お試しダンジョン②
看板を立て、ボスが待つエリアへ踏み込んだスバル。
木々が道をつくる静かな演出の先に、
かつてスライムの巣窟で対峙した《スライムロード》の姿があった。
その姿は以前と変わらないが、動きには違和感がある。
蜘蛛の糸で拘束し、岩石落としを連携――
動いたかと思えば、巨大化して踏みつけてくる。
(攻撃のパターンが読めねぇ。これは面白い)
複数スキルの継承によって、スライムロードはまさに
“無定型の脅威”になっていた。
今後、魔法型スライムたちとの連携まで考慮すれば
この一階層は相当な難所になるだろう。
ちなみにこのスライムは、《エンペラースライム》に進化しているが
スバルがその事実をるのはまだ先。
だが、スバルにとってこのスライムに苦戦する要素はなかった。
衝撃耐性があるため、格闘職にとっては相性が悪いはずだが――
スバルは拳と斬撃の両方を使い分ける異端格闘家。
魔法を使えなくとも、物理での対応力は図抜けている。
魔法職なら属性魔法を相殺する間に踏みつぶされて終わる。
剣士ならば鋼鉄化で攻撃を通せずに、消耗していくだろう。
だがスバルは違う。
鋼鉄化には打撃と斬撃を状況で切り替えて対応。
結果、スライムロードのHPバーは急速に減り――最後には削り切られた。
ドロップしたアイテムは《スライムロードの証》。
買取アイテムとして流通するが、
これが後に“高価買取アイテム”になることをスバルは知らない。
(本体なら階段出るタイミングだけど……
まだ二層完成していないからか、外に出る魔法陣が出ているな)
プレイヤー目線では違和感のない設計だ。
本格稼働前であっても、“脳筋帝国”はダンジョンとして認められるだろう
「管理者コマンド ダンジョン開放」
その瞬間、システム側から警告が表示される。
《ダンジョン名を決めてください》
(そういや、名前……決めていなかったか)
思案した結果、スバルはダンジョン名を「脳筋帝国」に設定。
改めて管理者コマンドを実行すると――新たなダンジョンが世界に出現した。
――その頃、ある場所
ーー運営管理席・モニター監視室ーー
「おや?スバルがダンジョン作ったな」
「えっ、もう?はやっ」
「どこだ?」
「町から東にある草原だ。名前は……《脳筋帝国》?」
「センス良いじゃねぇかw」
「でも、まだ一階層分しかないぞ」
「一度プレイヤー視点で確認して、
これなら“普通のダンジョン扱い”できるって判断したんだろう。
一階層だけでも先に出すとか柔軟だな」
「……てか、スバルってかなりヤバくね?」
「何が?」
「いや、俺らが作業で何週間かけて準備してた項目、
ほとんど一人で初日で終わらせてんだぞ」
「……うん、俺らのメンツが立たねぇな」
「悲しくなるからやめとけ。
とりあえずこのダンジョンの公開は、プレイヤー全体に周知しておこう」
「了解。それにしても今後のスバルのダンジョン運営、かなり注目だな」
「だな。場合によっては、他のプレイヤーに
運営側の権限渡すことも考えよう。スバルの動き次第で」
「さて、じゃあ今日の分は解散か」
「おう、また監視な」
「次は二層完成の報告待ちか……すぐに来る気がして怖ぇわ」
“脳筋帝国”の旗が、草原の風にゆれていた。
スバルのダンジョン――それは、次なる挑戦者を待ち続けている。
司のダンジョンづくり面白そう
高評価、コメント、ブックマーク
あと、各SNSで拡散などしてくださると
ありがたいです
最新 2025/07/14




