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気分は基礎医学  作者: 輪島ライ
2019年9月 微生物学発展コース

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175 気分は親友

 マレー先輩の人生の大きな転換点となった週末を終えて2019年9月30日の月曜日。


 微生物学教室の発展コース研修の最終日となる今日この日の放課後、僕は研究棟6階にある微生物学教室の会議室でマレー先輩と向かい合っていた。


 会議室の大きなテーブルに面した椅子に座り、マレー先輩は僕と話しつつ1か月の研修を振り返っていた。


「今月も上手く指導できたかどうか分からないけど、微生物学研究のリアルについて俺が伝えられるだけのことは伝えたつもりだ。白神君的にはどうだった?」

「ええ、7月とあまり間が空いてないのもありますけど微生物学教室でどういう研究ができるのかはとてもよく分かりましたし、本当に楽しそうだと思いました。マレー先輩の後輩になれる研究者は本当に幸せだと思います」


 僕の返事を頷きながら聞いてマレー先輩はゆっくりと口を開いた。



「そう言ってくれて本当に嬉しい。……最終的に結論を出すのは来年の3月だからあくまで今はどう思うかという話なんだが、白神君は微生物学教室に来てくれるつもりはあるか?」


 先輩は本心から僕に微生物学教室でも後輩になって欲しいと思ってくれていて、僕自身微生物学の研究には十分に興味を抱いていた。


 それを踏まえた上で僕は真剣に答える。



「申し訳ないですが、今の僕はやっぱり病理学の方に興味があります。微生物学は本当に面白いと思いますし研究の世界でもマレー先輩の後輩になれるのはものすごく魅力的なんですけど、どちらかを選ぶなら病理学教室にします」


 先輩は笑顔で何度も頷き、それからしばらく寂しそうな表情で黙り込んだ。


 そして再び口を開くと、



「白神君。俺は結局ヤミ子君に勝てなかったけど君が真剣に悩んでくれたことは十分に分かった。発展コース研修は始まったばかりだしまだ完全に諦めた訳じゃないけど、別の教室に所属することになっても俺と君は同じ大学の仲間だ。そして……」


 先輩は一息にそこまで言ってから、



「学年が違っても所属する教室が違っても、俺は君の親友だ。これからもずっとそうあって欲しい」


 初めて僕を親友と呼んで、僕に右手を差し出した。


 それに応じて無言で右手を差し出すと僕はそのまま先輩と強く握手した。



 その後はお世話になった松島教授に改めて挨拶をして、もはや何度目か分からないがマレー先輩に夕食をおごって貰った。


 微生物学教室での研修の終了を記念して以前も連れて行って貰った焼肉店「灼熱のホルモン」で1つ上のコースをご馳走され、その日は先輩と焼肉を食べながら楽しく語り明かした。



 美波との結婚式は開けなかったけど白神君の結婚式には必ず呼んで欲しいと言った先輩に、僕はもちろんですと答えた。

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