◆九日目◇
◆九日目◇
箱はズシリと重く、何か音がしていた。耳を近づけると時計の針が進む音だった。まるで時限爆弾のようで薄気味悪かった。
警察に届けようか、ゴミ捨て場に置こうか、川に投げ捨てようかと考えた。
ふと、同じ階の一番端の部屋に住む、挨拶をしても返さない住人の玄関の前に置くことを思いついた。
些細な嫌がらせ。気の迷い。気まぐれ。理由はなんでもよかったが、挨拶を無視されたのを妙に根に持っていた。
送り状を剥がして、その住人の扉の前に箱をそっと置いた。
耳を澄ますと、箱の中身から時を刻む音がわずかに漏れているのが分かる。
踵を返して部屋に戻る。頭の中で『どかん!』と爆発するイメージを何度も反芻した。
箱を置いてしばらく時間が経つ。
とつぜん、爆発音がした。
まさかと思って玄関の扉を少し開けて通路の様子を窺う。
本当に時限爆弾だったようで、ドアが吹き飛んでいた。
すぐにサイレンを鳴らして消防、警察、救急車が忙しなくやってきた。音を聞いた住人が一斉に玄関から出てきて煙が上がっている部屋を見つめている。
しばらくして警察が誘導して全ての住人を避難させた。マンションの下で事情聴取が始まっていた。
数時間後の夜のテレビのニュースで、マンションの爆発騒動が報道され、このマンション前でレポーターが中継をしていた。
通路には防犯カメラがないのが救いだった。
騒動が一旦落ち着いた深夜、なかなか寝付けずに、布団の中で罪悪感と不安に襲われた。
何分経ってもそのまま寝るのは難しいと感じ、コンビニに酒を買いに出かけることにした。
布団から起き上がり、軽くジャケットを羽織ってサンダルを履く。
通路に出ようとして扉を開けると、こつりと何かが扉に当たる感触があった。
足元を見ると箱が置いてあり、開けた扉に押し出されていた。こんな時間に誰が置いたのか、箱を手に取って送り状を確認した。
腕を上げてスマートウォッチを見ると、夜中の十二時を過ぎ、日付が変わっていた。
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(全7話、完結まで予約投稿済みです)
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