表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花染め屋の四季彩〜森に隠れ住む魔法使いは魔法の花の力で依頼を解決する〜  作者: 花房いちご
第三章 怠け者の翠風

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/58

怠け者の翠風 一話

2023/07/24。「プロローグ」を「はじまりの章」と改題。大幅に加筆修正しました。花染め屋の過去と、一章直前までの話を盛り込んでいます。修正前のプロローグを読んだ方にも、ぜひ読んで頂きたいです。

思うところがあり、ジャンルを「ハイファンタジー」に変更しました。

連載を再開します。三章の最後まで執筆済み、四章は8月以降更新予定です。

「どうぞお召し上がりください」


 五月の半ば、爽やかな初夏の日のことだ。

 【花染(はなそ)め屋】ことティリアは、客の前に紅茶を注いだティーカップを置いた。ふわりと爽やかで甘い、紅茶にいれたレモンの薄切りとフラワーシロップの香りがただよう。

 客は手をつけず、ティリアをじっと見た。

 男は「空っぽのカイ」と名乗った。三十代半ば頃だろうか。黒っぽいクシャクシャの栗毛、紫ががった灰色の目。くたびれたシャツの上に革紐の首飾りをつけて、胴体を革鎧でおおっている。

 首飾りにはペンダントトップがついているが、奇妙なことにその金属の台座には何も付いていない。空っぽだ。

 これといって特徴がない。あえて言うなら、目から感じる気力の無さだろうか?いや、目だけでなく全身から気力を感じないし、お世辞にも態度がいいとは言えない。


(けれど、悪意も感じないわね。それに、確かにうちのお客様だわ。この長槍を【染魔(せんま)】したいと仰っていたし、なにより全てそろっている)


 ティリアは新緑色の目を細め、カイの向かいに座る。視線を机の上に移し、向かって斜め左に乗せられた長槍と二輪の花を見た。

 長槍は刃部分を革の鞘でおおっている。木製の柄は使い込まれていて、細かい傷だらけだ。だがよく見ると、柄に装飾が彫られている。独特の模様は、この長槍が魔道具であることを示していた。

 花は鮮やかなエメラルドグリーン。矢車菊によく似た風属性の魔法植物【風切(ウィンディ)矢車菊(コーンフラワー)】だ。

 【染魔(せんま)】を施したい魔道具と、染魔に使う魔法植物、そして対価の一つである二輪目の魔法植物が揃っている。

 かつてと違い、今の人間は強力な魔法が使えなくなってしまった。その為、魔法の力を持つ植物のその力で魔道具を染める必要があるのだ。人はそれを【染魔(せんま)】と言い、ティリアたちを染魔(せんま)の一族と呼ぶ。もっとも、ティリアは思うところがあって、染魔を花染(はなそ)めと言い、自らを【花染(はなそ)め屋】と名乗っているが。

 ともかく、後はもう一つの対価である【客がここに来るまでの物語】だけでいい。


「それでは、願いに至る物語をお話くださ……」


「面倒くせえなぁ」


 実のこもった声に、ティリアは思わず固まった。


「古道具屋どもから聞いてたけどよ。要するに過去を話せってことだよな。俺に話すような過去なんてねえよ」


「なんでも良いのです。どこで生まれたとか、これまでどんな仕事をしてきたかでも。過去を話したく無いなら嘘でも構いません」


「ふうん……妙な話だ。なんの企みか知らねえが……」


 カイは興味無さそうに呟き、カップを鷲掴みにして紅茶を飲んだ。

 片眉を上げ、飲む速度がゆっくりになる。どうやら口にあったらしい。ティリアは少し安心した。


「まあ良い。この長槍をここに持ってきた理由を話せばいいんだな」 


 こうしてカイは、心底面倒くさそうに話しはじめた。

 とはいえ、話すのが得意ではないらしい。最初は上手くいかなかった。ティリアが質問をすることで、なんとか形ある物語になっていった。

 おおよそ、こういった物語だ。



閲覧ありがとうございます。よろしければ、ブクマ、評価、いいね、感想、レビューなどお願いいたします。励みになります。

三章完結まで、毎日更新予定です

また、2023/07/24。「プロローグ」を「はじまりの章」と改題。大幅に加筆修正しました。花染め屋の過去と、一章直前までの話を盛り込んでいます。修正前のプロローグを読んだ方にも、ぜひ読んで頂きたいです。

2023/08/19。二章「桃色は爛漫の恋をする」一話追加して全九話になりました。九話(最終話)は、三章につながるお話です。ぜひご一読ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