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サナは「村の皆生きてるよね!?」と一人一人に声をかける。動かない。アクアウイルスの伝染は急激に早くなった。今までは、1週間に1人という遅いスピードだったのだが…
「そんな…」サナの目には絶望しか映らない。人が死ぬこと事態にある程度慣れていると自分では思っていたが、無理だ。彼女はまだ少女である。
ヒロトは「残念だが、こうなれば俺にも手の施しようがない。」サナは
「大魔法使いのあなたが何もできないなんて、あっていいはずがない!回復術でも蘇生術でも使ってよ!」と怒り叫ぶ。
「どうしようもないんだ。死した魂は天に召される。俺はその循環を止めるわけには行かない。神の作った理に俺は抗えない。」とヒロト。
「じゃあ、もういいよ!私一人で何とかする!」とサナは無鉄砲に村の奥に行く。
ヒロトは「おい待てって!サナ!」と追いかける。
サナは運動神経バツグンだ。ヒロトも魔法使いとは言えど、追いつけず姿を見失う。
(彼女には、俺が持たせた懐中時計という名の救難信号を出すアイテムがある。ピンチになれば俺は場所が分かるはずだ。)とヒロトは心のなかで思う。
サナは、無鉄砲に走ってはいるが、走りながら彼女が前聞いた事がある村の逸話を思い出す。村の奥の滝。その裏には祠がある。とそこは立ち入り禁止で入ったことはなかったが、場所は分かった。
(私はもうヒロトになんか頼らない。自分の力だけで神に会う。)そう思いながら、滝にたどり着く。
滝の流れは思ったより速く、確かに裏には空洞がある。
サナは「うおおおおおおおおおお!」と叫びながら、滝に突っ込む。滝の下の下の川には足がつくが、水に首までつかる。
「せいやっ!」と両手を祠の地面へと着く。そして起き上がる。
「私一人でもここまでやれるんだから!」と達成感に満ちあふれた雄たけびを上げる。
「それで、ここの石碑を触ると。」
石碑は、青白い光を浴び始めカウントダウンを唱え始める。「転移に必要なマナを持つ人間を用意してください。転移開始まで10秒前…」
「10、9、8…」
「それは聞いてないんですけど!ヒロトさんがいなきゃまずいじゃん…」
「7、6、5…」
「私だけ飛ばされた所で、何もできない…そうだ!」
懐中時計を触り始める。それで連絡を取ろうとする。
「ヒロトさん!今ワープゲートが起動してて、すぐ来れないとヤバいんですけど!」
「 4…」
見覚えのある男の声で、「場所は滝か…分かった!」と懐中時計越しに返事が来る。
「3、2…」
まだ来ない。もしかしたら間に合わないかもしれない。
「1」
サナは諦めた感じでうずくまった。私がこんなわがままなせいで…
「0」
となる一瞬前に合流する。ヒロトさん、ではなく可愛らしいネズミのような生き物が。
「えぇ!?」とサナはびっくりする
ワープゲートが転移する。
「場所、神の墓所。転移成功しました。」
石碑は青白い光を徐々に薄め、辺りは暗くなる。
「やあ、危ないところだったね。」とネズミ
「???」サナは喋るネズミなどという生物を知らない。最近の生物の進化はここまで来てしまったのか…と少し驚愕する。
「君があわてて駆け出すから、俺も追いつけるように努力した。意外とネズミって足が速いんだ。」とヒロトの声をしたネズミ。
「理由は分かりましたけど、いつまでその恰好なんですか?」とネズミを手に乗っけて、見つめる。
「悪いが、一度変身したからにはこれが解けるのに10時間はかかる。」とヒロトさんの声をしたネズミ。
「私が慌ててかけ出してなかったら、こんなことには…」と少しサナは後悔する。
「しょうがない、あれほどの凄惨な人の姿並みの人間が耐えられるはずにない。君はまだ幼かった。体も心も。」
とはいいつつも、ヒロトさんは話している時悲しげだった。いつもとは違う悲しげな顔。
「こんな思いする人は私だけでいい。私が世界を救うんです。」とサナは決意新たにする。
