく、堕天使です。」
堕天使……。
「まぁ、気にしなくて良いですよ。僕の現在の能力、容姿はそこらの人間と何ら変わりは無いですからねぇ。」
なら、気にしない。と、言う訳にも行かないが気にしないようにしよう。
「あなたは星川さんの事をご存じですか?」
「いや。でも、何故?」
「彼女は自己紹介で魔導装甲について話していました。魔導装甲なんて普通の人間は知らない代物です。あなたはその装甲の事を知っている筈です。ならば、何らかの繋がりがあるかな?と思いまして。」
「そうか……。」
不思議だな。初対面でこんなに話せるなんて。本当に不思議だ。
「なあ、一度どっかで会った事無いかな?」
「いや、それは無いかと。」
やっぱり、思い違いかな?
取り敢えず、削哉に別れを告げ、教室を出た。何故、取り敢えずか?考え事があったからだ。
親父は天使の存在を知っていた。それは何でだ?何故知っていたのだ?そんな事を真剣に考えながら家路を走った。
家に帰ってねーちゃんに聞き出したい事があったからだ。