ギリギリ犯罪なサンタクロースさん、横浜でプレゼントと心のこもったお手紙をお届けします!
ぜひ、最後まで読んでいってください! ↓↓↓
やあ皆さんこんばんは。サンタクロース事務局/日本支部所属/配達担当の6号だ。
突然だが、サンタは人間ではない。サンタは「サンタクロース」という1つの種だ。存在概念としては、妖精とかと近い。生まれたときから70歳ぐらいのおじいさんで、もこもこの髭が生えている。俺はまだサンタの中では若い方。
それに、大事なのは「ほとんどの人間に見えない」こと。
なんか巷では100歳超えだとか今年で1752歳だとかいわれてるが、それは社長の話だ。特に俺らのような、配達担当なんかは力仕事だから若いやつが多い。
さて、今年もまた俺らの仕事の時期になりましたよーっと。
○ ○ ○
12月24日午後6時、配達担当の決起集会が行われる。早い家では、8時ぐらいから子供がおやすみするので、早めに集会は閉じられる。
「今年もこの日がやってきた。それぞれ無理のないよう、身を粉にしてプレゼントを届けろ。楽しみにしている子供達のため、夢を届けに出発しろ!」
「「「はい!!!」」」
号令をしたのは1号さん。配達担当では一番高齢だと思うが、結構ムキムキで若いやつらにも引けを取らない、すげえ人だ。
配達担当は1000人ほど。時間と届ける子供の人数的に足りないと思うが、そこはフィクション補正でなんとかなっている。
んじゃ、出発しますかー
○ ○ ○
俺の担当は横浜のほう。移動はトナカイといわれているが、それは半分正解だ。実際には自動高速運転するトナカイ型のロボットなわけで。
さ、家に着きましたっと。今の家は煙突なんてないので、家に入る方法といえば大抵ピッキングである。
今年で何年目になるのだろうか、もう秒で鍵が開けられてしまう。こんな自分が怖いよ。
お邪魔しまーす……
実際には言ってないのだが、心の声である。
このお宅の子供は山中 優人くん6歳、小1だ。欲しい物はツリーそばの手紙に書いてくれているはずなので見にいかなければならない。人間に見えないからといって、足音とかは鳴ってしまうため、注意が必要だ。
足音を立てぬよう、廊下をひそひそと歩く。そして子供部屋の扉をそっと開ける……
……いや、電気バチバチに明るいやん!!現在は午後11時。6歳は寝たほうがいいと思うが……
……んぅ、優人くん目ェバキバキに開いてるぅ!!
ベッドの上であぐらをかき、腕を組み、意気揚々としている。
「こ年こそはぜったいにサンタさんをこの目で見てやる!そしてとっつかまえてサンタさんのおうちにつれてってもらうぜ!」
……まぁなんて好戦的なのかしらこの子。
どうしようか、寝てくれないとプレゼントが置けないし……
はぁ。仕方ない。
手刀でやさしく首をトンっと
「……うわ、ふぇ………………すぅ」
はい寝たー!!攻略完了ー!!まぁある意味気絶だが。
じゃ、ちょっと失礼して……あ、お手紙もすぐ近くに。でも先は、優人くんにお布団をかけて……よし。寝顔めちゃかわいい。
さてではお手紙を拝見しますか……
……なになに?
『サタンさんへ おれはプライベートヅェットがほしいです』
……かわいいー!!
サタンさんだともう違う御方だね!?たぶん間違いだろうけど。あとジがヅになっちゃってるねぇーまだまだ子供だなー!
