理沙視点⑥
PVPイベント後、理沙は“期間限定”と
書かれた謎のダンジョンへ単独で挑んだ。
加速すら使えない特殊仕様に戸惑いながらも、
着実に階層を進み、ついに第10階層――ボスエリアへ到達。
広々とした空間に現れたのは、2つの頭を持つ巨大な犬だった。
(……双頭犬か。苦手なんだよな、こういうの)
AWO以外のVRタイトルでも、
彼女はこの手の“頭数の多い獣型”に幾度となく敗北を喫してきた過去がある。
(今回は一発で決めたい。だってここで死んだら……復活できる仕様か分かんないし)
スキル遮断のまま戦闘開始。
双頭犬は左右の頭で噛みつきと引っ掻きを連携させる“挟撃型”の挙動を見せる。
だが――理沙は避ける。流れるように、何度も。
(あれ、結構避けられる……プレイヤースキル、上がったかな?)
淡々と状況を分析し、着実に回避と反撃を繰り返す。
とはいえ、全ての攻撃を避け切るのは至難。HPは徐々に削られていく。
(ポーション持ってきてよかった)
手際よく回復を挟みながら、攻撃を重ねる。
理沙の二刀――右にシデ―ロス、左にクリューソス
日本の対となるが牙を裂き、爪をはじき、双頭の暴力を押し返す。
戦闘終了。
双頭犬は光の粒へと分解され、床に宝箱が現れる。
中身は――金属製の“大きなメダル”が3枚。
(あれ?報酬、思ったよりしょぼい……もうちょい派手なの期待してた)
このメダルは、スキル・装備・レアアイテムと交換できる“最高等級通貨”扱いだった。
本来の目玉報酬は、最初の突破者だけが手にする
「ダンジョン経営権」であり、2番目以降のプレイヤーはこのメダルが配布される仕組み。
(まぁ、スキル取れればいいか)
理沙はメダル3枚で、以下のスキルを取得:
- 【幻影】:一定時間、分身のような残像を発生させる
- 【跳躍】:落下ダメージ無効+空間跳び越えが可能になる
- 【身体能力向上】:STR/SPD/反射力に補正が入る
(よし、これで十分。パッシブスキルも増えてきた)
こうして、理沙は「運営の悪戯」と呼ばれる特殊ダンジョンを、
静かに攻略しきった。
ゲームに翻弄されず、淡々と勝ち筋を見つけるスタイルは
――まさに「観察と回避の使い手」そのものだった。
PSはプレイヤースキルの事です
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最新 2025/07/19