ヒロトは「では行こうか。神が眠る墓まで。」と奥を指さす。
「これが墓…。豪勢な作りですね。キンキラキンです。この赤い方宝石の部分売ったら高そう…」
と棺桶の上にある赤い宝石にサナは手を伸ばすが、ヒロトは
「それは触るな」と止められる。
その宝石は人の活力を吸い取る。今まで、この墓を運び出そうとしたものは全員、精気を吸い取られて死んでいる。
「これがこの棺桶の呪いですか?」とサナ。
「呪いというか呪術というか…一般的には呪いで合ってるかな」とヒロト。
「魔女団の奴らはこの中の死体を欲しがってる。だからこういう細工がないと墓は守られない。」
サナは「なるほど魔女団が…」と今日あった事を思い出す。屈強な男は神の匂いすら嫌い殺しにかかってきた。
ヒロトは「ではこいつを解き放つ。永久的降臨をここで成功させる。神に使える者として。」
ヒロトは、手から青色の宝石を持って来て、赤色の宝石の前に飾す。とたん、まばゆい赤色の光が辺りを包む。
そして黒い煙が上がり始め、棺は空く。
「お前らか。我の降臨を望む物は。」 と女神は話す。
「そうです。私ヒロトが神にお仕えします。」
「ふむ、前あった小娘の仲間か。よかろう。ではお前の贄を喰らう…」ここで神は生贄の食事を始めようと思ったが思いとどまった。ネズミが喋っているではないか。
「本来の姿で会うことかかなわず申し訳ありません。しかし、人間に戻った暁には贄になる事を誓います。」
神は「貴様、我を愚弄するためにここに来たのではないだろうな。」
ヒロトは「そっそんなことはございません。ですから、姿が戻り次第私は…」
「まあよい。さて、この姿も飽きたから人間に戻るとするか。」どす黒い塊のまとった神はブルブルと体を揺らし、人間の姿へと姿を変える。髪は青でツインテール、頭には小さなハット帽。服は喪服の用な黒いドレス胸にはリボン。黒いブーツ。
「我の名前は、セレスティーヌ。我が顕現したのを喜ぶがいい。」
サナは「神様なんですよね?恰好が人間すぎるのですけど…」と困惑する。
セレスティーヌは、「神だって着替えるものじゃ。貴様ら人間だって毎日同じ服では飽きるだろうに。」
とキャラ変したかのような人間らしさを見せつけてくる。本当は神じゃなく人間なんじゃ…?とサナは思う。
「ところでそこのネズミ小僧、貴様は何時人間に戻るんじゃ。我は腹が減って仕方がない。なんならこの小娘を食ってもいいんじゃぞ?」
ヒロトは「それはやめていただきたい。私が人間に戻るのは夕暮れになります。」
セレスティーヌ(セレス)は、「まあ、よい。で何の問題で我は呼び出されたのじゃ?」
サナは「伝染病の話です。」
セレス「ああ、そうじゃ。それで我が提示した条件は、永久的降臨。生贄の用意。1000人の信徒と言ったはずじゃが…。1つ目。2つ目は予定として。3つ目はどうするつもりなんじゃ?」
ヒロト「俺は異世界に繋がる鍵を持っている友人を知っています。その人に聞いて、異世界から信徒を召喚する。」
セレス「ほう、それは面白い。ではやってみせよ。」
ヒロト(ネズミ)は口笛を吹く。とたん、空から一匹の飛竜が飛んでくる。だんだん近づいてきてメガネの男が飛竜に乗っているのが見えてくる。
「おーい!ヒロト!こっちで会ってるのかなー??」
とメガネの小太りの男は叫んでいる。
ヒロトは「ああ!こっちだ!」と叫ぶと、遠くから飛竜がどんどん増えてくる。2の倍数くらいのスピードで、2,4,8,16,32…やっと1000を超えるかという頃には空だけ大渋滞になっていた。
サナは「す、すごい」と圧巻せざるおえなかった。
ヒロトは「これで3つ目は揃いました。1000人の信徒は今飛龍に姿を変えていますが、時期に戻ります。」
セレス「すごい!すごいぞ!お前は我を神に!神の玉座に座らせるのじゃな!」とひたすら喜ぶ。ネズミを抱きしめる。少し落ち着いた時。
ヒロトは「これで大丈夫なはずだ!お前は、この辺の平原にでも、皆を休ませてくれ!」と叫ぶ
「言っとくけど、お代は高いからなヒロト!覚悟しとけよ!」と飛龍を誘導しながらどこかに消える。
