5話
第五章
必死に走り、先程の部屋へ向かう。扉を開けるとそこは血でまみれており、嫌な鉄のにおいが立ち込める。苦しいかったんだ。すぐに如月のもとへ駆け寄り、抱きしめた。彼は血を吐きながら、弱々しく言葉を紡ぐ。
「けほっ!はぁ・・・・・。つむぎ・・・、ごめ・・・、手紙、送れなく・・・・な、」
「如月さん・・・!」
言い終わる前に身体がふらつき倒れる。彼の笑った目からは涙が零れた。
「如月さん。私、貴方のことが好きです。」
倒れた彼を支えながら、自分の気持ちを伝えた。
「ぼくも・・・。君の・・・・、こと、だいすき・・・、だよ・・・。君の、おかげで・・・、少し、だけど・・・・、はぁ。すてきな人生を、送れた・・・。」
彼は弱々しく、傷だらけの手で私の頬を撫でながら好きだと言ってくれた。
「貴方のおかげで書き続けられたんです。死なないでくださいよ・・・。これから、どうしたらいいんですか・・・。」
「書き続けるんだ。死ぬまで・・・。僕みたいに・・・・、なっちゃ、駄目だよ。」
だんだん呼吸が弱くなってきた。肩を上下に動かし、必死に呼吸を続けるがもう限界なのだろう。助けを呼ぼうと立ち上がろうとするが、彼の弱い力で腕を掴まれ、阻止されてしまう。
「つむぎ・・・。」
「がんばって・・・・ね。」
そう言って、微笑みながら息を引き取った。
冷たくなった彼を優しく抱きしめ、静かに口付ける。亡くなったことを使用人や彼の家族に伝え、涙をこぼしながら帰った。
自宅に戻り、彼から受け取った原稿の執筆に取り掛かる。この原稿の完成後、死ぬまで小説を書き続けた。