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気分は基礎医学  作者: 輪島ライ
2020年2月 病理学発展コース

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263 ずっと怖かったこと

 私に初めて彼氏ができたのは高校1年生の秋で、私が処女を失ったのはその1年後だった。


 それから5年後、大学3回生の夏の終わりに私は人生で二人目の彼氏と付き合うようになった。


 彼の名前は柳沢雅人君といって、同じ大学の医学部2回生で写真部の後輩。


 2回生から部活のエースとして活躍し始めていた彼と私は真田雅敏さんの大ファンであるという共通点から仲良くなり、2019年の8月上旬に私は彼から告白された。



「せっかく同じ真田ファンなんだし、また一緒にコンサートとか行きたいね。柳沢君はどう?」

「俺もぜひ行きたいです! あと先輩、もし今彼氏がいないんでしたら俺と付き合ってくれませんか?」


 ものすごく唐突な流れで私に交際を申し込んだ彼に、



「うん、いいよ。じゃあ柳沢君、今日からよろしくね」

「本当ですか!? ありがとうございます!!」


 私は彼とならちゃんと恋人同士になれるかも知れないと思って、その告白を受け入れた。


 柳沢君は頼りない所もあるけれど誠実で優しい性格で、医学生にしてはあまりマッチョでない彼の人柄に私は以前から好感を覚えていた。


 彼は付き合い始めても豹変(ひょうへん)したりするようなことはなく、これまでよりもさらに誠実な態度で私に接してくれた。



 それなのに付き合いが長くなるにつれて、私は彼とこのまま一緒にいるのが怖くなっていった。



 私も柳沢君もお互い大学生で、卒業すればすぐに医師としてのキャリアを歩み始める。


 このまま彼と付き合っていけばお互い卒業した頃には結婚の話が持ち上がって、私は女医の中では比較的早く結婚できるかも知れない。


 私が怖かったのは社会人になってから彼との関係がどうなるかではなく、もちろん彼と結婚することでもなかった。



 大学生の男女が恋仲になるということは、そう遠くないうちに身体の関係になるということを意味する。


 私は柳沢君のことが好きで、お互い同意の上で付き合っているはずなのに彼とそういう関係になるというイメージは全く持てなかった。


 高校生の頃に付き合っていた男子とは一度性行為に及んだ経験があってあの時は彼氏とそういうことをするのが苦痛で仕方がなかったけど、それは私の側に覚悟ができておらず身体も未熟だったということで説明がつく。


 だけど私は一度経験があっても大学生になっても、男の人に身体を許すという行為そのものが怖くて仕方がなかった。



 だから……

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