ダイナソー&ジャンゴー
元気モリ森――その名に反して、
中は獰猛そのものだった。ジャングルを思わせる鬱蒼とした緑、
地面から湧き立つような活性の気配。
そして、1秒ごとのHP自動回復という謎仕様。まるで森自身が
プレイヤーとモンスターを育て上げる育成施設のようだった。
(これ、回復してんのか……? 持続回復と重なっててよくわかんねぇ)
ステータス画面は安定していたが、戦闘時の被ダメージ量が
妙にこたえている。スバルはそれを感じ取りつつ、
茂みの向こうの異形を確認した。
ジャングルに棲まうモンスターたちは、
恐竜をモチーフとした筋骨隆々の獣型。なかでも異彩を放っていたのは
猫――のような顔を持ち、クマ並みに巨大で針を背負った生物だった。
(でかい猫……いや、でけぇ……猫⁉)
スバルは即座に行動を切り替える。
サクリファイスパワーを装備。手加減仕様に切り替えた上で距離を取り、技を叩き込む。
「メテオストライク! スラッシュ! チャカフレア、投擲!」
地を揺るがす衝撃。斬撃が空を裂き、炎が包む。
(猫……だからって躊躇してたら、あいつにやられてたな)
化け猫は想像以上に脚力と咬合力に優れ、
野良配置にしては異常なステータスを誇っていた。
どうやら、このダンジョンでは“野良に混じったボスモンスター級”が出てくる仕様のようだ。
攻撃を数度繰り返した後、スバルはテイム魔法を放つ。
「テイム」
化け猫は淡い光に包まれ、存在を脳筋帝国へと送る。
(よし、スカウト完了。この森……油断できねぇ)
すでにHP自動回復の恩恵でモンスターたちは粘り強く、
攻撃力・防御力ともに盛られていた。このダンジョンの本質は、
回復で耐える“持久力型バトル”と、モンスター個体の“突然変異仕様”にあった。
スバルは息を整えたあと、奥へと進む。
(次が本命なら……また妙なの出てくるかもしれんな)
元気モリ森――名前こそふざけていたが、その奥には、まだ何かが待っていた。
次回、いよいよ三層本格攻略へ。
司が手にする“融合種の脅威”とは?
脳筋帝国に静かなる進化の波が押し寄せる。お楽しみに
最新 2025/07/17




