理沙視点⑤
PVPイベントを終えた理沙は、
気持ちを切り替えて二層へ向かっていた。目的は、新たなスキルの収集。
戦術の選択肢を増やすべく、複数のダンジョン情報を掲示板の前で精査していた。
(なかなか良いスキルって出ないよね……さて、次はどこ行こう)
すると、掲示板に目を引く内容が更新される。
運営からの通知――期間限定ダンジョンの設置。
「期間限定でとあるダンジョンを設置しました。頑張ってください」
(期間限定って、何か引っかかるけど……面白そうだし行ってみよ)
目的地の前にはすでに人だかり。
ざわめきの中で、不思議な話が聞こえてきた。
『さっきの感じたか?背筋ぞわってなるやつ』
『誰かの一言で、全員道開けたらしい』
『本能的に避けちまった……あの雰囲気、たぶん前回三位のやつ』
(……三位って、司じゃなかったっけ?)
内部への入場が始まり、理沙はダンジョンを踏破し始める。
「加速!」
――沈黙。発動なし。
(え?スキルが……使えない?)
再試行も虚しく、スキルは封じられていた。
初見のプレイヤー泣かせ仕様、いわゆる“スキル遮断型ダンジョン”。
理沙は冷静に状況を整理し、戦術を即座に切り替える。
右手にシデ―ロス、左手にクリューソス――
スキルなしでも攻撃精度の高い理沙は、身体操作と判断力だけで突破を続ける。
(ここ、罠くる……)
司の“受けて潰す”スタイルと違い、理沙は“見て避ける”型。
観察眼と瞬発力で回避判断を行い、対処不能な範囲攻撃だけテレポートで離脱。
無理のない回避構成は、理沙の定着した戦術哲学だった。
階層は進み、現在9階層。
理沙は次の上層階段前に到達した。
(そろそろボスか。さすがにスキル縛りのまま戦闘かな……)
準備と覚悟を固め、理沙は階段の先へ視線を送った。
その先に待つのは――スキル遮断の中で戦うボス。
斬撃も魔法も封じられるこの空間で、
理沙の「本当のプレイヤースキル」が試される。
しばらく理沙視点行きます
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最新 2025/07/19




