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気分は基礎医学  作者: 輪島ライ
2019年7月 微生物学基本コース

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118 高校新聞部の姫

 彼女と初めて出会った時のことは思い出せないが、彼女と過ごしてきた幸せな時間のことは片時も忘れたことがない。



 俺の母校である南東寺中学校・高等学校が共学化したのは100年を超える学校の歴史からするとつい最近のことで、俺もその一人である2008年度入学生は男子校として最後の世代だった。


 同級生や上級生を見ればむさ苦しい男しかおらず下級生には女子が大勢いるという環境は非常にアンバランスで、ルックスが良くなければ運動部に所属している訳でもない俺は女子とは一切交流せずに卒業したいとさえ思っていた。



 そんな中、高校2年生に進学した俺は初めて女子の部活仲間を得ることになった。


 南東寺中高のクラブ活動は原則として中高一貫で運営されているが運動部では硬式野球部、文化部では軽音楽部と新聞部には高校からしか入部できないことになっており、元々文芸系の部活に興味があった俺は高校進学後すぐに新聞部の門を叩いた。


 それから1年間は男だけの文化部を満喫していたが、2年生に進学してしばらくすると何人かの高校1年生に紛れてとてもかわいい女子がやって来た。


 彼女が部活見学に訪れてそのまま入部を決めた日に俺は丁度欠席していて、何人か入部してくれた1年生に女子が1人混じっていることも当初は気づかなかった。



 しばらく経ってから彼女が新入部員であることを知って苦手な女子生徒相手に恐る恐る話しかけてみた結果、宇都宮(うつのみや)美波(みなみ)というフルネームに加えて軽音部にも所属しているという情報を聞き出すことができた。


 腰まで届くロングヘアにトランジスタグラマーな身体つきという外見的特徴は今と同じで、宇都宮さんは新聞部には似合わない美少女だと率直に思った。


 とはいえ4年間以上も異性と交流がないと後輩の美少女にアプローチしようなどとは全く思わなくなるもので、俺は彼女がオタサーの姫にならないことを祈りつつ単なる新聞部仲間として普通に仲良く付き合っていた。



 高3に進級してからは新聞部の慣例に従って部活を引退し、学内で宇都宮さんと会う機会もほとんどなくなった。


 後の交流は年賀状のやり取りぐらいで、当時の俺はスマホを持っていなかったのでメッセージアプリやSNSで交流することもなかった。

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