……さて、この辺で。プライベートジェットかーどうしよっかなー
……よし、これかな。
「光る(ひかる)!鳴る(なる)!操縦できる(そうじゅうできる)!!ジャンボエアプレーンDX!!」
結構デカいやつを選んだ。操縦できるプライベートジェットである。
最後はお手紙にお返事しておしまいだ。
『ゆうとくん、メリークリスマス!! ゆうとくんのほしいプレゼントをとどけにきたよ。 プライベートジェットはちょっと大きすぎてとどけられなかったけど、大きめのひこうきをプレゼントするよ! ゆうとくんだけのひこうきだから大せつにたくさんあそんでね! 〜サンタクロースより〜』
なかなか、1年生で習う漢字だけだと書きづらいな……
まあ、子供たちのためだから全然苦ではない。
さて、1軒目終了かな?優人くんの部屋の扉をそっと閉め、廊下をまたひそひそと歩き、扉を最後に丁寧にピッキングで閉める。
ふぃーー!お届け完了!まぁまだまだ夜は長いのだけれど。
○ ○ ○
では、次のお宅へ。家に入るまではもう同じなのでカットしますねー
このお宅の子供は小林 颯斗くん4歳、幼稚園児だ。
廊下をひそひそと歩き、手紙を見に行k……
「あっ///だめ……/// 颯斗がせっかく寝たのに起きちゃうっ……///」
「いいじゃないか、こんな夜なんだから……」
「あっ……///」
おいなにしてんねん。聖夜はそういうのありがちやけど、一応神様の誕生日を祝う日やからね?たぶん。
こういう勢い任せでやっちゃう大人もいるもんだから、みんな気を付けといてな?
まぁかなり五月蝿いが、少子高齢化のこの社会、邪魔はしないほうがいいだろう。
「……もう、兄弟でも作r……」
アカンアカン。もう気にせんとこ。
とりあえず、手紙を読もう。
……なになに?
『さんたさんえ おにいちゃんをください』
……内容重っ……!この年で命を求めるか。いやまぁ、気持ちはなんとなくわかる。友達に兄や姉がいて、いろいろ教えてもらったり、遊んでくれるのが羨ましいのだろう。
……にしても、プレゼントはどうするか。弟か妹なら将来できそうなのだが。
……じゃあこれにしよう。
「動物・植物・昆虫・乗り物・恐竜の図鑑(全5巻セット!)」
ふりがなが振ってないのはもう完全に親向けに照準を合わせてるが。
ちょっと多いか?いやでもサービスだ。
お手紙のお返事も書こう。
『はやとくん、めりーくりすます!! はやとくんのほしいぷれぜんとをとどけにきたよ。 おにいちゃんはちょっとむずかしくてとどけられなかったけど、いろんなずかんをぷれぜんとするよ!おにいちゃんにしらないことをおしえてもらうことはできないけど、このずかんでしらないことをじぶんでしらべられるよ!たくさんよんで、たいせつにつかってね!もし、しょうらいおとうとやいもうとができたら、きみがいろいろおしえてあげられるすてきなおにいちゃんになってあげて! 〜サンタクロースより〜』
ふぃ、ちょっと長いかな……ま、いっか!
この時代、何でもかんでも人に聞くのはあまりよくない。まず自分でできるかぎり考えたり、調べてから人に聞くから意味があるのだ。……なんて、幼稚園児には難しい意図とかがあるんだけど。でもまあ確かに、遊び方みたいに実際に見せてみることが大事になることもある。その点はカバーしきれないが、将来颯斗くんがお兄ちゃんになったとき、颯斗くんが憧れたようなお兄ちゃんになってくれれば幸いだ。
よし、じゃあ帰ろうか……
「あっ///前より上手くなってる……///」
……よし、さっさと帰ろう!
○ ○ ○
よし。ここが最後のお宅。ここの子供は……斎藤 美姫ちゃん11歳、小5だ。「みき」じゃなかった……まぁ世界は広いということで。
廊下をひそひそと歩き、手紙を見に行く……静かだ。めっちゃ静かだ。今家に誰も居ないとか!?
