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狂人

掲載日:2026/06/03

その人になりたいと思いました。

私のその人への愛情というのは本物でした。

その人自身になりたいと思ったのも当然です。

身の丈に合わない大学を目指したのもそうです。その人の卒業大学だったからです。

その人と同じ仕事を致しました。子供に興味なんぞありませんでしたが教師になりました。

全て全てあの人を愛したがゆえの行動でございます。

私がこんな文章を書いているのもあの人への敬愛が理由ですし、私の過去の行動は全てあの人から始まっているのです。

あの人の人生を模倣し、あの人に成り代わることが私にとっての至上の幸福なのです。

あの人は自殺致しました。故に私も自殺します。

あの人は教え子を失いました。故に私も教え子を失いましょう。

死んだ日も、死因も、飼った犬も同じです。子の名前も同じですし、両親の死んだ日も揃えました。

私はあの人になりました。

あとはこのまま死ねばあの人になれるでしょう。

だからこれは、私があの人になるために作る最後の文章です。

この文が、あなたたち読者に読まれて、くだらない感想を残す所まで、完璧です。

私は私の人生を送りながらも、もうひとりの人生を歩みました。

人生は一度きりですが、私は2人分の人生を送ったのです。

あなたたち凡人には理解できぬでしょうが、これこそが私の人生です。

あの人のようにもっと書きたいですが、これ以上書いていたら時間が来てしまいます。

ここまで完璧にしてきたのに、最後でズレてしまったら笑い事ではありません。

それでは皆様、お別れと行きましょう。

演じ続けた人生にさようなら

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