4話
第四章
家を出ると、家の前に人が倒れていた。手には封筒と万年筆が握られていた。封筒には如月桃李と書いてあった。すぐに彼だと分かり、彼を抱き抱え家まで運んだ。
しばらくして目を覚ました。こちらを見ている。
「如月桃李さんですか?」
私がそう聞くと彼はにっこりと微笑み、はい。と穏やかな声の返事が帰ってきた。
「もう僕は長くないんだ。最後に君に会いたくて、来てしまったよ。ようやく会えた。幸せだ。」
腕には何かで突き刺したような傷がたくさんあった。多分辛かったのだと思い、何も触れないでおいた。
「ねえ、これ。」
封筒が渡された。中には書きかけの原稿が入っていた。
「この小説を最後に死のうと思ったんだけど、書ききれなくて。君が続きを書いて世に出して欲しいんだ。君の名前でね。」
「はい。絶対完成させます。完成したら、読んでくださいね。それまでは・・・・、死なないでくださいね・・・。」
私の瞳からは涙が溢れた。ずっと憧れだった彼に会えて、嬉しいはずなのに・・・。彼の手が私の頬に触れる。
「大丈夫だよ。絶対死なない。また会いに来るし、手紙も今まで通り送るから。」
「はい・・・。」
あれから一ヶ月。如月さんからの手紙は一度も届かなかった。最悪の事態が頭をよぎる。すぐに支度し、東京にいる彼に会いに行くことにした。
手紙に書いてあった住所を頼りに家まで向かった。インターホンを押すとこの家の使用人のさくらさんが出てきた。彼女と少し話していると、玄関から一番遠い二階の窓から人影が見えた。それは身を乗り出してこちらを見ていた。私に気づいたようで弱々しく手を振っていた。如月桃李だった。すぐにその部屋へ向かう。