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花染め屋の四季彩〜森に隠れ住む魔法使いは魔法の花の力で依頼を解決する〜  作者: 花房いちご
第六章 秋薔薇は復讐の真紅

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秋薔薇は復讐の真紅 四話

 バキン!

 間一髪。結界が炎を弾く。服の下に下げたペンダントが熱を持つ。


(攻撃された!【おじ様】の魔道具が発動しなかったら死んでいたわ!)


『あら。グレイは過保護だこと。でも、そう何度も防げるかしら?』


 舞うように【踊り子】の手首が動く。【真紅の腕(しんくのかいな)】が光り、いくつもの炎のベールが生まれ、ティリアを襲った。


(何故こんなことを?いえ、逃げないと……っ!)


『きゃあぁっ!』


 バキッ!ガキン!

 いくつもの炎のベールが結界を攻撃する。ティリアは動揺と恐怖でその場にうずくまった。


『あらあら?怖くて動けなくなったのかしら。可哀想に……っ!』


 踊り子の顔から余裕が消える。同時にドアが蹴破られ大声が響いた。


『光よ!我が敵を撃ち墜とせ!【閃光の矢】!』


 現れた人物は素早く詠唱し攻撃する。【踊り子】は動じず炎で己の周りを包んだ。


ーーーパーン!!ーーー


 音と共に【閃光の矢】が砕かれ、炎がかき消えた。


『【踊り子】!テメェどういうつもりだ!なぜティリアに手を出す!』


 【閃光の矢】を放った人物、ティリアの【おじ様】が叫び、【踊り子】を睨む。【踊り子】は嘲笑し、話し方を崩した。


『あらあら。この程度のお遊びで怒るだなんて、本当にケチ臭い男ねぇ』


『なにが遊びだ!ふざけるな!』


『大体グレイが悪いのよ。アタシがあんなにお願いしたのに、花染(はなそ)めのお嬢さんに会わせてくれないんだもの。アタシから会いに行くしかないでしょう?

それに、むしろ褒めて欲しいわ』


『ああ?褒めるだと?』


『さっきはお遊びと言ったけどね、これは教育よ。花染はなそめのお嬢さんったら、呑気すぎるわ。アタシが少し嘘をついただけで騙されちゃうんだもの。貴方たちが囲い込み過ぎてるからかしら?

……駄目よ。お嬢さん』


 【踊り子】は冷ややかな眼差しをティリアに向けた。怖い。体の芯から震えて何も言えない。


花染はなそめのお嬢さん、この世には貴女が想像すら出来ない脅威というものがあるの。

グレイたちの手を煩わせないためにも警戒を忘れてはだめ。お店屋さんごっこをするならなおのことよ。

……じゃあね。生きていたらまた会いましょう』


『待て!【踊り子】ぉ!』


 おじ様が追う前に【踊り子】の手首が動いた。


ーーーゴウッ!ーーー


 激しい炎がティリアたちを襲う。【おじ様】の結界が防いだが、【踊り子】はその瞬きの間に消えてしまっていた。


 こうして、ティリアの花染はなそめ屋としての初仕事は、手痛い教訓となったのだった。




◆◆◆◆◆





(今となっては良い経験でしたが、当時の未熟さが恥ずかしい)


 ティリアは五年前を思い出しつつ、花染はなそめ仕事にとりかかった。

 場所も当時と同じく地下の一室だ。違うのは、自分の横にいる【おじ様】が【踊り子】に目を光らせていることと、ティリアが油断していないことだ。

 ティリアは花染はなそめを続けつつ、懐に隠した魔道具に意識を向けた。


(使わなくて済むのが一番ですが……。駄目ね。余計なことを考えては。私は花染はなそめ屋。花染はなそめ仕事を果たしましょう)


 ティリアは気を取り直し、【火焔薔薇(フレイムローズ)】の魔法の力を【真紅の腕(しんくのかいな)】に花染めた。


「終わりました」


「ありがとう!」


 【真紅の腕(しんくのかいな)】は、名前の通り血のような真紅に染まった。【踊り子】は、嬉しそうに腕輪を見つめる。


「五年前以上に深い真紅。着けているだけで魔法の力を感じる。素晴らしい出来だわ」


 うっとりと細まる眼差しは、心からの感嘆を表していた。五年前以上の評価に、ティリアは少しだけ肩の力を抜いた。


(恐ろしいのに可愛らしい人。この魅力も武器の一つなのでしょうね)


 反面、グレイは苦々しい顔だ。


「終わったな。とっとと帰れ。【真紅の腕(しんくのかいな)】は出口で渡してやる」


「嫌よ。花染めのお嬢さんには、まだ話があるもの。大切なお話がね」


「調子に乗るなよ暗殺者が」


 【おじ様】が殺気をにじませるのを、ティリアは目線で止めた。


「うかがいます。先ほど話されていた【香雪蘭(フリージア)劇団】の【姫さま】からのご依頼でしょうか?それとも【踊り子】様ご自身のご依頼でしょうか?」


(【踊り子】様は一流の暗殺者。ここで下手に対立すれば、私も【おじ様】も無事ではいられないでしょう。例え、【真紅の腕(しんくのかいな)】を渡していなくても。……その程度の実力の差はわかるわ)


 【踊り子】は満足そうに微笑んだ。ティリアはどんな無理難題を告げられるかと覚悟した。暗殺の片棒かなにかだろうか?


(『ささやかな復讐』と言っていたわね。あまり危険そうなら断らないと。

ジェドさんたちの助けになるような依頼なら嬉しいけど……)


「うふふ。話が早くて助かるわ。花染(はなそ)めのお嬢さん、【姫さま】からの依頼よ。

王城で開催される宴に、貴族令嬢として参加しなさい。もちろん、可愛くドレスアップしてね」


「「は?」」


思いがけない依頼に、ティリアと【おじ様】は間抜けな声を出してしまったのだった。


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