子供部屋は……あ、美姫ちゃんが寝てる。でもリビングは……
……誰もいない。いろいろ探したけど、今この家には美姫ちゃんしか居ない。
親御さんは仕事か?一応聖夜なんだが……子供が一人になるとは。
まぁ考え込んでも仕方ない。手紙を拝見しよう。
『サンタさんへ、私が欲しいものは、「普通の名前」です。
私の名前は美姫でよく言うキラキラネームです。正直、キライです。改名ができるなら、すぐにでも変えたいと思っています。クラスのみんなはふつうの名前でうらやましいです。なんでこんな名前を付けたんだろうとずっと思っていますが、別に由来を聞こうという気にはなりません。ある程度は、仕方のないことだと割り切りました。でも、もし両親が本当に私を愛してくれていたなら、ふつうの名前をつけるはずだと私は思います。キラキラネームをつけるのは、親が子供を本当に愛していないからなんじゃないかと、なやんでいます。
ただのお手紙なのにこんなに書いてしまってごめんなさい。でも、ここに自分の思いを吐き出せてすっきりしました。お願いしても叶わないと思ってるので叶えてもらわなくても大丈夫です。もしここまで読んでくれたら、サンタさんありがとうございました。』
……はぁ。子供のほうが大変なんじゃないか?子供だからといって、その悩みを軽くあしらうのはよくない。
……いろいろ思うところはある。でもそれを全て伝えてしまうと、美姫ちゃん自身が成長しなくなってしまう気がしてちょっと気後れする。だからヒントとして、俺の意見を伝えてみよう。
手紙を書き始める。
『美姫ちゃん、メリークリスマス!美姫ちゃんのお手紙全部読ませてもらったよ。両親には直接言いづらいことだろうから、サンタさんはいくらでも、君の相談役になるよ。美姫ちゃんのお手紙を読んで、ちょっと気になったことと、将来のためのヒントを書いておくよ。
名前のことだけど、美姫ちゃんは自分の名前がキライだって言ってたけど、それは別に変なことじゃないよ。両親とは、好きな食べ物やキライな食べ物がちがうよね?それと同じ。両親はプリンセスっていう名前が好きだったけど、美姫ちゃんはたまたまそれがキライだっただけ。人は好みがみんな違うんだから、親に決められた名前がキライでも、それは人が多様性なことの証だよ。でも、他の人と名前を比べるのはよくない。あっちの名前がかわいいとか、この名前は変だとか、そういうのはちょっと違うよ。名前は比べて優劣をつけられるものじゃない。親が1番良いと思った名前なんだから、1番と1番じゃ比べようがないんだ。ただ、自分の名前がどうしても苦痛で、ずっと無理をしてるのなら、一度親御さんに話してみよう。大変かもしれないけど、やっぱり自分の子供の名前は、両親が一番分かってるはず。選択肢は「改名する」の一つじゃないから、よく考えてみて。
あとは、キラキラネームを付けるのは本当に愛してないからって言ってるけど、私はそうは思わない。キラキラネームをつけるのは、自分の子供を愛しすぎて、いろいろ入れたい意味を詰め込んじゃうからだと思う。だから、子供を愛している証だと思うよ。今度会ったときにでも、たくさん話してみて。きっと、美姫ちゃんを大切に思ってくれているから。
まぁ全部私の推測でしかないから分からないけど、親御さんは美姫ちゃんを愛してくれているから大丈夫。
こんなに手紙が長くなっちゃってごめんね。あ、あとお願い事の代わりに、テディベアのぬいぐるみをプレゼントするよ。このぬいぐるみに、美姫ちゃんが考えた1番の名前を付けてあげて、親御さんが美姫ちゃんを愛してくれているように愛をプレゼントしてあげて! 〜サンタクロースより〜』
はーい!書き終わったー!!言いたいことは言えたと思う。
じゃ、テディベアのぬいぐるみと手紙を置いて……ほいっとな。
よし、じゃおいとましますかー
玄関に向かうとバッタリ。美姫ちゃんの親御さんと思われる二人がドアから帰ってきた。
親御さんは真っ直ぐ美姫ちゃんの部屋に向かって、
「ごめんねークリスマスなのに二人とも会社に行っちゃって……今度クリスマスパーティーやりましょうね。」
「ああ。食べたいものいっぱい食わせてやるからな!」
……いいご両親じゃないか。
さて、バレないように早く出て行こう。
○ ○ ○
はぁ。今年はなかなかどの家もハードだったなー
でもなんとか全部届け終わったし、ノルマたっせ……!!
「もしもし、こちら70号ですぅ。あの、6号さんってノルマ終わりましたか?あの、僕まだあと60件残ってて……ちょっと終わらなさそうなので、もしノルマ終わってたら手伝ってほしいですぅ……お願いしますぅ!!!」
い……
あーもう、これだよ。
「もしもしーこちら6号……只今ノルマが終わったとこなので手伝いに行きまーす……」
「ほんとですか!?ありがとうございますぅ!!ちょっと長野までよろしくですぅ!!」
「は!?長野!?遠!!マジかよ。……はいはい行けばいいんでしょ行けば」
「すみません本当助かりますぅ。では待ってますねー!」
……ったくあと60件とか、今まで何してたんだよ70号!
……はぁ。長野……行くかあ……!!
いろいろ忙しいので投稿はマイペースですが、
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