13、
王家からの招待状!?
いや、今彼は呼び出しが正確なところと言った。呼び出しって???
わ、私、何かしたかしら?
考えても分からず、焦ってヘンラオ様の顔を見るが、彼はニコニコしているだけだ。黙して語らずとかやめてください、何か言って!
説明求む!
そう言おうとしたときだった。
バンッとけたたましい音を立てて、応接間の扉が開いた。
「お姉様、あの失礼な男が来てるんですって!?」
「スザンナに失礼な態度取ったのはどいつだあ!?」
面倒な奴等がやって来て、いよいよ私は頭を抱えるのだった。
しかし二人……妹スザンナと、その婚約者であるトラドスがズカズカと部屋へと立ち入ってきた。そしてヘンラオ様を見て、顔色が変わる。
「あー、この人! この人よトラドス! 以前私に酷いこと言った人!」
「そうか、お前かあ!!」
スザンナが指差し、止める間もなくトラドスがヘンラオ様の胸倉を掴んだ。
うああぁ! ちょっと待ってえぇぇ!!
これまでの人生で、本気で血の気が引いたのは生まれて初めてかも知れない。
ヘンラオ様の身分は分からない。我が公爵家より上の立場の家柄なんて、そうは居ない。
でも!
王家の使いなんてする人が、低い身分なわけないでしょ!?
スザンナもトラドスも、ヘンラオ様が王家の使いと知らないとはいえ、なんて恐ろしいことを! 身分が下でも王家のお気に入りなら、下手すれば我が家とトラドスの家……公爵家と侯爵家が潰れるわ!
一瞬でそう考えた私は、真っ青になりながら慌てて止めに走るのだった。
「トラドス! やめ──」
やめなさい!
そう叫ぼうとしたが、一瞬早かった。彼の方が。ヘンラオ様の方が。
胸倉を掴むトラドスの腕を掴んで引き剥がし、捻じり上げる!
「いでででで!!」
一瞬の動きに付いていけなかったトラドスは、直ぐに悲鳴を上げることとなったのだ。
「随分な挨拶だな。こちらも丁寧に返させて頂こう」
「いででで! 痛い痛い痛い! 貴様……俺が誰だか分かってるのか!? 放せ!」
「お前が誰かなんて知るか」
「キッシュリー侯爵家が子息、トラドスなるぞ! そしてボルノ公爵家が息女、スザンナの婚約者だ!」
「そうか、それがどうしたというのだ」
「いでででで!」
トラドスの素性を知っても、なおヘンラオ様は力を緩めることは無かった。きっととてつもなく痛いのだろう、トラドスの顔が真っ赤から真っ青へと変わりだす。
正直もう少し放置したかったけれど、話が進まない。ので、渋々嫌々適当に、間に入るのだった。
「ヘンラオ様、その辺で……」
「きみが言うなら。残念だがこの辺でやめておこう」
私の制止に、ヘンラオ様はそう言って手を離した。ヘンラオ様も私も、実に残念……という表情を浮かべているのだけれどね。
体勢が悪かったのか、いきなり解放されたトラドスは、ふらついて床に突っ伏してしまった。
「ブッ!」
「きゃー! トラドスー!!」
変な声を出して倒れるトラドスに、慌てて駆け寄るスザンナ。無駄に仲のいい二人だこと。
「酷いわお姉様! いくら私が可愛いからってトラドスにこんな仕打ち、あんまりです!!」
……ツッコミポイントが非常に多いんですが。
まず、私は何もしていないし。そして誰も、お前が可愛いとか言ってない。
そもそもお前が可愛いのと、トラドスが腕締め上げられるのと、どう関係があるっていうの。
あなたの頭は大丈夫? ねえ大丈夫?
お姉ちゃんは色々心配だよ。嘘だけど。
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