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気分は基礎医学  作者: 輪島ライ
2019年6月 薬理学基本コース

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82 中高一貫男子校

 2011年4月初旬、ボクは入りたくもなかった中学校の門をくぐった。


 周囲には少し前まで小学生だった身体に学ランをまとった男子生徒たちがぞろぞろと歩いていて、塾が同じだった生徒同士は既にグループを形成していた。


 ボクの自宅は滋賀県の大津市にあり、この中学校までは約25分間電車に乗った上で15分ほど歩く必要がある。


 その日は入学式で荷物は軽かったが下校時は大量の教科書をカバンに抱えて持ち帰らなければならないと思うとうんざりした。



 地元の公立中学校は確かに評判が悪かったがボクの成績ならもう少し実家から離れるものの偏差値の高い私立中学を受験できたし、制服が学ランの古めかしい男子校になんて本当は行きたくなかった。


 それなのに皆月中学を第一志望にせざるを得なかったのは100%父親の意向で、皆月中高は単科医大である畿内医科大学の附属校なので確実に医学部医学科に行くためには附属校に入学した方が有利だという理由だった。



 ボクの父親は岡山県にある超進学校の出身なのに何浪もして医学部に入れず、結局は浪速(なにわ)大学の薬学部に進学して薬剤師になった人物だった。


 嫌々進学したといっても旧帝大である浪速大学の薬学部は日本国内の薬学部でも最高峰だし、今の父は単なる薬剤師ではなく大規模な薬局チェーンを経営するやり手の社長だ。


 幼い頃に母を膵癌で亡くしてからは父一人に育てられたが生まれてからお金には困ったことがないし、息子に心労をかけないために再婚の話をすべて断るぐらいには父はボクのことを大事にしてくれていた。


 それでも一人息子を何が何でも医者にしようとする父の姿勢はボクにとっては重荷であり、特に魅力を感じない中学校を受験させられたり小学生の頃から私立大学の医学部を専願にすることを前提に人生設計を立てられたりしたのは相当きつかった。



 とはいえ中学受験にやり直しは効かないので、ボクはそれからの6年間を皆月中学校・高等学校という環境で過ごすこととなった。


 皆月中学校は大阪府皆月市にある私立中学で、在学生は同じ敷地内にある皆月高校に無条件で進学できる併設型の中高一貫校だ。


 ボクが卒業する少し前に共学化が決まり2017年4月の中学1年生からは女子生徒も入学してくるようになったが、2011年当時は純然たる男子校だった。



 男子校というと女子生徒がいない環境で伸び伸びと過ごせるとか男女の恋愛に伴ういざこざに巻き込まれずに勉学や部活に集中できるといったメリットがよく挙げられるが、その頃の皆月中学校はお世辞にも居心地のよい環境ではなかった。


 近年低迷している大学進学実績に校長・教頭も含めた先生方は総じて苛立っており、どうでもいい生活指導を厳しくしたり余計な小テストを頻繁に実施したりといわゆる自称進学校がやりがちな(あやま)ちを繰り返していた。



 先生方にとって想定外だったのは中学校で生徒が荒れ始めていたことで、2009年度入学生からその傾向は見られていたがボクの学年である2011年度入学生はここ数十年でもワースト級に治安の悪い学年だった。

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