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11、

  

 無能と書いてボルノ公爵と読む。

 かつて私は自分の父をそう思っていた。だが近年になって、これを改めねばならなくなった。


 無能と書いて。

 ボルノ公爵とトラドスと読む!!


 ここで説明。トラドスとは誰ぞや?

 それは今目の前にいる、馬鹿のことです。


「聞いてくださいよアデラ様、スザンナに小さな宝石のアクセサリを贈ったんですが、小さいからと怒られてしまったんですよ~」

「だってお姉様、あんなに小さいのは私には似合わないんですもの。もっと高価で大きいのでなくては、私の美しさの前に霞んでしまいますわ!」


 あっそ~、じゃあ持ってるアクセでいいんじゃないの? でっかいのたっくさん持ってた記憶があるんだけど~?


 私はどうでもいい話を右から左へと聞き流しつつ、目の前の書類に書かれてる内容に目を向けた。


「まあ確かに。あの程度の宝石では、キミに俺の愛の大きさを伝えることは出来ないと気付いたよ。ごめんねスザンナ」

「いいのよトラドス! 愛の大きさを宝石で証明してちょうだい!」


 私からの愛の大きさは、拳骨で思い切り殴って教えてあげようか? 皆無であることが伝わるといいんだけど。


「「そんなわけでですね」」


 仲良くハモんなよ。


「アデラ様、お金をください」


 ストレートだな!


「お姉様、トラドスは今ちょっと持ち合わせが無いんですって。少し貸してくださいな」


 今じゃないだろ、いつもだろ! そして貸してって! 返す気ないくせに! むしろストレートに、くれ、と言っているトラドスの方が潔い!


「駄目です」


 そして即答です。当たり前だ。盛り返してきたとはいえ、まだまだ問題点の多い公爵家。そして領土。お前らの贅沢に使う金など一銭たりとも存在せんわ!!


「またまた~ご冗談を! あ、あと侯爵家のほうにも資金援助をお願いします。ほら、最近日照り続きでしょ? 民が少々困ってまして……」

「ご自分の領土内のことは、ご自分たちで何とかしてください」


 なぜにうちが援助せねばいかんのだ! そして私は冗談は微塵も言っていない。微塵もだ!


「またまたご冗談を! スザンナの婚約者である俺からの頼みですよ? 将来義理の弟となる俺の為にもお願いしますね」


 お願いしますねじゃないわよ! お前が弟になるなんぞ、考えるだけで鳥肌立ってしょうがないわ!


「いい加減にしてください。つい先日もあなたのお父上……侯爵直々にお金の無心が有りました。我が公爵家は、あなたがたの財布では無いのですよ?」


 何度も何度も口酸っぱく言い続けた事実。

 なのにそれは一向にとどまる事はなく、むしろ酷くなってるときたものだ。


 スザンナがトラドスと婚約したのが、二年前。それから二年で一体どれだけの資金援助をしてきたのか。考えるだけで頭が痛いし胃も痛くなる。


 ハッキリいって、この婚約に何のメリットも無い。

 侯爵家は完全に公爵家を食い物にしている。

 父はスザンナが選ぶなら誰でもいいと思っている。


 そして当の二人は、同じ馬鹿っぷりで気が合うらしい。無駄に仲が良いときたもんだ。


 まあその影で、二人とも男遊び女遊びが激しいけどね。浮気はお互いやってるから、気にしてないってか。理解できない。


「とにかく、今はあなたがたに()くお金などありません。お引き取りを。私は忙しいのです」

「ひどいわお姉様!」

「そうです、こんなに困ってるのに!」

「ぃやっかましい! 邪魔だから帰れぇぇっ!!!!」

「「きゃーーーーーー!?」」


 最近悩み続きで寝不足なのよ!

 本気で殴る前に帰れ!


 いつもなら食い下がる二人だったが、今の私は何だかヤバイと感じたのだろう。


 またも仲良くハモって、悲鳴を上げながら慌てて出て行った。


「もう! どうして私の身内はあんなのばかりなの!?」


 スザンナとトラドスが結婚して子供が出来て……万が一にでもこの公爵家の後継に、なんて話になれば大変だ。早急に養子候補を探した方がいいのかもしれない。


 私は痛む頭を押さえながら、真剣に考えるのだった。そして考えてるってのに。


ガチャッ


 不意に、閉じたはずの扉が直ぐに開いた。また二人が戻って来たのね、しつこい!


「入ってくるなああ!!!!」


 いい加減ブチ切れた私は、手元にあった小冊子を思いっきりぶん投げて叫ぶのだった。


ゴッ


「うぐ!」


 鈍い音を立ててそれは落ちる。

 それがぶつかった所を痛そうに押さえる人物を目にして。


 私はこれでもかと言うくらいに目を大きく見開き、息が止まるかと思った。


「ヘ……ンラオ……さ、ま……?」

「やあアデラ。久しぶりだね」


 そこには、私が焦がれてやまない存在。


 ヘンラオ様が、苦笑いして立って居たのだった。

 

お読みいただきありがとうございました。

少しでも、面白い、続きが気になる、と思ってくださいましたら、ぜひブックマークや評価をよろしくお願いします。

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