狂人
その人になりたいと思いました。
私のその人への愛情というのは本物でした。
その人自身になりたいと思ったのも当然です。
身の丈に合わない大学を目指したのもそうです。その人の卒業大学だったからです。
その人と同じ仕事を致しました。子供に興味なんぞありませんでしたが教師になりました。
全て全てあの人を愛したがゆえの行動でございます。
私がこんな文章を書いているのもあの人への敬愛が理由ですし、私の過去の行動は全てあの人から始まっているのです。
あの人の人生を模倣し、あの人に成り代わることが私にとっての至上の幸福なのです。
あの人は自殺致しました。故に私も自殺します。
あの人は教え子を失いました。故に私も教え子を失いましょう。
死んだ日も、死因も、飼った犬も同じです。子の名前も同じですし、両親の死んだ日も揃えました。
私はあの人になりました。
あとはこのまま死ねばあの人になれるでしょう。
だからこれは、私があの人になるために作る最後の文章です。
この文が、あなたたち読者に読まれて、くだらない感想を残す所まで、完璧です。
私は私の人生を送りながらも、もうひとりの人生を歩みました。
人生は一度きりですが、私は2人分の人生を送ったのです。
あなたたち凡人には理解できぬでしょうが、これこそが私の人生です。
あの人のようにもっと書きたいですが、これ以上書いていたら時間が来てしまいます。
ここまで完璧にしてきたのに、最後でズレてしまったら笑い事ではありません。
それでは皆様、お別れと行きましょう。
演じ続けた人生にさようなら




