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31/37

31、

  

「何をしているの」


 問いかけても返事は無い。体を押しのけようとするも、両腕を上から押さえつけられ動けそうにない。


 恐怖よりも怒りが勝り、私はもう一度問いかけた。


「何をしてるの、放しなさい──トラドス」


 名を呼べば、押さえつける力が少し弱まった。だが放すつもりは無いようで、未だ私は組み敷かれたままだ。


「あ、気付いてた?」

「気付かないわけがないでしょう?」


 軽い口調。人をイラつかせるのがうまい──悪い意味でスザンナに似た男。スザンナの婚約者トラドスは、飄々とした顔と口調で、私を組み敷いていた。


 体が少しずれて光が当たる。見えた顔は、やはりトラドスだった。


 どうしてここに居るのか。

 なぜ私の上に跨っているのか。


 聞きたいことは山ほどあるが、全ては後だ。まずはこの馬鹿をどけないと。


「お疲れだったのに、起こしちゃってごめんね」

「いいからすぐに退いて」

「嫌だと言えば?」

「大声出すわよ」


 もし何かしてみなさい。貴方も侯爵家もただじゃ済まさない。

 そう脅すが、トラドスは軽く肩をすくめただけだ。


「それは困る」

「じゃあ──」

「だったら既成事実を作ればいいかな?」

「は?」


 早く退け。

 そう言おうとした私に向けて、軽くトラドスは言い放つ。


 何を言っているのだ、この馬鹿は。

 既成事実?

 本当に何を言ってるの。


「いいから早く──」

「俺の手で穢してしまえば、もう誰とも結婚出来ないだろう? そしたら、はれて俺は次期公爵となれるってわけだ」


 どういう理屈だ!

 怒鳴ってやりたいが、怒りが大きすぎて声は絞り出すようにしか出てくれない。


「私がそんなこと許すとでも?」

「許す許さないの問題じゃないんだなあ。これは──決定事項だ」


 そう言って。


「ひ……!!」


 トラドスは私の首筋に顔を埋める。

 途端、体を駆け抜ける悪寒!


 気持ち悪い

 気持ち悪い

 気持ち悪い!!


「この……」


 気持ち悪さと怒りで目の前が真っ赤になる。

 腕を動かそうとしても、女の力ではビクともしなかった。


 だが。

 足は動く。動くのだ。


 いつ危険な目に遭うかも分からない公爵令嬢が、何も出来ない無力だと思うのが浅はか!


「はな──せえぇぇぇ!!!!」

「アデラあぁ!!!!」


 叫んで渾身の蹴りがトラドスの股間に炸裂するのと。


 大きな音を立てて扉が壊れ、私の名を叫びながら誰かが入って来るのと。


 それはほぼ同時だった。

 

お読みいただきありがとうございました。

少しでも、面白い、続きが気になる、と思ってくださいましたら、ぜひブックマークや評価をよろしくお願いします。

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、ぜひよろしくお願いします!

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