ヒロトは「これで1と3を達成しました。俺ももう時期食べられる。これで伝染病の解決策を話していただけますか?」と聞く
セレス「まあ、特別サービスとして、死ぬお前にも聞かせてやろうぞ。我が考えついた案はこうじゃ。負のウイルスに対抗する、正のウイルスを作る。要はアクアウイルスを食べる無害なアクアウイルスを作ればよい。そして、我は一度食べたものの分子構造などは把握できる。」
「分子構造?」とサナ。
セレス「その物質を作っている分子という小さいモノの構造について分かるということじゃ。ウイルスの構造を真似したウイルスぐらい我には簡単に作れる。」
サナ「じゃあ、今すぐ井戸水に行きましょうよ!あそこにはアクアウイルスがいっぱいウヨウヨいるはずです!」
ヒロトは「まて、それをするにもエネルギーがいる。俺が人間に戻った後でするしかない。」
セレスは「それはそうじゃ。我も課した約束を果たしてからこの小娘の言うことは聞く。」
サナは「それじゃ、意味がないです!やっぱり犠牲は私がなります。ヒロトさんが生き残った方が何千倍もいいです。」
ヒロトは「これは俺の宿命なんだよ。君が背負っていいものではない。」と考えを変えない。
ヒロトはサナの方に近づく、ネズミのまま。
来たる夕方までまた。と、ヒロトはサナに睡眠魔法をかける。
サナが次起きた時は、夜だった。外にはセレスと名乗る神と横に死体。
あの赤髪。ヒロトさん…ということは死んで、そう思った瞬間吐いてしまう。
私は止められなかった。2回目だ。村は破滅。ヒロトさんは生贄になり死ぬ。そんな状況を見て
セレスは「遅かったじゃないか。貴様にもこの男の覚悟見てもらいたかった所なんじゃが…」
サナは「じゃあやっぱりヒロトさんは…」と尋ねる。
セレス「我の中で眠っておるよ永遠に。」
「化物!」サナは周りにある木の棒を取り、叩きにかかる。
セレスは、ヒョイッとかわし
「動きは素早いが力は弱い。おまけにどっちに動くかも我には丸分かりじゃ。」と話す。
「闘いっていうのはこうやってやるものじゃ!」と蹴りを一発腹に入れられる。素早い動きでサナには避けられない。「ぐっ…!」
セレス「そろそろやめにしてくれんかの。我とて、か弱い生き物をいたぶるのは少々心が痛む。」
と、椅子に座り込む。
サナは「ならこれならどうかな」と石をものすごいスピードで投げる。一応、こういう時のために全能力を上げるタイプなのだ私は。
セレスは「つまらんと言ってるのが聞こえんのか。と石を空中で制止させ、投げたスピードそのままで跳ね返す。」
サナは、間一髪で避ける。
セレス「そんなにこの男が好きなら、この男と一緒に食ってやるわ」とセレスも臨戦態勢に入るが、
「やめにしていただけませんか?セレスティーヌ様」とどこからか声。
見れば、懐中時計が光っている。
サナは、「ヒロトさん!?」と懐中時計をじっと見つめる。
「ああ、心配かけて済まない。オレはここにいる。」と懐中時計の中のヒロトは話す
「サナ、俺は俺自身で生贄になることを選んだ。代々、うちの伝統では神に仕えると特殊能力をもらえる。俺は死んではいるが、話せないわけではない。」とヒロト。
セレスは「だから、眠っているといったじゃろう。我は魂に直接関与はせん。外側の殻を喰らってるだけじゃ。」
サナは「でも、もう会えないってことですか?」と聞く。
「ないと言いたいところだが、一つだけある。サナのほ…」
ここで通信が途絶える。
サナは「ヒロトさん!?ヒロトさん!」と何度も呼びかける。返事はない。
セレス「この辺でいいじゃろ。どれ、アクアウイルスとやらを見せい。」
サナは「感情なんてないんですね…」と少し怒ってみせるが
セレスは「そんなものあって何になるのじゃ?感情は時に考えを狂わせる。人は無感情が一番じゃ。」
サナは納得いかなかったが。
「分かりました。ウイルスのところまで案内します」
と彼女を連れて、村まで戻る。
不思議と村へと続く道は昨日よりも長く感じた。




